家、来る?【修正済】
「ここじゃ嫌?」
拓夢君の言葉に私は頷く。
「じゃあ、俺ん家来る?」
昔ならきっと断わっていた。でも、今の私は頷いていた。
「じゃあ、行こうか」
私達は、カラオケを出た。
一緒に並んで歩いて、電車に乗って拓夢君の住むマンションにやってきた。
「どうぞ」
「お邪魔します」
拓夢君の家は、広めのワンルーム。
「シャワー浴びる?」
「うん」
「一緒に……?」
「恥ずかしいから無理」
今さらながら、恥ずかしく思っていた。これから、自分が何をしようとしにここに来たのかわかっているくせに……。拓夢君は、玄関で私を引き寄せて抱き締めてくる。
「可愛いいね、凛さん」
「何言ってんの……」
「シャワー、そこだから!ユニットバスじゃないから」
「うん」
「バスタオルは、後で置いとくから」
「うん」
拓夢君は離れてくれた。
私は、言われた通りにシャワーを浴びに行く。洗面所で服を脱いで、畳む。
【セックスするんだ。】お風呂場に入って、シャワーを捻る。
【昨日会った人間とセックスしちゃうんだ……。尻軽だな私】そう思ったら何故か笑えてくる。私は、鏡に映る自分を見つめた。三年前から、自宅で鍛え始めたとはいえまだまだおばさん体型。
よく、こんな体で若い男に抱かれようと思っているものだ。でも、今は何も考えられないぐらい抱かれたい。
知らない人に、このポンコツの体をあげたかった。こんな体でも役に立つって思ってもらいたかった。
ボディソープを手に乗っけて、体を丁寧に洗う。今は、ただ肉体を貪り食うだけの空しい関係を味わいたかった。
頭の中にセックスしかないだけの感覚を味わいたいだけ……。
わかる?わからないよね……。誰にも……。【赤ちゃん、赤ちゃん、赤ちゃん……】そんなセックスをやめる為に今から抱かれるんだよ、私。
ガタン………。
シャワーから上がるとバスタオルが置かれていた。私は、丁寧に体を拭いてから、バスタオルを体に巻き付けて上がった。
「お水どうぞ」
「ありがとう」
「俺も入ってくるね」
「うん」
私は、テーブルに置かれたお水を飲んだ。遮光カーテンのお陰で、電気をつけないと昼間でも暗いらしい。
何もない部屋。音楽の物が置かれてる部屋。ゴクゴクと水を飲む。暫くして、バスタオルを巻いた拓夢君がやってきた。うっすらと腹筋があるのがわかる。細マッチョだった。拓夢君は、お水を飲んでいる。
「電気消そうか?」
「うん」
拓夢君は、パチンと電気を消す。
「こっち」
手をひかれて、私はベッドにやってきた。
「真っ暗がいい?」
「うん」
「誰とでもするの」
「初めてだよ」
「結婚して、どれくらい?」
「13年」
「何で、しようとしてるの?」
「赤ちゃんの事を考えたくないから」
拓夢君は、サイドテーブルの引き出しから避妊具を取り出している。
「前のだから使えるかな?」
「大丈夫じゃない。避妊しなくたって私は妊娠しないし」
「それは、駄目。ちゃんとするのは、当たり前だよ。病気を防いだりもするんだから」
「そうだね」
病気……。あるかも知れないよね。お互いに……。