第二十七話 爆砕なのだ!!!
最後までお付き合いください。
「では。戦闘開始!!!」
僕の合図とともに、既に展開を終えている二人が戦闘態勢に入る。
金髪ツンツン男。
彼は背中と足のインジェクターが赤く光を発し、その推進力を押しとどめるように溜めることで最速の一歩を踏み出そうとしている。アスファルトの地面が徐々にその熱によって赤みを帯び始める。白い煙を上げジュウジュウと音をたてている。手には溶岩を固めたようなオレンジ色の剣を持ち、その熱源からじとじととした熱が空間に発散され、自然と汗が流れてしまうほどに空気が熱くなっていた。
一方、師匠。
ロケット男は驚くであろう、彼を止めた壁を作っていた<ドーナツ型>はたったの二基、いま、彼女の周りに雷を発する浮遊体が6基。さらに彼からは見えないだろうが、雷のベールを直接纏うための<ドーナツ型>が背後に一基。空気が裂けるような雷鳴がそのあふれるエネルギーを抑えられないように音をたてる。さらに白い雷とは別の光がその両手に握られている。彼女の持つ双刀は艶やかさを増し、その刀身が見えないほどだ。
当然の反応が飛び出る。
「……同時制御?!一気に六基も……」
「ああ、お前の言った『矮小貧弱幼女』!!これでもその虚言を取り消す気にはならんのか!!!」
「てめえ!!そこまで言ってねえし!!」
「うるさいうるさい!!!その忌むべき口をきけないようにしてやる!!」
二つの刀を地面すれすれ、引きずるようにして師匠が走り出した。いつもの構え、というより怒っている時によく出る構えだ。肉食獣、まさに小さな白い虎が獲物を捕らえるために姿勢を極限まで低くして駆け出す。
交戦開始。
クロスした形の剣筋が開始早々、金髪を襲う。
彼は二本の速攻をかろうじて頭の上で受け止める。剣を両手で抑えるにはいささか熱すぎるからか彼はそれを受け流し、自身の攻撃へつなげた。胴を目がけた回転斬りだ。だが彼女がそれに目を向けることはない。<観劇>によって、積み重なった経験によって彼女の視界外から襲う橙の凶器はいとも簡単に躱された。
これを始まりに激しい剣戟が続いた。
斬って躱して。斬って躱して。
鍔迫り合いをして。実際に火花が飛び散る。
二人とも剣術に優れているのは火を見るより明らかだ。ロケット男は噴射器を活かしたスピードと威力をあてつけ、それを師匠がひらりひらりと優雅に戦場で踊り、まるで気にかけないように躱し続ける。隙を窺う余裕があるのだろう、その表情はピクリとも動かない。
だが、戦況は一進一退、攻勢を保てているロケット男が有利というべきか。珍しく師匠が押されているのか、僕にはこの戦闘の状況がよくわかっていなかった。師匠にしては珍しく何かをためらうような剣筋である。いつもより切れが悪いことは確かだろう。
剣戟が長く続き徐々に両者の息が上がってきた。当たり前だ、時間がギュッと凝縮したような密度の高い剣戟が3分間、ひと呼吸もおかずに続いていたのだ。その攻防は意味のないものにすら思えてくるほどに拮抗し戦いが続く。
もどかしい剣の交わりに辛抱たまらないのか、しびれを切らした師匠が初めて本格的な魔法行使に移った。彼からいったん距離を置くように後ろへ跳ね飛ぶと、お得意の雷撃を打つために構える。
「<雷法・エレクトロバースト>!!!!」
後ろに従わせていた<ドーナツ型>が魔法陣を展開しながら動き出す。<ドーナツ型>は剣戟の間、背中から延びる棒の周りを一定の速度で回り続けていた。攻撃には直接参加していなかった、剣を振るっている間は<ドーナツ型>を使うことができないのだろう。
だがその不毛にも見えた戦闘は終了、次のステージへ、本格的な魔術戦に移行した。
六柱の轟雷が彼に向かって疾走した。鼓膜を破るような爆音がひしめくビルに反響して窓ガラスを揺らす。彼の取れる手段は多くはないだろう。
そう、十八番である飛翔だ。この剣の応酬で十分暖め終わったエンジンを開放するように上空へ飛びあがる。剣戟に交えて使っていたブースト量とはわけが違った。一瞬のうちにインジェクターが点火したと思うと、その一秒後には電撃の網目を抜け出る。
間一髪といったところだ。雷撃の六本の爪痕が三車線道路のアスファルトを削り、<ドーナツ型>の発する攻撃の凶悪さが浮き彫りになっている。師匠は激昂状態、攻撃の加減など忘れて「黙らせる」ことにしか興味が向かなくなってしまったようだ。まるで容赦がない。だが、ロケット男はすでに上空100mは飛び上がっている。
この状況、圧倒的に師匠は不利だ。傍目でもわかる、師匠は攻撃手段を失い、ロケット男は100m上空からの位置エネルギーを攻撃に変換できるという大きなアドバンテージを得ていたのだ。
彼女を足元にとらえた彼は、にやける。
「ついてこれるか!!お前は空は飛べないんだろう?ここからどうする?手詰まりか?」
「ああ、飛べないのだ。だが、問題ない。直ぐにも叩き落としてやるのだ。」
「そういう割には突っ立ってるだけじゃねえか!!大口叩くのも大概にするんだな、おチビちゃんよぉ!!!!」
「おまえ!!許さないのだ!!許さないのだ!!!殺す殺す殺すぅ!!!!!」
「そろそろ子守も飽きてきたところだ。決着つけようぜ!!!!!」
急降下。
豆粒になったような彼は、彼女に向かってその剣を突き立てるように構えながら彼は突っ込む。切っ先には魔法陣が展開され隕石の落下のように彼の周りには燃え上がる火が巻き付いていた。インジェクターから発せられる赤く眩しい光がさらに大きくなる。周りのビルを削り取るように「隕石」が落下してきた。
彼が興奮の叫びをあげる。
「<火法・業火突>!!!!!」
超高速で「隕石」が迫る。迫る。迫る。
(激突する!!!!!)
僕はその衝撃に備え思わず目をつむった。
ベゴォオ!!!!
(……ん?)
違和感のある鈍い音に目を開ける。僕の目には予想とは反した映像が映る。
彼女に向い一直線に伸びた彼の体が「くの字」にきれいに折り曲がっていたのだ。先までの勢いは殺され彼の体に食い込むものがある。
「彼の体」だけに「激突」したのは鋼鉄の塊だ。彼の背後にあったビルの一部が崩れ、そこから雷の細い糸でつながれけん玉のようになった塊が彼を襲っていた。衝撃によって彼の纏う炎は霧散し、その体が暴かれている。
(師匠はこれを用意していたから、動きが鈍くなっていたのか!?剣戟やあれだけ大規模な魔術を使ってなお遠隔操作をしてビルの破壊をするなんて……)
今思えば彼女が剣術で彼と「互角」であることなぞ、疑う余地もなくありえない話であった。第三者としてこの戦いを見ていた僕でもこの用意周到で狡猾な戦術には気づいけていなかった。彼女の熱情にほだされているのは我々であって、戦闘において師匠は沈着そのものであったのだ。
彼の足元で高みの見物をする師匠が大声を出して笑い始めた。
「フハハ!!!ドーナツが一個減っていたことに気づかなかったか!あらかじめ使えそうなものは用意しておくものだ!!」
「まさか、あの戦闘の間、別の操作をし続けて……クッッッ!!!!」
「こんな応用も利くのだ!私が操れるのは何も電気だけではない、そこから発せられる磁力をも私の術式で操れるのだァあああああ!!!」
激情をあらわにする彼女が刀を持った手を振り上げ、もう一度地面に向かい思い切り振り下げる。すると、鋼鉄の糸の先、鉄くずの玉に<ドーナツ型>が一気に集まった。<ドーナツ型>から発する形ある稲妻によって作られた魔法陣がその球体を両断するようにいくつも展開する。
「そして、電流によって過剰な負荷を金属にかければ……」
魔法陣から発せられる増幅された電気によって鉄くずの玉が細かく振動を始め、そこからあふれ出るように突き出る雷撃の槍ががあたり一帯の地面を抉り、ビルを削り取り、おぞましい破壊が巻き起こる。彼はすでにその衝撃によって玉からは少し離れたところで宙に浮いてはいるが、その動きを制御できていない。ただただ飛ばされているといった感じだ。
彼女が怒りの宿る顔に微笑みを称えながら鉄球を見据える。
「金属は熱を持つ……」 「そして……」
銃を模したように人差し指を宙に浮く鉄球に向ける。
「密閉された空気が急激に熱せられれば……」
撃つ。
「ば~~ん!!!なのだ!!!」
轟!!!!!!!!
爆音が鳴り響く。
熱を持った鉄塊が四散し、あたりの窓ガラスが爆発の衝撃波によって一斉に破壊された。突き刺さるほどの速度を持った凶器が宙に浮いたままのロケット男を襲う。彼はなすすべもなくその礫の雨に身を打たれ、そのままビルの中へと激突していた。
「フハハハハハ!!!見たか友和!!!
名付けて<雷法・霹靂爆砕>!!なのだ!!!」
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