第三十六話 第三訓練場
最後までお付き合いください!!
「チリ トモカズヘ ツウタツ ツウタツ
第二回戦 決闘ガ行ワレル 時間 ステージガ 決定
場所 第三訓練場
時間 6/19 12:00開始
決闘開始ノ15分前ニハ到着サレタシ サレタシ」
アウターアカデミーのだだっ広い食堂でたけちゃん、グレ、らくもんと昼食をとっていた僕の耳に通達が届く。機械的な音声は生体鋼外殻用インカムを通じて第二回戦の決闘について伝えた。
行ったことない訓練場での決闘だ。
「来たよ。」
「むぐっ?そうか、で何と言っていたのだ?」
「正午スタートの第三だって。僕が悪いんだろうけど行ったことのない訓練場だよ。」
「上から見たことあるのだ。修練場まで行く道のりで第三の上を通るだろう?」
「え?あれって訓練場だったの?……もぐもぐ。ただの緑がバウバウに生えてる森だと思ってたよ。」
「うん、森林地帯を想定した訓練場だね。たけちゃんは行ったことある?」
「一回だけあるな。
でもあんなところで決闘だなんて、木が生えすぎて立会人はジャッジどころじゃないだろうな。
視界が悪すぎてまさに実戦向けって感じの訓練場だよ。
足場は常に湿ってて最高に悪いし、木が邪魔くさくて攻撃に集中できやしねえ。
まさにジャングル、観客もあそこには入らないと思うぜ。」
「むしゃむしゃ……でもお前にとって利点もあるのだ、友和。」
彼女が箸を立てて説明を始めた。口には大盛りのかつ丼が詰まっている。
「まず、遠距離攻撃や上空からの攻撃は受けにくいってことなのだ。……もぐもぐ。
これだけは剣術の範囲外だ、どうしようもない要素が減るのはいいことなのだ。
さらに言えば、木伝いに潜伏し続ければ接近戦をこっちからも仕掛けられる。
視界が狭いからこそ接近できる、大きな利点なのだ。……ごっくん。」
「たしかに、意外と僕に合っているところなのか……?」
遠距離からの攻撃や上空からの強襲を受けないというのはものすごいアドバンテージだ。それだけが大きな大きな懸念材料だったといってもいい。
僕はめちゃくちゃに辛いカレーを食べながら、辛さによって冴える頭で戦闘の妄想をもう始めてしまっていた。木を伝って、地面を這って相手に奇襲を仕掛ける。これが基本的な戦法になるだろう。
だが行ってみなければわからない。
僕は頬膨らませ間抜け面になっている三人に提案をした。
「みんな、今日は第三に行くのに付き合ってくれない?」
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放課後、第三訓練場。
木々が生い茂り、そこら中に蔦やら奇怪な花が巻き付いている。訓練場全体がドーム状のビニールに覆われており、広大な温室のようになっている。この中央都市には生息しないような動植物が跋扈しており、第四訓練場とはまた違う、学校に似つかわしくない違和感がこの訓練場にはあった。
「確かに足元はおぼつかないのだ。これだけ湿気があると足も取られそうなのだ。」
師匠が、足踏みしながら地面のコンディションを確認している。
森の下に広がる地面はほとんどぬかるみのようになっていて歩くにも少しだけ力が必要になりそうだ。
踏ん張りがきかない、素早い移動ができない。この点は僕にとって不利に働きそうだ。
なにせ攻撃を避けて避けて一瞬をつくといった戦法、敵に近づくまで隠れ通せればいいが一回でも見つかってしまえばそこから戦闘が開始される。
あっち側は僕に一撃でも与えれれば致命傷を負わせられるが、僕の攻撃は一撃必殺ともいかない。
そして何より射程が短い、剣の間合いに入らないと攻撃が出来ない。
「ウーン。割とこの地面が一番の敵になるかもしれないですね。
木は隠れたり盾に使ったり色々利用価値があるかもしれませんが……」
「そうだな。近づくにも一苦労しそうだ。俺だったら風魔法で動体検知の真似事なんかできるし、敵の動きを感知が出来る相手だったらちょっときついかもな。」
「それがネックなのだ。相手が目視以外にも『目』を持っていたらきついのだ。」
「感知魔法ってそれなりのマナを使うんでしょ?お姉ちゃんが私の融合状態を感知したときなんか結構マナ量もギリギリだったとか言ってたよね?」
「ああ、あの時は本当にギリギリだった。感知魔法ってのは常時展開するものなのだ。気安く使うものではないな。しかも『採血と輸血』前の生体鋼外殻機動士が使うとなれば時間が過ぎれば過ぎるほどマナ欠乏に陥るのだ。」
「じゃあ、使う場面は限られると……ならばまだ勝機は……」
僕たちは珍しく作戦会議に耽る。相手がどうやってこちらを感知するか、発見するか。
深い森という環境下で発見する手段は限られてくるから、それなりの対抗手段も考えられる。
そこへ足音が、濡れた地面をぐちゃぐちゃと踏みしめる音が聞こえた。
我々四人が振り返るとそこには見覚えのある姿があった。
「あら、見覚えのある人たちだと思ったら決闘の時の人たちじゃないですか?
これはどうも。」
そこに現れたのはたけちゃんの第一回戦の対戦相手、ジルイ・ドーリだった。
体に巻き付かせるようにムカデを巻いている奇抜な格好をした彼女は僕たちと対峙すると、少しだけ見える口元を少し動かす。
笑っていた。
たけちゃんが僕たちの集団から一歩踏み出し彼女に話しかけた。
「お前何の用だ?」
凄くシンプルな言葉だが、その裏には当然、悔しさがこもっている。トーンの落とした静かな問いかけには彼女を拒否するような冷たさがあった。
彼女が首を振る。
「はぁ、何の用だって。別に通りかかっただけなのだからそんなに冷たくしなくてもいいじゃないですか?そんなに悔しかったですか?」
「ああ、それはな。あんな意味わからない方法で倒されたんだ。それはそれは悔しいよ。」
「あれは確かに。あなたには攻撃を見ることも予感することすらできなかったでしょうね。」
「で、一体全体どういう仕組みだったんだ?訳もなく負けることほど寝つきが悪くなるものはありゃしない。一回決闘した仲なんだ、教えてくれたっていいだろう?」
「ふふふ!あなたバカなんでしょう?」
「何と言ってくれたっていいさ。見栄よりなにより今日のベッドが気持ち良いか良くないか、そっちの方が重要なんだよ。」
「奇術師ってのはネタ晴らしをしてしまえばただの人間になってしまうんですよ。種を見破られるのはこっちの責任ですが、それをこっちから話すのはあまりにも正当な理由に欠けますよね?そういうことです。」
「まあそうだよな。負けたのは事実だ。それは確かだが、少しくらいヒントをくれれば客は熱烈な視線を向けるものじゃないか?」
「それはそれで用意してありますから。もう少し待っていただければもっと面白いショーをお見せできますよ。」
「そうかい。じゃあ楽しみにしているよ。」
物凄く淡々とした会話が終わるとジルイはすぐにその場を去った。たけちゃんがその後姿をじっと見つめている、再戦して勝利を手にする、そんな強い意思が語らずとも伝わるようなそんな背中だった。
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今後とも、『Exception for Equilibrium ~僕だけ<刀>って、何事ですか??~』をよろしくお願いします。




