高崎LOVERS 23 高崎の正月
妻の美里がキッチンで朝食を作る物音で田中は目を覚ました
おはよう、早いね
タカシさん、おはよう
っていうよりも
明けましておめでとうございます
お、そうだよな
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
田中はゆっくりとお辞儀をした
お正月なのに早くから起こしちゃったわね。時差ボケがまだひどくて良く寝られないのよ
時差ボケするほどの時差もないんじゃないか?
数時間違うってのが一番たちが悪いのよ。むしろ半日くらいズレてくれた方が良いみたい
そういうもんかもね
まだ初日の出までには時間がありそうだ
今お雑煮を作ってるのよ
ありがたいね~。Theお正月っていう感じは久しぶりだなぁ
長く家を空けてごめんなさいね
いやいや良いんだよ。子供も育って、やっと自分たちの時間を謳歌出来る時間が出来たんだから
田中は美里と並んでホットコーヒーを淹れた
美里も飲むか?
いただきます
初日の出を待ちながら二人で熱いコーヒーをすすった
あれ?二人とも早いじゃん
寝ぼけ眼で娘の奏が起きてきた
昨夜から帰って来て泊まっていたのだ
昔の布団で寝たから体痛いよ~
そりゃそうだろ。もう煎餅布団だからな
喘息が出なかっただけましよね
今お餅焼くからね
私もコーヒー飲む~
末っ子の奏は母親の前では元の甘えっ子に戻ってしまう
お?初日の出だぞ
マンションのベランダ越しに朝日が昇ってきた
熱いコーヒーを持ちながらベランダに出る田中
おお~寒いなぁ。良く晴れていいお正月だ
お父さん寒いから閉めてよ~
奏に言われて田中も部屋に戻った
熱々のお雑煮を食べながら
お父さんお母さん、初詣行こうよ
と奏が提案した
そうね。奏助も来るって言ってたから午後になったら行きましょうか
それじゃ午前中はだるま市でも行くか?
元旦から開催されるだるま市は高崎の風物詩だ
日が高くなると三人でだるま市へと出かけた
三人で行くのって小さい時以来じゃない?
ずいぶんと久しぶりだよなぁ
あ、甘酒あるよ
熱々の甘酒をすすりつつ人ごみを進む
ずいぶんと多く人が出てるわねぇ
東南アジアみたいか?
ちょっと雰囲気は違うけどね。向こうは人口が多いから。
こんなに寒くないだろうしな
玄関に飾る小さなだるまを買って家に帰ると
すでに息子の奏助が来ていた
あ~、だるま買いに行ってたのか
駅前すごい人だったね
奏助お昼まだでしょ?
食べないで来たからペコペコだよ
お兄ちゃん、おせち食べたら初詣に行こうよ
奏助がいるならオレは飲んでも大丈夫だな
田中は冷蔵庫からとっておきの冷酒を取り出した
群馬の銘酒、水芭蕉の大吟醸
少し甘めの群馬の酒が最近は美味く感じられるようになってきた
それではみんな揃ったところで
明けましておめでとう
家族で元旦に揃うなんて何年ぶりだろう
お父さん飲みすぎないでよ
分かってるよ。神社で転ぶわけにいかないからな
この三食玉子、私が作ったんだよ
ほぼ母さんだろ
そんな事ないし~
家族みんなでおせちをつつき
田中は正月から美味い酒を飲んだ
それじゃ出かけましょ
美里の掛け声で初詣に出かける
お父さんまだこのビートル乗ってるの?
私が小さい時に買ったんだよね~
奏はこのビートルに育ててもらったようなものだからな
小さなビートルに大きくなった子供たちと四人で乗り込む
奏助には小さすぎるか?
まぁまぁきついけどなんとかなるかな
背の高い奏助が恐る恐るビートルを走らせる
聖石橋を越え、川沿いを南下して向かうのは
田中家御用達の山名八幡宮だ
県道30号線を右折し、小さな鳥居をくぐると
全国的にも珍しいと有名な
上信電鉄線路にほど近い神社が現れた
白いビートルを停め
一家で低い高架下をくぐる
あ~懐かしいな
奏の七五三やったのがついこの前みたいね
成人式は来れなかったからな
七五三の頃はオレのへそ位までしか背が無かったのになぁ
お兄ちゃんが大きいだけでしょ
元旦の神社は人が多い
急な石段を転ばないように昇り
御本殿に参拝する
それじゃみんな並んで
奏の先導で
田中、美里、奏、奏助が並び
一家で手を合わせる
また来年も家族で元旦が迎えられますように
田中は声に出さずに小さなお祈りをした




