ダンジョンは危険がいっぱい
宿屋に戻った僕たちはこれからについて考え始める。無論白桜はシーナの実を食べて嬉しそうにぼあーとしてるけど。
僕とルーフは向き合って作戦会議という名の意思確認を始める。
「これからはダンジョン攻略を基本として動く、隙とお金があれば逃げ出す準備をする、で良いですか?」
「シャー」
「ギルドマスターと言う偉そうな役職ですからもしかしたら監視の目を回してるかもしれませんね。もし見つけたら不審人物として白桜ちゃんと白蛇サマは処理をお願いします」
「ぼあー?」
「シャァ」
「では早速行きましょうか」
白桜はハテナを浮かべてるけど、まぁちゃんと言われたことは理解してそうだ。ルーフが頼もしくて涙が出そう。
ダンジョンの場所は門から右方向、つまり北方向だ。何も不審に思われることなく僕たちは森へと出る。おっと早速戦士小鬼が。
周りにNPCの姿はなし、じゃあ僕が相手を……。
「ぼぁぁあ!!」
「グギッ?!」
尖った氷の礫を複数喰らった相手は倒れる。まだ息があったけど無情にもまた同じ魔法を浴びせられて布切れへと変わった。
「ぼあー!」
「シャァ……」
「白桜ちゃんありがとうございます」
僕はルーフの身体に巻き付いていても、先に白桜が処理しそうだから仕方なく一鳴きしてから前へと出る。見つかったら危険だけどもう少しすればNPCの活動範囲からは外れると前の探索で分かってたからだ。
活動範囲は熊が出始める所まで、そこからは完全に魔物の世界だ。何故こんなにもNPCの活動範囲が狭いのかは分からない。
兎も角熊はHPが高いから僕が前に出ておいた方が安全なのだ。知能が低いことも知ってるし。決してルーフに良い所を見せようとかそう言う思いはない。
地図の場所まで着くと、そこには石碑が立っていた。
「騙された……?」
「シャー……?」
石碑には何か書かれてるけど読めない。それはルーフも同様のようだ。白桜は暇なのか寝かけてる。僕が石碑に触れてみると、突如地面が揺れ始めた。
「地震?! わたしの側へと来てください!」
「シャァ!」
ルーフの近くに行き、警戒すると直ぐに揺れは収まった。すると石碑の横に大きめの円盤状の石に、魔法陣が描かれた物を発見する。
つまりこれがダンジョンへの入り口……?
「もしかしての、乗れば良いんですか?」
「シャァー」
「ぼあ……」
「分かりました……」
ルーフは怪しみながらも一緒に乗ると、視界が暗転する。そして次の瞬間には石造りの部屋へと転移していたのだ。
「白蛇サマ! 白桜ちゃん!」
「シャー」
「ぼぁー」
全員この部屋の中にいる。分断はされてないけど多分ダンジョンの中だろう。
「良かったです……ここはダンジョンの中でしょうか?」
「シャー」
「なら早速攻略してしまいましょう、お母さんからダンジョンで迷った時は上か下に続く階段を見つければ良いと言ってましたから。ちゃんと勉強しておいて良かったです」
「ぼぁー!」
この世界の義務教育にはダンジョンについての知識があるのだろうか。ルーフはやる気みたいだし、白桜も楽しそうだ。
石の扉を開けると、また石で出来た通路が三方向に別れている。通路の広さは三メートルほどで松明が等間隔で置かれていた。
どの道に行くかはルーフ次第。彼女は真っ直ぐ行くことにしたみたいだ。
「何もなさそうですね」
「シャー……?」
「ぼあ」
確かに何もなさそうだけど、警戒はしておいた方が良い。少し進むと扉が奥の方に見える。道中に分岐はないから本当に真っ直ぐ行くことになりそう。
ここで僕は違和感を持った、明らかにここら辺の天井の色が違うのだ。僕が上を見ているのが不思議なのかルーフと白桜は首を傾げている。
僕に伝える手段は無いけど、きっと危険だ。色が違う天井の真ん中ら辺に着いた時に危惧していたことは起こる。
前後の天井から杖とボロボロのローブを着た小鬼と、狼がそれぞれ三匹づつ落下して来た。
「っ……?!」
「ぼあっ?!」
せめて立ち止まるなどして何かあると無理矢理にでも伝えれば良かったのかもしれない。でも後悔するよりも先に殲滅しないと。
挟み撃ちに合ってるから早くどっちかの数を減らさないといけない。二人は驚いて動けてないから、ルーフに向かった狼にカースを放つ。
「キャオンッ?!」
効果は麻痺!これはラッキーだ。杖持ちの小鬼は魔法使いだろう。火球を二匹目の狼に撃った後に、小鬼の方へと尻尾を打ち付ける。
「グキャ……」
プリン並みに柔らかい……。これなら僕一人でも大丈夫。
「グギギ……グg」
「シャー!」
魔法を使うのは許さない。ってそろそろ狼の相手しないと。僕に向かって来た三匹目の狼の攻撃を避けて麻痺が切れた方を噛む。
「わ、わたしも援護します! 《カースドランス》!」
「ぼ、ぼぁあ!」
やっとルーフ達が復活してくれた。残りの狼達はルーフによって串刺しにされる。白桜は祝属性魔法を使ったのか僕に攻撃力増加のバフがかかった。
「シャァァア!」
「グギャァ?!」
残り二匹となった小鬼たちは逃げ出そうとするも、僕の尻尾によって潰された。ふぅ……一番戦い慣れしてるのが僕だからちゃんとしないと。
「これからは気をつけます……」
「ぼぁ……」
「シャーシャー」
確かに何も考えずに動かれたら大変だけどルーフ達は良い子だ。反省を活かして周りをちゃんと見始める。僕も今まで以上に警戒しながら扉へと向かって行ったのだった。
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