ガキじいさんとベイビーばあさん
『ガキじいさんとGABA<ギャバ>』
ここはあべこべ村。
一番北のほうに、けっこう大きい家がありまして、そこにガキじいさんとベイビーばあさんが仲良く暮らしています。
ガキじいさん「おーいばあさんや!朝のテキーラ乾杯やるから早くこっちに来てくれ~!」
ガキじいさんがグラスを片手に、ベランダで着物を干しているベイビーばあさんめがけて大声ダイヤモンドを投げかけます。
音波です。
ベイビーばあさん「は~い、よっ…!と」
ベイビーばあさんは棒高跳びの要領で物干し竿を起点にし、身体を跳躍させ瞬時にリビングへ着地します。
ベイビーばあさん「それじゃ、乾杯しましょうか」
ガキじいさん「ああ」
乾杯、とグラスをカチっと音が鳴るまで合わせて、ふたりは朝の空きっ腹にテキーラを流し込みます。
これが二人の我流健康法。
この健康法を毎朝50年続けています。
おかげで二人はとっても元気。野良犬を追いかけ墨田川を横断するのも余裕です。
ガキじいさん「なぁ、ベイビーばあさん…GABA<ギャバ>を知っておるか?」
ベイビーばあさん「ええ?宇宙刑事ですか?」
ガキじいさん「それはギャバン。ワシの言うのは、ギャバン。今、つかれたサラリーマンやOLの間で流行っとるらしい」
ベイビーばあさん「まぁ、それで…?」
ガキじいさん「ばあさん…ワシが浮気した時のこと、覚えとるか?」
ベイビーばあさん「ええ、覚えてますとも。驚きましたよ~…国からの依頼で動物園から脱走したコモドドランゴンを捕まえに行ったら、コモドドランゴンの話を聞いているうちににほっとけなく感じて、西麻布のホテルで朝まで…まさかおじいさんが人外と浮気するなんて本当に驚きましたよ」
ガキじいさん「本当にすまん、しかしワシは思ったんじゃ…あの日、ワシはGABAが足りておらなかったんじゃないか…?と」
ベイビーばあさんは目を丸くしました。
ベイビーばあさん「GABAが…足りなかった?」
ガキじいさん「ああ、結婚生活には3つのBAが必要不可欠なんだ」
ベイビーばあさん(袋では…?)
ガキじいさん「ひとつ目はGABA」
ベイビーばあさん「ふむふむ」
ガキじいさん「ふたつ目はBAあさん(ばあさん)になっても愛する持久力」
ベイビーばあさん「ふむ?(何を言っているんだ…?)」
ガキじいさん「みっつ目は……」
おじいさんが『結婚にひつような三つのBA』のうちの最後を言いかけようとしたその瞬間。
ポテトじい「うぉおおおおおおおおらああああああああああ!!!!」
パリーーーーン!!
窓を割り、ひとりのポテトが飛び込んできた。
ガキじいさん「こら!ポテトじいさん!ちゃんと玄関から入ってくれ!」
ベイビーばあさん「そうですよ、窓を割らないでくださいね」
ポテトじい「フハハハハッハハ!!わるものの俺が、そんな真面目なこと言われて聞く訳ないだろう!!!!」
ガキじいさん「いや、ポテトじいさんは言うほど悪者じゃない。実際この町で一番裕福なワシらにだけ迷惑をかけるが、捨て猫を保護したり子供にはやさしいだろ」
ポテトじい「言うなッ!!!!お前俺の姿みえてんのか!?ポテトだぞゴルア!!」
ベイビーばあさん「人を見た目で区別しちゃいけません!!!!!!」
ポテトじい「す、すいません…(怖い…)」
ベイビーばあさんに叱られ、しゅんとするこのポテト。
名前はポテトじい。
外見はじゃがいものマスコットキャラといった風体で、何の仕事をしているのか定かではない。
いつもこうして、事あるごとにガキじいさん達に突っかかってくるのだ。
ガキじいさん「これからワシとばあさんはラブラブいちゃいちゃタイムなんじゃから、気が済んだら出てってくれんか?」
ポテトじい「なんでだよ!!俺も一緒にあそばせてくれよ!」
ベイビーばあさん「ダメよ。”ラブラブいちゃいちゃ”は別に遊びの隠語じゃなくそのままの意味なんだから」
ポテトじい「ちぇ…わかったよ。今日のところは引き下がってやる!じゃあな!」
ポテトじいは悪態をつくと、なにかの小袋をガキじいさんたちに投げつけ、再び窓から走り去っていった。
ガキじいさん「む、なんじゃこれ?」
ガキじいさんが投げつけられた小袋を見ると、それはGABA配合のチョコレートだったのです。
ガキじいさん「ポテトじいさんのやつ、ワシらの話を聞いとったんか」
ベイビーばあさん「ウブなネンネですねえ、ふふ」
それから、ガキじいさんとベイビーばあさんは、朝の日課であるチベット体操と宇宙瞑想を終え、ハーブティーを飲みながら仲良くGABA配合チョコレートを食べました。
めでたしめでたし。
【今日の考察】
おじいさんが伝えたかった三つのBA
最後のひとつは何だったのか…。