誤魔化せなかった……
ルーフじゃなきゃ冒険者ギルドまで来れなかった。兵士等に聞かれても誤魔化すことに成功し、矛盾もなく話す姿は名女優並みだ。
そんなこんなで無事に使い魔登録が終わる。種族については姿の関係で苦笑いされつつ聞かれなかったのと、深く詮索はして来なかったから問題にはならずに済む。
お次は白桜の餌探し、果物屋や八百屋を回る。好き嫌いの判別方法は鳴き声しかない。
「リーンゴーンの実は?」
「ぼあっ……」
「うーん……シーナの実はどうですか?」
「ぼぁぁぁあ!」
「ならこれにしましょうか」
どうやら梨に似た果実が好きみたいだ。腕から出て今すぐにも食いつきそうだけど、ルーフの本当に何処にあるのか分からない筋力によって阻まれてる。
ちょっと字面がアレだけど、巻き付いてる僕からすれば身体は柔らかいのに……。まぁ周りからすれば可憐な少女としか思われないだろう。
「では換金しに行きますね、自信はあるので大丈夫です」
その次は作った物を売りに行くみたいだ。誰が買い取ってくれるかと言うと、向かった先は……冒険者ギルドは直感で分かったけどコレは分からない。
「白桜ちゃん、今から商業ギルドですから大人しくしてくださいね」
「ぼあー」
その名の通り商業を取り扱ってる所なのだろうけど、人が多そうだから迂闊に顔を出せない。諦めてルーフの言葉などを頼りに状況を理解することにした。
「これらを買いとってもらえますか?」
「お嬢ちゃんが作ったの?」
「はい」
「子供にしてはかなりしっかり作られてるわね……ちゃんと森の素材を使ってるみたいだしそこそこのお金にはなるはずよ」
相手は若めの女性の声だ。鑑定スキルとか持ってるのだろうか。
「どのくらいになりますか?」
「そうわね……木の物は百G、石の包丁は三百Gでどう?」
「……森の素材を使った物のはずなのに、随分と安いですね。そこら辺で売ってる粗悪な品と同等の値段ですか」
「子供にしてはちゃんと理解してるわね?」
「わたしのことを子供だと思って舐めたら痛い目あいますよ?」
「ぼぁっ!」
「買い叩こうとしたのはごめんね。でもね、お嬢ちゃんも隠してるモノ見せたらどう?」
「っ……?!」
「はぁ……もう少し外套は上手く着て欲しいわ。ここで騒がれたくないなら奥に来て」
「シャァっ……?!」
バレた……?!ルーフもまさかバレるとは思ってなかった。僕も微動だにしなかったから普通分かるわけがない。
「白蛇サマ、逃げますか?」
「シャァー」
首を横に振る。少なくともまだ慌てて逃げる時間じゃないはず。それに何か話したそうだし。
「分かりました、それとごめんなさい……わたしの不注意のばかりに……」
「シャ」
ルーフは悪くない。もしかしたらそう言うスキルだったのかもしれない。僕はフードから顔を出しながら僕を見破ったお婆さんを見る。
赤いケープを付け、青い髪は纏められており清潔感を感じられる。三十路くらいだけど何処か圧がある。僕を見たお姉さんは驚いた声を出した。
「まさか白蛇だなんて……お嬢ちゃんの名前は?」
「ルーフです」
「ふーん……あの因習村から来たのかしら?」
「そうです」
「ここまで来れたのは白蛇のおかげ、ルーフたちのことはよく知ってるわ。あのデブ村長がよく買い物に来てたからね。でも流石にそこの白い塊の方はよく分からなかったわ。後で貸してくれる?」
「無理です。それで……何が目的ですか?」
「フードを取ってもらわないと言えないわよ」
ルーフは少し悩んだ後、フードを取る。
「私は三つ目を忌み嫌ったりはしないよ、その力は少し恐ろしいけどね」
「一体なんでバレたんですか……」
「元々目が良いのと直感、長いこと商人やってるとそう言うことが出来ちゃうんだよね。年については聞かないで貰えると嬉しいよ」
「それで本題は?」
「ルーフたちにダンジョン攻略と小物の納品を続けて欲しいだけ。ダンジョン攻略はこっちから地図を送るから確認してね。報酬も色々譲ってくれれば約束出来る。それさえ続けてくれれば何も言わないよ」
「……分かりました。貴女の名前は?」
「商業ギルドのマスター、リリアよ。普段はあぁやって下っ端のフリして金になる話がないか探してるの。たまにこうやって小鬼が金背負ってやってくれるから辞められないのよ」
「中々に性格が良いですね」
とりあえず見た目通りの年ではないことは察した。僕は睨みながらも、バチバチになってる目の前の女性二人にビビっていた。
この間に挟まる勇気はない。白桜は普段通りだから肝が座ってる。出来ればこの街を出るまで誤魔化したかったけどそれは諦めるしかない。
ダンジョンも気になるし、何より目の前のリリアは何かドス黒い気配がする。碌な人じゃなさそうだけど報酬があるから今の所は従うしかない。
「これはルーフのギルドカード。無くさないでね?私はいつでも同じ場所で待ってるから、ダンジョン産の物はここで取り扱いするわよ」
「はい」
「あまり睨まないくれるかしら、私は金の切れ目が見えない限りルーフ達の味方よ。それに演技は上手いしそこの白蛇も普通の人からはバレないから安心してね」
「……」
「私は金になる匂いさえあれば魔王にでも悪魔にでも邪神にでも魂を売る人だわ、覚えておいてね?」
うん、早くこの関係を解消する手段を考えよう。その内取り返しのつかないことになる気がする。この場は一枚の地図を渡された後一旦解散となり、モヤモヤしたまま宿屋へと帰った。
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