高崎LOVERS 21 倉渕村
相間川のほとりに小さなチェアを置き
田中はポットの熱いコーヒーを飲んだ
晩秋の相間川だが今年はまだまだ紅葉が美しい
休日という事もあり近くにはキャンプを楽しむ家族もちらほらといる
澄んだ川面を眺めつつ
真夏に家族で訪れた頃を思い出す
高崎の夏は厳しい
連日40度近い猛暑が続くと
逃げるように家族で倉渕村に出かけたものだ
高崎市内からは車で1時間ほどかかるが
道中のフルーツ街道を眺めつつ
風光明媚な榛名山中を走るドライブが楽しかった
ただでさえ標高の高い倉渕村に来ると涼しい風が通り抜ける
せせらぎ公園に車を止め
相間川に水着で飛び込む子供たち
年の離れた奏と息子の奏助のはじける笑顔が目に浮かぶ
若かった田中も負けじと川に飛び込み
一緒に上流まで川のぼりをしたものだ
冷たい川の水
土の香り
上流から吹くそよ風に
いっとき高崎の猛暑を忘れることが出来た
川沿いで眺める妻の美里が呼ぶと
腹をすかせた子供たちがおにぎりに駆け寄る
夏に飲む冷たい麦茶はなんであんなに美味しかったんだろう
田中は閉じていた目をゆっくりと開いた
過去の思い出は夏のものばかりだが
晩秋の倉渕村も哀愁があってまた良いものだ
冷めたコーヒーを飲み干そうとすると
上流から戻ってきた奏が呼ぶ声が聞こえた
お父さ~ん
足が濡れちゃったよ~
という奏の声が
不思議なほど幼かったころに似ていたのは
気のせいだったのだろうか




