表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Exception for Equilibrium ~僕だけ<刀>って、何事ですか??~  作者: 艸田見 寛
第三章 目くるめく変化する現在 [九十九闘技編]
25/38

第二十三話 日常の中の決闘

最後までお付き合いください。

 


 アウターアカデミーの中央に位置する中庭。周りは背の高い校舎に囲まれ中央には噴水が設置されている。緑の少ない中央都市では珍しく、ごったな文化が入り混じった花の多い庭園だ。はっきり言って悪趣味な庭園ではあるが、生徒が集まる憩いの場的な場所になっている。昼飯を食べるもの、生体鋼外殻アウターに運動させるものなどなどだ。




 そんなアカデミー一番の安全地帯である中庭に諍いが起きていた。中庭へ轟さんに無理やり連れてこられた僕はその騒ぎの中心に目を向けた。




 一対一の決闘だ。


 学校内には決闘用の結界魔法を展開するためのアンプリファーが設置されている。一番決闘なんて起こらなそうな中庭でさえ設置されているということはそこら中にあるのだろう。薄赤い透明のプラネタリウムのような半球状の結界を通し、その中の様子を観戦できる。施設の破壊はそれだけで器物破損に、だが決闘自体は戦力向上のために必要、この結界用アンプリファーは折衷案といったところだろう。




 そんな中での、決闘だ。男女による激しい高速戦闘を繰り広げられている。


 一人は竜種の生体鋼外殻アウター竜機士ドラグナーの少女だ。単種の生体鋼外殻アウターでは実現できないような大きさ、鋼鉄でできたドラゴンの翼は広げれば3mほどの幅を持つ。その翼は骨格だけが鋼で構成されており、金色の光が肉の部分を表している。一つ羽ばたくだけで物凄い風が起き庭園の木々を揺らすほどの揚力だ。


 その竜の背中には少女が騎乗し、手には傘をたたんだような大きなランスを片手で握っている。凹凸のあるランスは凹の部分が羽と同じような光を持ち魔法による威力の強化が実現しているのか、まともに当たれば最後、体がちりぢりばらばら一直線になることは目に見えている。


 彼女はアリス=イルバーン。僕と同じクラスで、金髪碧眼、ポニーテールがトレードマークの気さくなお嬢様だ。僕は数回話しただけだけで彼女のことはよく知らないし、竜機士ドラグナーだってことは知っていたが騎乗できるほどの最終展開バージョンは見たことがなかった。


 決闘の内容は正直言って物凄い力押しという印象だ。だが力押しは力押しでも圧倒的であると、その威圧や威力によって相手を近づけさせていない。相手も当たったら防御術式がガラスのように砕け散り、最悪自身の骨までやられてしまうのではないかということは戦闘のうちでよくわかったのだろう。適切な距離を保ちつつ牽制をしている。




 そしてそのお相手。彼はおそらく鳥種の生体鋼外殻アウター、足と背部に装殻シェルが展開されるタイプだ。アリスさんみたいな完全な翼は構成できていないがこちらはジェット噴射のようにして空を飛んでいる。両足の背面、背中から大きな三門の噴射口、各部位に姿勢制御のための小さな噴射口が数門ある。アリスさんより速度が速く、コンパクトにまとまる生体鋼外殻アウターは小回りが利くタイプだ。彼女からの攻撃を三次元的な機敏な動きで避け続けている。そして手には刀身を火のマナで構成している剣を持っていた。ただ燃え広がる炎が剣になっているわけではなく、どろどろになった鋼をそのまま固めたようなオレンジ色の光を暗く発している両刃の剣だ。


 僕は彼のことは一度も見たことがなかった。だが、アリスさんとは顔見知りなのか、戦闘の最中二人は口論をしているように、その顔も、攻撃の挙動もなにか怒りを宿している。決闘という名目を使った喧嘩をしているようだ。二人の鍔迫り合いは激しさを増し、ランスと剣が当たるたびに、青白い火花がそこかしこに散っている。


 僕はあまりに次元の違う戦いを目にして唖然としてしまった。交差する赤と金の光はどうにか目視ができるというほどの速さで、修行前の僕だったら目でおえていたかすらわからない。そもそも僕は空を飛べないので、一撃離脱で空から強襲されれば対抗手段がない。



(こんな人たちと九十九闘技で当たったらなすすべもなく気絶まっしぐらだろうな……何か対抗策を考えないとな。)


 僕が口をあんぐりあけ、首をまげて頭上の激戦を見上げていると轟さんと僕の元に、師匠と姉弟子が騒ぎを耳にしたのか小走りでやって来た。


「おおお、やってるのだやってるのだ!!!」


「びょんびょん飛んでます!!でもお姉ちゃんにはかないませんね!!!」


「うーん、鳥の方はどうにかなるかもしれないが、竜の方はちょっと苦戦しそうなのだ。あのランスの仕組みがよくわからないのだ。」


「我が娘よ、謙遜は美徳だが行き過ぎると嫌味になってしまうぞ。<地を這う竜機士ドラグナー>の父を持つからには、はたき落して地上で戦えばいいじゃないか?」


「そうですよお姉ちゃん!!あとは、雷でギャッポーンとやっつけるだけだよ!!」


 僕がこの決闘を見てビビり散らかしている真横でそれまた次元の違う話が繰り広げられている。さっきまでこの二人に打って叩かれて生きている自分をほめてやりたいぐらいだ。そう、時雨師匠は言わずもがな、叢雲の姉弟子も師匠に稽古をつけてもらっていた<刀戯>習得者なのである。ただのシスコンの人だと思ってなめてかかった時には、再教育と同じぐらいの痛めつけが待っているのだ。




(ああ……怖い、師匠の生体鋼外殻アウター戦闘は陰からこっそり見てはいたが、ありゃ確かに次元が違った。さらに姉弟子も剣技に長けてる上に、昏睡状態とはいえ三年も生体鋼外殻アウターを常時身に付けていたんだ。生体鋼外殻アウターが再配布されたら神経接続のシンクロ率がめちゃくちゃなことになって師匠と同じまではいかないが物凄いパイロットになりそうだ……先行きに不安しかない。


 やっぱり覚醒しないでくれとお願いするべきか?生体鋼外殻アウターも交えた訓練となったらそれこそ本当に死んじゃうかも……)


 だがそれと同時に心強くもある。アリスさんの竜を見て余裕そうな顔ぶりをしていられるのはこのアカデミーで5人もいないだろう。ついていけば強くなれる、そう確信させてくれるような自信を師匠たちは見せている。まあ、それに伴って厳しい修業があるのも事実だが。




「おお、決着がついたみたいだぞ!!」


 僕がいろいろと不安材料を蓄積していると、轟さんが大声を上げた。決闘が終わったみたいだ。さっきまで目をくぎ付けにしていたが、師匠と姉弟子が来てからというもの、あまり良く見れていなかった。赤い結界術式が解け、普通の平穏な中庭の風景に戻った。


「なに?鳥の方が勝ったのだ!?本当か!?」


 師匠が驚きを隠せないでいる。勝ったのは男の方であった。決闘が終わったと同時に、やじ馬がばらけていったので、僕たちはアリスさんの元へ走り寄る。僕の方は女子寮潜入ミッションを手伝ってくれたこともあり少し恩義を感じていた。そんなアリスさんの身に何があったのかと心配になったからだ。


「アリスさ……ん?」


 僕の呼びかけは届かない。


「てめえ!!なんで竜種の癖に俺に負けていやがるんだ!!


 そもそもなんでお前は竜種で俺は鳥種なんだ!!俺の方が剣技は優れているし、体だって強い!!


 家柄だって俺はお前に劣っちゃいない!!


 なのになんで!!!!」


「……………………‥」




 勝ったはずの男がなぜかアリスさんの方へ向け怒りをぶつけている。物凄い形相だ。高身長で細身、よく引き締まった腕や足は剣技に対して真摯だったことが伝わる。だがその反面、耳には赤い羽根のついたピアスを下げ、髪はアリスさんと同じようなきれいな金髪をツンツンにしていた。大真面目に怒っている表情は伝わるが、その見た目は「チャラ男」といったのが僕の総評だ。言ってることと装飾品のギャップが激しすぎて脳が追い付かない。


「本気を出すまでもないってか!?てめえいつまで俺を虚仮コケにすれば気が済むんだぁ!!!!」


「‥‥‥‥‥‥‥」


 彼が尻もちをついたままの生体鋼外殻アウターをすでに解いているアリスさんに対し、剣を振り上げた。


(まずい!!!!)


 体が勝手に動く。



 キィン!!!!!




「……なんだてめえら?」


「何があったか知りませんけど、決闘はすでに終わってるんですよ。」


「そうなのだ、剣を下すのだ。」


 僕が生体鋼外殻アウターで剣を受け止め、師匠が首元へと刃を突き立てていた。僕は彼の鋭い視線に屈しないように、しっかりと目を見つめる。ここで逸らしたら「負け」だと、自然とそういう変な意地が沸き上がってきたからだ。


 少しの間、にらみ合いという無言の時間が続いた。


「チッ!!」


 彼は舌打ちをすると、そのまま引き下がる意思を見せ、何も言わないまま大股を広げて帰る。彼の行動はもう少し進んでいれば停学か退学ものだろうが、何か特別な理由があるかのような、強いものを僕は感じていた。そう、ただ単にアリスさんを痛めつけようとかそういうのは関係なしに、何か事情があるような気がしたのだ。



 だがそんなことは関係ない。今はアリスさんが心配だった。




「大丈夫ですか?アリスさん?」


「…ええ、ありがとう。」


 彼の罵倒を受けてもなお何も反論しなかったアリスさんは、ひどく憔悴しているような、何か追い詰められているような今まで見たことないひどい顔をしていた。さっきの彼を怒らせるに足る何かがあったのだなと予感できるほどの表情だった。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!!



気に入っていただいた方は、感想や☆をいただけると、とてもうれしいです。

続きが気になるという方!!ブックマークに登録していただけると、とてもうれしいです。

これからの執筆活動の一助にさせていただきます。


指摘やダメ出しでも構いません!!というかむしろください!!



今後とも、『Exception for Equilibrium ~僕だけ<刀>って、何事ですか??~』をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ