増える謎と増えるお金
あの特殊クエストを進めるにしても、先ずは怪しまれたら元も子もない。お金も必要だから今直ぐにやるべきではないだろう。
現在は新しいダンジョンの攻略の真っ最中だ。構造は前と変わらないけど、敵は僕よりも一回り大きい赤色の大蜘蛛だ。
そのせいでルーフは怖がってるから偶に悲鳴があがる。
「ち、近寄らないでっ!」
「キシャッ……」
「シャー……」
怖がってるのは嘘ではない。ルーフは自分の身を守るために恐怖心で杖で潰しているだけなのだ。
「蜘蛛は嫌いです……」
「シャァ」
「ぼぁー」
大分進んだからボスはそろそろのはず。宝箱も二つ見つけたし、リリアはボスの分も含めたら満足してくれるだろう。
少し進むとボス部屋の扉らしき前へと着く。中ボスはまだ倒してないから前と同様に二連戦することになるだろう。
「傷は大丈夫ですか?」
「ぼあっ!」
「シャっ!」
「なら今回はお願いします、気をつけてください」
ルーフは扉の前で待機、僕たちが部屋に入ると扉は閉じられる。敵は……革の鎧に身を包んだ二メートルほどの骸骨の剣士だ。
喰らえば痛そうなボロボロの大剣を持っている。
「コロ……ス」
「シャァ?」
「ぼあ?」
あ、コイツ喋れるんだ。骸骨はドスドスと鈍い動きで僕たちに襲いかかってくる。大剣振り回されたら面倒だから先手必勝!
「コr」
「シャァァァアっ!」
「ぼぁー!」
頭部を破壊すれば骸骨でも倒れるはず。ピシッとヒビが入る音がし、すかさず白桜も魔法で追撃をする。反撃される前に一旦離れると、頭蓋骨にはハッキリとヒビが入ってた。
「コロスコロス!」
「ぼぁ……ぼあー!」
「シャァ?!」
その時、何を思ったのか祝属性魔法を骸骨に使ったのだ。バフがかかってしまった、僕はそう思ったけど結果は違った。
「コ……ロ……………ス」
「ぼぁあ!」
「シャ……?」
何故か身体が淡い光に包まれて消えて行ってしまった。もしかして聖なる力とかに弱かったとかそんな感じ……?
なら僕の呪属性魔法が弱点の魔物も居るはず。道は開けたから後はボスを倒すだけだ。
「お疲れ様です、次はわたしが戦います」
「シャー!」
「ぼあー!」
覚醒を使うなら僕たちは呪属性と祝属性魔法を使うだけで良いだろう。ボス部屋へと入ると、道中の大蜘蛛より二倍以上のサイズになり、黒の斑点がまばらにある巨大蜘蛛が僕たちを威嚇していた。
「キシャァァァァア!!!」
「もう蜘蛛は見たくないです、《覚醒》!」
「シャァー」
「ぼぁー」
今回のデバフは……あ、麻痺だ。そこまで効果時間は長くないけど数秒でも動きが止まるのは強力だ。ルーフはカースドランスを唱え、巨大蜘蛛は串刺しにされた。
「ふぅ……これで二つ目のダンジョンが攻略出来ましたね。白蛇サマも白桜ちゃんもありがとうございます」
「シャァ!」
「ぼあっ!」
「後でシーナの実を沢山買ってあげますからね」
「ぼぁあ!!」
「白蛇サマも屋台の焼鳥食べますか?」
「シャア!」
「分かりました!」
宝箱の中身は槍と短剣、落ちたアイテムは巨大赤蜘蛛の糸、甲殻、目玉だった。ちょっと気持ち悪いけどお金なるから入れないと……。
ダンジョンから出ると、そこにはなんとリリアが木陰で休んでいた。どうして……?
「順調そうね」
「何か用ですか?」
「サボってないか確認しに来ただけよ、ちゃんと攻略出来てるようで感心したわ」
「ならさっさと自分の持ち場へと戻ってください」
「そこまで睨まなくても何もしないわよ?」
「……魔物は怖いですよ」
「そうね、私もそこに居る魔物が怖いわ」
はい、一触即発の空気です。暖かい日差しが刺してるはずなのに身体が少し震えちゃったよ。でもルーフの言う通り危ない気がするけど。
帰り道は魔物に襲われなかったから良かったけど、リリアが戦える気がしない。武器も何も持ってなかったし。商人だから魔物除けの道具でも持ってるのかな。
ダンジョンの場所だって誰が確認してるのか分からないし。あれ程度のダンジョンだったらNPCでも攻略してしまいそうだ。
色々考えても答えは特に出ず、宿屋に戻った僕たちは糸以外を売り払ったリーフの帰りをのんびり待つことにした。
「ぼぁー……ぼぁー……」
神々しさの欠片も感じられない白桜の昼寝を眺めているとやっとルーフが帰ってくる。寝てたモフモフも扉を開けた瞬間に飛び起きた。
「ぼぁあ!」
「シャー!」
「こっちがシーナの実と、これがタレつきの焼鳥です。まだまだお金はありますからお代わりが欲しかったら手の甲を突いてくださいね」
タレが満遍なくかけられた焼鳥を頬張りつつ、白桜も幸せそうに齧っていた。今の懐事情はそこそこ改善したため、食べ物にかけられるお金が増えたのだ。
お陰でアイテムボックスに貯めている一部の食料が使われないまま放置されている。偶に確認して腐ってないかは確認してるけどそれは大丈夫そうだった。
白桜もそこまで大食いじゃないから食費もそこまで増えてない。そうして僕たちはお代わりを貰うため、手の甲を同時につついた。
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