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白蛇サマが行くっ!  作者: 福寿
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コソ泥ではない

時間は過ぎてゲーム内では夜、暗くなったタイミングでこっそり宿屋から出た。向かう先は商業ギルドだ。路地裏などを通りつつ、慎重に人の目を掻い潜る。


白色だから暗くても分かりやすいのだ。それに加えて森の時みたいに咄嗟に身を隠せる場所は無いし、通行人を気絶させるわけにもいかない。


商業ギルドの出入り口から入れる訳がないから開いてる窓を探す。窓の位置は大体覚えてるから、一階の窓を片っ端から見るだけだ。


「また残業だよ……リリアさんに仕事押し付けられちまった……」


「……!」


裏口近くの窓を見ようとした時、運悪く僕の方に近づいて来る足音が聞こえた。周りに隠れる場所はなさ……ゴミ箱だ。


見つかるよりはマシ。幸い臭いはそこまでキツくないから少しなら大丈夫だ。木で出来たゴミ箱の中に入ってやり過ごす。


「また窓開けっ放しにしてやがる、仕事終わったら閉めておかないと」


どうやら近くに開いてる窓があるみたいだ。ガチャッと扉が開く音がすると同時にゴミ箱から出る。うぇっ……臭い移ったかも。


僕は上を見ると言ってた通り開いた窓があった。ゴミ箱を足場にすれば届くかもしれない。蓋があるタイプだから蓋を音を立てないように閉めて……よし。


多分気付かれてない。ゴミ箱を足場にして窓の中に入ると中は複数の机や椅子が置かれてある小さめの部屋だった。


人は居ない、明かりも無いから少しは安心出来る。さてと……さっさと目標らしき物を探さないと。とりあえず全部の引き出しなどを確認する。


十分くらい探し回ったけど結局この部屋にそれっぽいのは無かった。扉は親切なことに微かな隙間があったから出れそう。


前より条件が厳しい分時間はかけない方が良い。探査も一発で済ませたいし。階段が部屋の横にあったから二階から見て回ることにした。


階段くらいは身体の操作に慣れて来たからスルスルと上がれる。何かこうしてると泥棒してる気分になるけど気のせいだろう、うん。


「シャ……」


上がった先にある部屋は一つ、部屋の名前は読めないけど多分リリアの部屋だろう。また扉が少しだけ開いてるけど怪しい……。


明かりはついてなさそうだけど念の為隙間から中を除く。中は明かりは一切なかったけど一人だけ椅子に座って誰かを待ち構えていそうなリリアが居たのだ。


クエストの失敗条件にリリアに見つかるってあったから絶対に罠だ。僕は逃げるように一階へと戻って開いてる扉を探す。


でも僕が入れる部屋は最初に出て来た所しかなかった。無理矢理なら扉は開けれないことはないけど、絶対に物音は立てちゃうし。


使える物はないかもう一回廊下を見渡すと奥に花瓶置きにある花瓶が目に入った。さっきの人を花瓶を割って誘導してすれ違い様に……ダメだ。


廊下は一本道だから見つかってしまう。そもそもさっきの人が居る部屋すら分かってないし。先ずはそこから見つけないと。


聞き耳を立てながら移動して行くと、花瓶から大体十メートルほど離れた部屋から独り言が聞こえた。残業お疲れ様です、今から更に増えるかもしれないけど。


僕は扉の仕組みを確認して、開いた時に見えない方へと動く。そして花瓶へと火球を放った。火球が直撃した花瓶は盛大な音を立てて木っ端微塵になる。


「何だ?!」


その音に反応して乱暴に扉は開かれ、花瓶があった場所へと走って行った。その隙に僕は部屋の中へと入る。もしリリアが来ても直ぐには見つからないはず。


「……掃除用具はあっちの部屋だな、誰がやったかは知らんが余計な仕事増やされる前に処理しとかないと……」


リリアが来る気配は無し、掃除なら猶予はそこそこ生まれただろう。書類で散らかった机の引き出しや、金庫がある。


この部屋は最初の部屋よりも広いし椅子にもクッションがあった。仮眠出来そう所もあるから立場が高い人たちの仕事場かな?


怪しいのは金庫だろう。鍵で開けるタイプだけど肝心の鍵がどこにあるか分からない。鍵を探してる時間があるかどうか分からない。


「シュゥゥウ……」


この時の僕は少し集中力が欠けていたのかもしれなかった。本当はスニークよりもデストロイしたい側の人種だ。


この金庫の中に本当に目的の物があるかすら分かっていない。だけど最悪リリアにさえ見つからなければ問題ないと言う思考になっていた。


そこで僕が取った行動は勿論一つ、金庫の破壊だ。思考を捨てて全力で金庫を殴った。一発でかなり凹み、もう一回やれば中身が見えそうだ。


「次は何だ?! 今日は厄日か!!!」


泣きそうな悲鳴が声が聞こえるけど無視無視。もう一回尻尾で叩くと金庫の扉は完全に破壊される。中は一枚の真っ黒の封筒が入っていた。


触れるとアイテムボックスへと仕舞われる。名前は契約の封筒だ。ここで僕はここから出る時の方法を考えてなかった事に気付いた。


このまま扉に出ようとするなら見つかるだろう。僕は一番窓に近い机に乗って、窓に飛び込んだ。


「ぁぁあああ?!」


僕は悲鳴と共に粉々になった窓を見つめ、無言で宿屋へと戻った。

読んで頂きありがとうございます

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