高崎LOVERS 15 白衣観音
久しぶりに観音様でも連れて行ってくれよ
杉山は田中の車に乗り込むなり言った
おお、懐かしいな
行ってみるか
田中は20年来乗っている白いビートルのアクセルを踏んだ
杉山は田中の大学時代からの友人だ
今は実家がある金沢で畑をいじったりしながら悠々自適の生活をしているらしい
思い出したころに新幹線に乗って学生時代を過ごした群馬へやってくる
あの頃は部活が終わった後によく行ったもんだよな
まぁ暇だったからなぁ
でも夜はまっくらで観音様なんて見えなかったけどな
それでも時間がつぶれれば良かったんだよな
明け方に牛丼食ったりしてな
いや~、もう絶対にできないよな
オレも無理無理
他愛のない会話をしながら車は和田橋を渡り
高崎高校の前を通過する
そう言えば池田とか元気にしてんのかなぁ
あいつ高崎高校じゃなかった?
都内に就職で出て行ったから全然連絡とってないよ
まぁみんなどこかで生きてんだろうなぁ
護国神社を右手に見ながら車は観音山を登っていく
おお、さすがにこの辺りまで来ると変わってないね
ラブホが古びているくらいだな
間違いない
ロートルのビートルには観音山の登りは少々荷が重い
アクセルを必死にふみつつ急カーブをいくつも過ぎ
やっと観音下の駐車場へとたどり着いた
良い眺めだなぁ
こうやってみると高崎も高いビルが増えたもんだ
未だに一番高いのは市庁舎だけどな
それはどこの地方都市も一緒だよ
観音様へと続くひなびた土産街をのぞきながら散歩する
やっているのかやっていないのか分からない店がほとんどだ
昔はもうちょっと活気があったよな
オレらと同じで店の人も年取るだろうよ
そりゃそうだな
数百メートルを歩いて慈眼院の山門をくぐれば
白衣観音様のおでましだ
おお、やっぱり近くで見ると迫力あるよな
高崎は観音様に見守られているからな
ありがたいお顔だなぁ
学生時代には観音様を拝むなんて事はしなかった二人も
今は深々とお辞儀をし祈りをささげる
お互いに年取ったもんだな
言うなよそれを
んじゃ精進落としと行きますか
お?まだまだ飲めんのか?
そっちの方はまだ行けるよ
どこかいい店あるか
そうだなぁ
街に降りて焼き鳥とモツ煮で一杯やるか
ありがたいね
ちょいと涼しくなってきたから熱いのをひっかけたいよ
同感同感
観音様に背を向けて歩き出した二人に真っ赤な紅葉が降り注ぐ
高崎の秋が終わっていく




