思ってたよりボスが弱い(困惑)
扉の前に着きました。特に罠は無さそうだし、このまま進んでも良いかもしれない。
「行きますね」
「ぼあー」
「シャー」
中は宝箱が一つあるだけの狭い部屋だ。他は何も無い。もしかしたら閉じ込められる危険があるから、ルーフが入る前に先に僕が行く。
「ま、待ってください白蛇サマ!」
「シャっ!」
「わたしが入ったらダメですか……?」
「シャァ」
僕を止めようとして来るけど強めに鳴いて静止させる。御守り本当にありがとう……。僕が入って十秒経っても何も起こらなかった。
本当に何も無さそう、宝箱が罠かもしれないけど。僕は尻尾でペチペチしたりして、変なところがない事を確かめた後に開ける。
蓋は難なく開き、中身は柄が赤く、刀身は黒色寄りの剣だった。アイテムボックスに回収は出来たから後々売れば良いだろう。
「白蛇サマ、あまり無茶しないでくださいね絶対に」
「シャァ……」
ちょっと声が低くなって頬を膨らませるから怒ってる。でもルーフを守るためだから仕方ない。とりあえず僕たちは別れ道へと戻った。
「次は……こっちにしましょうか」
「シャー!」
次は右の通路だ。こっちもここから見える限りは何も無さそうに見える。進んでみると何もない空間から赤色のスライムが五匹現れる。
「シャァァア!」
「ぼぁぁぁあ!」
「あの程度ならわたしも!」
多分名前は赤魔法粘体とかそんな感じだろう。一斉に触手を伸ばしてくるけど、そこまで数は多くなかった。
緑魔法粘体は数本、今の相手は二本程度だ。勿論数は多いけどルーフ含め全員が容易に躱わす。氷と火の魔法は当たった相手を倒し、ルーフは杖を取り出す。
でも魔法を使うみたいじゃ無さそう。ルーフは杖を振り上げて思いっきり殴りつけた。
「えいっ!」
「……!」
グチャっとなって哀れにも一匹のスライムが犠牲になる。背後から近寄ってた残りを僕が片付けると、満足そうにルーフは白桜を抱え直す。
「わたしだって戦えますから」
魔法の杖って鈍器だったんだ……そりゃそうか。だってあの筋力があれば可能だし。僕はそこで考えるのをやめて進んで行く。
真っ直ぐ行った時の通路よりも長かったけど、道中に出てくる魔物を倒しながら扉の前へと着いた。すると今度はルーフが開ける前に勝手に開いてしまった。
「何か居ますね……」
部屋はそこそこ大きく、奥には赤魔法粘体を大きくしたような魔物が僕たちを待ち構えていた。倒さないと奥には行けないだろう。
「……わたしはここで待っていますので白蛇サマと白桜ちゃんだけで戦えますか?」
「ぼぁっ!」
「シャァ!」
ボス戦の感じがするしルーフの判断は正しいだろう。敵の強さが分からない以上庇って戦うのは難しい。僕と白桜が一緒に入ると、その瞬間に扉は完全に閉まる。
「……!!」
ボスは身体を震わせて十本の触手を出す。その内の半分は僕たちを狙ってくるけど、僕たちが左右に別れたことで当たることはない。
白桜は距離を取りながら魔法を使うことにしたようだ。僕も魔法を使うのも良いけど……試したいことがある。
さっきのルーフがやった攻撃は物理属性に入るはず。なら尻尾の叩きつけも効くはずなのだ。触手を掻い潜って直接叩く。
「シュゥゥッ!」
「……?!?!」
水風船を殴ったような感覚と共にボスの身体の一部が削げ落ちた。大ダメージだったのか触手の動きも停止する。柔らか過ぎる……。
今が畳み掛けるチャンスだからバフが欲しい。
「シャ、シャァ!」
「ぼぁー?」
「シャー……シュゥウ!」
「ぼぁっ、ぼぁぁあ?」
ダメだ伝わらない。もう復活される前にボコボコにしよう。一応白桜もチャンスだってことは理解してるし問題ない。
そして文字通りボコボコにされたボスは何も出来ずに消えて行った。扉も開いてルーフが合流する。ボスが居た所にはいつのまにか階段が出ていた。
「大丈夫ですか?」
「シャー」
「ぼあー!」
「良かったです……わたしも次の強敵には覚醒を使います」
確か覚醒の効果は魔法威力上昇や浮遊、その他色々なバフが一定時間かかるスキルだ。あまり長続きするスキルじゃないけど強力なのには変わりない。
階段を登ると大きめの扉があり、勝手に開いた。さっきよりも更に広い空間で奥には、牛の頭に人型の身体、手には石の斧を持ったミノタウロス?が居る。
全員で入ると扉は閉まって奥にいるボスも雄叫びを上げる。
「モォォオ!」
「鳴き声はうるさい牛ですね……《覚醒》」
「シャァァ!」
「ぼぁぁあ!」
短い時間で決着を着けるために、僕はボスにデバフで白桜はルーフにバフを放ったのだろう。僕は鈍化を与え、バフの方は……あっ。
「《カースドランス》!」
多分だけど魔法威力上昇が掛かってるのに、そこに重ねるように同じバフを引いたのだろう。マトモな動きが取れないボスに呪いの槍が容赦なく貫通する。
顔と腹の風通しがとても良くなったボスは無くなった。後にはアイテムと宝箱が二つと魔法陣がある。魔法陣は帰還するためにあるのかな。
「宝箱を開けましょうか」
「シャー」
同情するよ下位牛頭鬼、ありがたく皮と骨は貰っておくね。宝箱の中身はシンプルな斧と、青色がかった革の鎧だった。
確認は後でするとしてダンジョンから脱出する。こうして無事に初めてのダンジョン攻略は終わったけど、瞬殺されたボスのことは忘れることはない。
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