凛の悲しみ
『ハァ、ハァ、ハァ』
俺と凛の息が重なり合う。
「ありがとう、凛」
俺は、凛から離れた。近くにあったティッシュを取って、凛を拭いてあげる。俺も、避妊具を縛って、ゴミに捨てて拭いた。俺は、パンツをはいて凛の隣に横になった。
「ありがとう、凛」
凛は、首を左右に振って笑った。
「凛の初めては素敵だったんだろ?」
俺の言葉に凛は、目を伏せた。
「違うの?」
凛は、ゆっくり頷いた。
「じゃあ、凛の初めては俺だね」
横向きに寝転がって、俺は凛の両手を包み込むように握りしめる。
「私も、話してあげる」
凛は、そう言ってその手をキスするぐらいの距離に持っていく。
「凛の初めて?」
「うん」
凛は、そう言ってその手越しに俺を見つめる。その手が震えてるのを感じる。
「私はね!17歳だった。高校二年生の頃でね」
「うん」
「その時、仲良かった友達が大学生の彼氏がいたの」
「うん」
「その子が、彼氏と彼氏の友達とクリスマスパーティーするから!凛ちゃんも来てって言うの」
「うん」
「いいよって!実際は、12月23日だったから行ったの」
「うん」
「それで、その子の彼氏の友達の家でクリスマスパーティーやってね!楽しかったんだけど!だけど、何かね。頭がグラグラして私寝ちゃったの」
凛は、そう言って涙を流し始める。
「目が覚めたら、頭が痛くて…。友達はいなくて…。友達の彼氏の友達が、私の上に座ってた」
「凛」
俺は、凛の涙を拭った。
「初めてなのに…。凛ちゃんみたいな綺麗な子はいろんなやつとしてるんだろうって笑ってるの」
「もう、いいよ!凛」
凛は、首を横に振って話す。
「嫌だって言ったの!降りてって言ったの!なのに、その人の力の方が強かった。無理矢理キスされて、無理矢理服を脱がされて、暴れると嫌だって言うと彼はさらに興奮した」
「凛、もういい」
「よくない!聞いて…。嫌だってまた言ったの!今日は、好きな人に会うからって…。そしたら、初めての女って重たくて気持ち悪いよって笑ったの」
俺は、凛の初めてを奪ったやつが許せなかった。
「私ね、その言葉に流されて泣きながらしちゃってた」
「凛」
「だから、私も汚いんだよ」
「凛は、汚くない」
俺は、凛の手を握りしめる。
「蓮見君が好きだったの!12月24日、蓮見君とデートだったの。勇気だして誘ったの。二年間片想いしてたから…。そしたらね、いいよって言ってくれたの」
凛は、あの頃を思い出してボロボロ泣いてる。泣きながら、手が震えてる。
「私、待ち合わせ場所に行けなかった」
「凛、泣かないで」
「そしたらね、学校が始まったら蓮見君が好きだって!だから、凛ちゃん付き合おうって!あの日、私、ドタキャンしたのに許してくれたの」
凛は、そう言ってボロボロ泣きながら深呼吸をする。




