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高崎LOVERS  作者: リリィ
17/24

高崎LOVERS 17 高崎美術館

秋も深まった心地良い日の夕暮れに




田中は高崎駅前の美術館へと赴いた




高崎は駅の両サイドに伝統のある美術館が存在する稀有な街だ




どちらも徒歩数分でたどり着くことが出来る




駅前に特別展の告知がされていたのを見て




今日は東口にあるタワー美術館へと向かった




高崎市でも高層の部類に入るタワーに入り




エレベーターでエントランスへと向かう




平日には時間を持て余した御同輩たちが多い




それでも混むほどではなく




自分のペースで美術品を楽しむことが出来る




大人300円になります




受付の女性に言われ




安すぎるだろ




どうやって運営してるんだ




と不思議に思いつつ館内に進む田中




ここは不思議と心が落ち着く田中のお気に入りの場所だ




浮世絵や日本絵画が好きな田中は




特別展が開催されるたびに




娘の奏と共にこの美術館へ足を運んできた




子供はほとんどの特別展に無料で入ることが出来るが




奏以外の子供がいるのは見たことが無かった




美術館の後で必ず買ってもらえるアイスを目的に




しぶしぶ奏もついて来てくれたものだ




そんな相棒もすでに家を出てしまったために




最近の田中はもっぱらお一人様だ




今回の特別展はタワー美術館お得意の浮世絵展




川瀬巴水の情景深い浮世絵にはなぜか郷愁をそそられる




川瀬巴水は夕方の描写がまたいい




だから今日はわざわざ夕方になるのを待って訪れたのだ




明治時代のうらびれた街角にうっすらと灯がともる景色に




タイムスリップしたような気持ちにさせられる




ふと見上げると




遠くの壁にかかった絵を見上げる老人が目に入った




ご長老の久保田じいさんだ




祭りを仕切っている時とは全く違い




なんだか教養人のような風貌である




まぁ人には色々な面があるからなぁ




あえて声はかけずに一定の距離で浮世絵に見入る田中




階下に降りれば




壁一面の浮世絵に圧倒される




ここまでの作品をどうやって蒐集しているのだろうと思いつつも




十分に巴水の世界を堪能した




時間を忘れて過ごした田中が屋外に出れば




予想通り日は暮れて




熱燗をかるくひっかけるにはもってこいの時間になっていた




さてせっかく東口に来たんだから




天狗でおでんでも食べて帰ろうか




ライトダウンの前を合わせ




木枯らしに向かいながら




田中は赤提灯を目指して歩き出した

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