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高崎LOVERS  作者: リリィ
16/24

高崎LOVERS 16 高崎 蕎麦

田中はふと思いついて




高崎駅から両毛線に乗り込んだ




平日昼間の電車は人もまばらだ




秋晴れの日差しが柔らかく電車内にふりそそぐ




ものの数分で高崎問屋町駅に着いた




西口のこじんまりとしたロータリーは




いつも田中の気持ちをほっこりさせてくれる




学生時代に常連だったトンコツラーメンの名店を横目に歩き出す




幹線道路に囲まれた高崎問屋町周辺は




エアポケットのように静かな街並みだ




問屋町中央公園を抜け




ひなびたおもちゃ問屋や祭り道具屋を眺めながら




中央通りを渡り




路地裏に入れば




お目当ての店が見えてきた




高崎蕎麦の名店




蕎麦霧である




茅葺屋根の引き戸を入れば




中は茶室のような土間作りだ




思いがけず待たずに入れた田中は




奥の座敷に通され腰を下ろした




床の間を背に座ると




風情ある小さな箱庭を眺めることが出来る




田中のお気に入りの席だ




涼しくなりましたねぇ




お茶を運んできた店員の女性から声をかけられる




お酒になさいますか?




八海山を冷酒で二合お願いします




胡麻豆腐は今日はあります?




たぶんあったような〜?確認しますね




それと田舎蕎麦を1つ




お酒の後になさいますか?




いや、一緒でお願いします




いつも同じメニューを頼む田中




今日は朝から蕎麦霧で田舎蕎麦と決めていたのだ




運ばれてきたしっかりと冷えた八海山のお銚子を傾けながら




突き出しの塩昆布をつまむ




胡麻豆腐ありましたよ〜




これはありがたいね




ねっとりとした胡麻豆腐に




摺りたての山葵をつけて口に運ぶ




これと八海山の相性が抜群なんだよなぁ




ほっと息を吐き窓の外を眺める




路地裏の蕎麦屋には




街道の騒音は入ってこない




静寂の空間だ




胡麻豆腐が終わる頃合いで




田舎蕎麦が運ばれてくる




名物は更科蕎麦なのだろうが




田中は蕎麦の香りと食感の強い田舎蕎麦を好んでいる




若い頃は天麩羅も行けたんだけどなぁ




ここの天麩羅が絶品なのは知っているが




どうにも昼から天麩羅は重い年頃になってしまった




ネギと山葵をちょいと乗せて




蕎麦を手繰る




そして八海山を飲む




あ〜至福だなぁ




ここまで来た甲斐がある




車や自転車で来れば自宅からすぐの距離だが




こうして散歩をしながら来るのが楽しい




名残惜しそうに最後の蕎麦を食べ




熱い蕎麦湯で体を温めた




やっぱりここは名店だ




秋の高い空を眺めて




帰りは歩いて行こうと決めた

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