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=あの指先の向こう側=

「……もしかして私たち転送された?」

「転送って……、なんでそう思うの……?」

「私たちラノハクトから大勢で一気にここまでやってきたって言ったでしょ?」

「あぁ、うん」

「その時の転移装置でワープした感覚と今のがそっくりなの。」

「そうなのか……」


そう、他にない独特な、浮遊しているような、どこまでも突き抜けていくような感覚を全身に食らった。

但し根拠はそれだけだった。あの一瞬に海馬にこびり付いた感覚だけ。


気がついたら地球に居たんだ。  いつの間にか。  仲間とはぐれて。


「今度はワープかよ。」

後に引けないところまでやって来てしまった。

現実がくっついて離れてくれないような、そんな恐怖を突きつけられている。私はこんな状況が特に苦手だ。


さぁて、あのマシンからここへと繋がっているのは何故だろうか?


彼が先の壺のくびれを鷲掴み、持ち上げようとするが……

「壺おっも!……というか、え?」

全く持ち上がらないようだ。

彼が無邪気にもふざけているのか、

それとも不思議な力で筋力が減らされているのか?

床に取り付けられているのか? は、分からないが。

一つため息を溢し諦めたのか、後ろで様子を眺めていた私に近づく。


「なんか変だよね……ここ。」

「そうだね、さっきから変なところが続いてる——」

「そうじゃなくてさ、ほら、なんか体軽くない?」

「あー……っと、言われてみれば……?」

確かに軽い。腕も足も軽くて弾むようによく動く。

嬉しくてちょっぴりニヤけるくらいに、だ。

「ブンブンッ」

「そうそうこの感覚。ちょっと懐かしいな」

故郷を思い起こす重力の頼りなさ。

「ダンッ」

ジャンプしてみる。おお!

すごく高く飛べるじゃない!

体は相当高く跳ね、その後ふわりと着地した。それは衝撃的な衝撃の無さだった。

地球じゃない。


「ほっ!」

私に続いて飛び上がる。……そして首を少し傾げた。

彼は味わったことのない重力の違う顔に戸惑っているのだろうか?


「こちらからこの星の歴史が渦巻く様子をご覧になれます」

うわ、まただ。

そうやって耳を通さず直接私の声が私の頭の中へ聞こえてくる。

そして間も無くご丁寧に足元に誘導するような点線が浮き上がってきた。


私は彼を煽るようにひどく小慣れた移動をしてみせた。どうだ!出来なかろう!と。

彼は私について行くのが精一杯のようだった。

地球人が違う重力下で歩くのってそんなに難しいのか。やや残念だ。


馬鹿みたいにド広い機内を、ひたすら点線通りに歩いていくと、縦に並んだこれまた大きな窓が見えてきた。


ここから……何が見えるの?

下を覗くとそれはそれはとてつもない高度だった。

手が届くほどに雲が、いや、そのさらにずっと下にも雲がある程。

隙間から見えた果てに崩れ去った地球の街と見覚えのある黒い点が見えた。


やっぱり……あんなのがそこらじゅうにいるのか……

「こんな高いところ初めてだ……」


私たちはどういう訳かトリアンドルスの内側へと転送されたらしい。

うーむ、この光景を見てしまったらそう信じるしかないか。アナウンスと私の感覚を含めて。

だとしたら私がラノハクトから地球へとやってきた転移装置そのものだ。

本来なら授業のために地球の上空で環境と時間を制御しているはず。なのだが、

どうして地球の建物を破壊した怪物と転移装置が繋がっているのだろうか?

二つのマシンの外見は全くの別物だけれど、内部構造から感じ取れる無機質で奇妙な雰囲気はどことなく似ている。

関係が無いと言い張るのは難しいくらいには。


ただこうして窓の外を望んで状況を理解しようとしている間にも、放たれている光線によって地球の陸地が溶け、知らない街が失われていっている。

窓から見える景色に息を飲み、そしてどうしようもない感情が芽生えた。


彼が窓の左右の柵の方から意味ありげな小声と共に手招く。

どうやら下に続く螺旋状の動く道を発見したらしい。

考え事をしていて目に入らなかった。


背中にぴたりと続き、うっすらズズズと音を立てるオートスロープに乗って下の階へと向かう。

人影がちらりと見える。


ん?


「あれっ、もしかして……!?」

私はまさかそんなはずは無いと思いながら傾斜を滑り、走り出した。


そこでは多くの人たちがシアターをすっぽりと被って座り込み、

声をかけても動くような素振りはなく、動かそうとしても誰一人起き上がらなかった。

地球人と同じく止まっているようだ。それも集団で。

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