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Exception for Equilibrium ~僕だけ<刀>って、何事ですか??~  作者: 艸田見 寛
第三章 目くるめく変化する現在 [九十九闘技編]
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第二十四話 節介

最後までお付き合いください。


「なにかあったんですか?相手のやつ結構怒ってましたけど。」


「……まあ昔にいろいろあったんだ。自分でいうのもなんだけど嫉妬されているのかな?」


「そうっぽいね。でも負けちゃうなんてどうしたんですか?」


アリスさんが俯く。どうも話したくないといった様子だ。何となく察しはつく。普通に戦況が進んでいれば間違いなくアリスさんが勝っていたはずだ。どう考えても最後の最後でわざと負けたか、手を抜いたか。


「何か負い目があるんですか?深入りはしたくないですが、あんなもの見せられて首を突っ込まないほうが不自然というかなんというか……」


「友和、あまり言いたくなさそうなのだ。あまり詮索するのは趣味が悪い、我々はもう行くのだ。」


師匠が淡々という。ある種の人間から見れば冷たく映るかもしれないが、他人には言いたくないことなどたくさんあるものだ。秘密というほど大げさなものではなくても、自分に起きている少し不穏な状況をわざわざ人の耳に入れたいとは思わないだろう。僕の方が不躾だった、そう言わざるを得ない。


「ごめんなさいね、これはあたしの問題だから。でも心配しないで、大丈夫だから。」


そういうと彼女は背を向けて、そそくさと中庭を出ていってしまった。僕たちが声をかける間もなく彼女はこのばをにいるのを嫌がるように中庭から消えてしまう。僕は少し呆然としてしばらく彼女の背中を見ていたが、僕たちも中庭から出て、修練場にもどることになった。



道中、やはりその話が話題に上がる。


「あの人、てるっとぅーて感じで退散しちいましたね。何か思い詰めているような?ちょっと心配です。」


「なんだその退散の仕方?ずっと思ってましたが、姉弟子の擬音を生み出す聴力は何か細工でもされているんですか?」


「いいや、これが普通なのだ。いちいち気にしていたらその内お前の方からあの擬音に適応しだすのだ。お前までも脳内お花畑になったら困るからあまり気にするでないのだ。」


「なんです?私の話ですか?びょんびょんしちゃいますね!!!」


どうにも慣れることは出来なさそうだ。姉弟子とはあったばかりというか会って二日しかたっていないが、人柄は余裕で友達百人出来ちゃうぞ、って感じで親しみを持ちやすい。師匠とはどうも正反対な性格をしているらしい。だが仲良くなってみれば、というものでいちいち会話にツッコミを入れてしまってはこっちの身が持たない。


「まあアリス=イルバーンのことは、あちらの様子を汲み取ればあまり介入しないほうがいいのだ。二日前の事件のようにあまりに規模がでかくなってしまえば秘密なんて案外どうでもよくなってしまうが、ただの小さな個人同士の諍いなのだ。意外とこういう問題は日常に根付いているものだと相場が決まっているのだ。」


「そうですね。別に親しい仲というわけでもないですし……。深入りはよくないですね。」


「ええーー!!困っていたら助けるのが人情ってもんじゃないの!!助けてくださいっていうオーラをぴるんぴるんに感じましたよ!!相談ぐらい乗ってあげましょうよ!!!」


師匠と僕が目を合わせる。暴走するのが師匠の役目みたいになっていたが、やはり感情の起伏が激しいだけで、常識は持ちあわせている。叢雲さんの素直な提案にはどうにも承服しかねる部分がある、といったような様子でいつの間にか着いていた修練場の前で足が止まる。


だが、それは常識に基づいていたり理性的な判断である。感情に、あくまで人間としての感性に従えば姉弟子の提案はそれを素直になぞっている。


「じゃあ……アリスさんに悟られない様にいろいろ調べてみます?あの短気そうな彼ならべらべらしゃべってくれそうですし。なにかの糸口にはなるかもしれませんよ。」


「……まあ、私も多少は気になっていたのだ。ちょっと嗅ぎまわってみるのだ。」


「さすがお姉ちゃん!!!じゃあ早速行ってみようぜ!!」


音頭を取って勇猛果敢に来た道を返すのはもちろん姉弟子だった。よほど楽しいのだろうか、実際にルンルン言いながら先頭に立つ。はたから見ればおせっかいにもおだをあげる変な奴らになっているかもしれないが、しょうがない、もう決定事項になってしまったのだ。


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校内に設けるには、あまりにも大規模な市街が広がっている。四方2㎞で囲まれた場所に普通の家屋サイズの建物から、10階建てほどのビルが100は並び立つ。一本の大きな三車線道路がその中心を通り、そこから建物の間を縫うように数多の隘路が伸びている。そこかしこに爆破や衝突の跡が残り、地面にはガラスや破砕されたものが散らばっている。




第四訓練場。


市街地戦闘、おもに中央都市をはじめとした人口の多い都市における防衛戦を想定した訓練場である。今日はなぜか利用している生徒が点々としていたが、外部の人間、つまりアウターパイロット候補生以外にも共和国軍の実戦訓練などでこの訓練場は使用されているほどだ。



人のいない訓練場に一本の赤い光が走っている。


彼はビルの間を全速力で飛行していた。先ほどの決闘において手を抜かれていたことを確信していた彼はがむしゃらに背面のブースタの出力を上げる。生身の人間で耐えられるのかどうかといった速度を出し、顔の皮膚が波打ち、彼の特徴的なツンツンの髪も空気抵抗によって、しっかりと座っている。


彼の両側に壁が走る。頬を切るような風が強く当たっているが、そんなことはもうお構いなしだった。というのも、時間が早くなったようなこの世界で彼の頭は30分前に起きた出来事に占拠されていた。この状況において危険極まりない胸中ではあるが、彼のまっすぐな性分がそれから逃してくれない。



(クソッ、アリスのヤツ!!ヘタレのあいつがなんで竜種なんだ!アカデミーに入って生体鋼外殻アウター配布されてからというもの、事あるごとに俺を馬鹿にしやがって!!)



さらに速度が上がる。生体鋼外殻アウターは脳波を感知しそのオーナーの思考を読み取る機能がついているからか、彼の苛立ちに比例するように速さを増していく。コマンドを出している自覚がないままに速度が上がっていっているのだ。


彼の目の前に広がる光景は白と黒の絵具をごちゃまぜにしたかのように輪郭を失い、歪んでいる。だがそれすらも目に入らない、もはや彼の心は別のところにあった。



「前方、障害物確認。衝突回避のため自動運転に切り替えます。」


決闘のことで頭がいっぱいになっていた彼の耳に合成音声が届く。目の前を見ると、そり立った壁がもう20m先に迫っていた。彼の飛行速度はおよそ時速90㎞、衝突まで0.8秒といったところだ。


自動運転に変更された脚部の生体鋼外殻アウターが腹ばいの姿勢になって飛んでいた彼の姿勢の制御すると、両足が勝手に彼の前に出て、姿勢を地面と垂直に直される。小型のブースターが前方に向けて噴射されると彼の体が急減速、更に足裏の大型ブースターが全開で噴射、ビルの壁すれすれに時速90㎞垂直飛行をしていた。


「おわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!あばあばばあああばばあああばばばばあああああああああああああ!!!!!!!!」


もう彼の顔は原形をとどめていない。口を開けてしまったからにはその穴に大量の空気が入り込み、口の周りが真下から見たくらげのように波打ち、風に吹かれる洗濯物のごとく激しくはためき動く。この顔を写真にでも取られようものなら、墓場まで笑われ続けるゴキゲンオモシロな代物になっていただろう。




ビルの壁がようやく終わりを迎えると、彼は空中でホバー停止した。


「危険回避を確認。自動運転を切り替えます。」


「ああ、助かった。クソッ!!俺としたことが……」


彼は毛量の多い髪をくしゃくしゃにかき回して、邪念を払うにして頭をぶんぶんと降る。するとビルの頭上にとどまる彼の目に赤く染まる空が目に入る。丸くほの明るい夕日がさっきまでの胸のつかえを浄化してくれるように彼の全身を優しく温めていた。


彼は、しばらくぼうっとしていた。


ようやく訪れた心の平穏を味わうように、その温かさを全身で感じとる。


すると、彼の足元から大声で話しかけるものがいた。


「おい!!フォーゲル!!またあのとち狂った爆走タイムアタックでもやってたのか?!そのうちビルの人柱にでもなっちまうぞ!!!!」


「うるせえ!!!飛べないてめえには言われたくねえんだよ!!おい、ウルス!!てめえそこでおとなしく待ってやがれ!!」


ビルの上空にいたフォーゲルはまたもビルの壁に沿って急降下する。下にいたウルスはフォーゲルの形相を見た瞬間、装備していた生体鋼外殻アウターの脚部が点火し、地上を滑るようにホバー移動して逃げていった。



もう訓練場には人影がまるでない。寂れた市街が音もなく明かりを落とし、一日が終わる。



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九十九闘技まであと<3日>。






最後までお付き合いいただきありがとうございました!!



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指摘やダメ出しでも構いません!!というかむしろください!!



今後とも、『Exception for Equilibrium ~僕だけ<刀>って、何事ですか??~』をよろしくお願いします。

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