熊と白蛇サマの大乱闘
綺麗な空、緑が溢れる木々、爽やかな風、今にも僕を殺さんとする獰猛な熊。森はいつも通り平和ではない。
「グォオオオオ!」
「シャァァ!」
木材と石材を集めてたら偶然出会ってしまった。長い凶悪そうな爪を避けながら試し撃ちで呪属性魔法、カースを使う。
効果はランダムなデバフを一つ相手に与えるものだ。火属性と違って漢字では無く、何故かカタカナなのは何か意味があるのだろうか。
カースをくらった熊は途端に動きが鈍くなる鈍化状態になる。その隙を逃さず腹に尻尾を叩きつけ、怯んだところをさらに毒牙で追撃した。
鈍化と毒牙の二重苦でこれ以上何も出来ず、相手は地に伏した。爪熊の爪と毛皮を手に入れた僕は一旦休憩する。
ルーフからのおつかいの残りは砥石だけ。問題なのが片っ端から集めても全て石材なのと、NPCの冒険者と兵士のせいであまり探索が出来ないのだ。
そもそも街から出る時点でかなり危なかった。と言うのも門から出入り出来ないから他の場所を見つける必要があったからだ。
何とか見つけて入ったけど、人通りは大通りよりは少ないけどあるから気をつけないと普通に見つかる。休憩を終えた僕はもう一度移動し始める。
もう少し奥に行った方が良いのかな?見つけた穴から大体真っ直ぐ行ってるから方向的には村の方向と真反対だ。
地図には今向いてる方向が西と書かれていたのを思い出す。きっと何かあると信じたい。何よりルーフを一人で居さすのは僕が許せない。
とりあえず使えそうなアイテムや、ちょこちょこ襲って来る敵を返り討ちにしながら進んでいく。敵は近くに巣でもあるのかと言うほど爪熊が多い。
でもハチミツはなかった、黄色の熊でも来ないかな。爪熊の見た目が双突獣並みに怖いから癒しが欲しい。そんな願いが叶ったのか、プルプルした緑の球体が現れた。
かなり柔らかいのか地面に接している部分は平らになっている。まぁ多分スライムだろう、確かに爪熊よりは千倍良い。
スライムはプルプルと身体を震わせて触手を数本出した。その触手は僕を捕らえようと伸びて来る。火球は効くかな?
「シャア!」
「……?!」
火球が直撃したスライムはポヨンポヨンと跳ね飛ばされながら倒れてしまった。流石スライム、弱い。名前は緑魔法粘体だ。
緑魔法粘体の魔石と言うアイテムを拾って先へと進む。しばらくすると遠目から、村のような物が見えたのだ。
近くまで寄るとその村は全ての建物がボロボロで、廃村だと言うことが分かる。ただ村人の代わりとしてなのか爪熊を倍以上大きくした熊が居座っていた。
目は血走ってて鼻息はとても荒い。加えて爪には血痕のような跡が付いていたのだ。多分この村を壊滅させたのはあのボス熊だろう。
倒したら何かあるかもしれない、村なら砥石とかあるかもしれないし。僕はボス熊を倒すことにした。まだ相手は気付いてないから先制を取る。
「シャァ」
「グォォッ?!」
カースを使ってデバフを与えてから毒牙で足を狙う。今回のデバフは目に見えて分かるものではなかった。だけどいつもより噛みつきが通りやすく感じる。
防御力が下がっていたのだ。不意打ちをもらったボス熊は反撃とばかりに刺すように爪を地面に振るう。魔造石像ほどではないと思うけど当たりたくはない。
「グォォオオオオオオオ!!!」
「シャァァァァア!」
躱しながら距離を取った僕は火球を放った。だけどボス熊は当たる直前で爪で火球を切り裂く。魔法だから完全には相殺出来ないみたいだけど威力のほとんどは消された。
デバフが切れる前に有効打を出来る限り与えておきたい。突進して来るボス熊に対して僕はジャンプし、頭を尻尾で叩こうとする。
バカ正直に突進して来た相手に尻尾はクリーンヒットしてのけ反り、僕は僕で反動で吹っ飛ばされた。筋力舐めてた……。
そこそこ痛いけどそれはボス様も同じ。今度は僕から距離を詰める。爪熊よりは速いけど大振りな攻撃を身体を捻って避けて尻尾と毒牙で少しづつダメージを与えて行く。
このままだったら勝てる、そう思った瞬間にボス熊は怒ったような鳴き声をあげた。嫌な予感がして離れると周りから爪熊が数体出て来たのだ。
カースはコストが高いからポンポンと使えるものではない。数の有利は取られたくないから速攻で各個撃破を目指す。
一番近い爪熊に向かって火球を使い、それに気を取られてる隙に尻尾で沈める。そうは問屋が卸さないと他の爪熊も突進して来るけど、知性が低いのか誘導すると簡単に衝突事故を起こしてくれた。
ボス熊はもうデバフの効果が切れてるから再度掛け直す。今度は視界が塞がれたのかフラフラと建物に衝突して大変そうだ。
最後の爪熊の処理を終えた僕は未だフラフラなボス熊の首に巻き付いた。そろそろMPがヤバいけど追い討ちカース!
僕のMPと引き換えにボス熊は更に動きがおかしくなり、後ろに倒れてしまった。もしかして操作反転とかそう言うのを引いた気がする。
僕の方からは分からないけど大チャンスだ。起き上がる前にちょっとグロいけど尻尾で目を突く。
「グォオッグォォオオオオオオオ?!?!」
「シャァっ!」
ルーフのおつかいの為だからごめんね。この世は弱肉強食なのだ。両目を潰したタイミングでボス熊は一生起き上がるがなくなった。
アイテムは……巨大爪熊の爪、毛皮、骨、心臓だ。一応ボスだったのか大量に色々手に入った。
きっと何かに使える日が来るだろう。これで砥石が何処かにあれば完璧なんだけど。倉庫らしき建物を見つけ、壊された壁から入ると目当ての物が見つかる。
他にも油だったり人語で書かれたメモ、木箱に入れられた裁縫道具があった。これも持っていったら喜んでくれるだろうか。
僕はホクホク顔でルーフの元へと戻ろうとし、うっかり穴から出る際に子供と目があって大慌てするのは別の話である。
読んで頂きありがとうございます、感想、誤字報告も感謝です