第二十二話 クトネシリカ
最後までお付き合いください。
「……クトネシリカ?」
僕はそんな霊獣の名前は知らなかった。前時代文明機からの知識の授与は日々行われている。そして霊獣の存在は広まり、アウターに宿っている霊獣の名もどんどんと判明されている。だがそんな名はいまだ聞いたことはなかった。
「ああ、そうだ。アイヌに伝わる宝剣だ。知里君も歴史的に関係があるのかもしれないね。でも名前がわかったところでどうしようというわけでもない。四つの霊魂というのは例外も例外だ。対処しようがない。ラプラスに尋ねてみてもいいが、そこで教えてくれるんだったら今頃覚醒しているだろう。」
「確かにそうですね。アウターの元になった霊獣がわかっただけでもありがたいです。実際に四つも霊魂があれば僕に扱えるはずもありませんが。」
四つの霊魂?刀剣に宿る霊獣?あまりにイレギュラーで受け止められてはいなかったが、それがわかっただけで進展だとも思う。ただ僕は「覚醒」してくれればいい、とも思っていた。修行によって最低限アウターを扱えるだけになっているとは自覚はしている。まるで、刑務所の中で筋トレをしている気分だ。
「まあそういうことだ。今日はここまで。もちろんわかったことがあれば随時報告はする。」
「……なぜ僕のためにわざわざここまで?」
「まあ、これはアウターアカデミーで君の安全を守る問題だけではなくなったのでな。いろいろ共和国でいざこざが起こっている。それに君が巻き込まれかねないからな。」
「はあ。そんなこともあるんでしょうか。」
まただ、と思った。国家だとかそういう大きな問題は正直もううんざりだった。僕は強くなりたくてここに入学したのは確かだが、別に共和国の中で諍いをしたいわけではない。ただ、人間を襲うような魔獣を討伐する。それが僕の目的だった。
「まだ君は気にしなくてもいい。じゃあ今日はこの辺でいいかな?知里君?」
「はい。ありがとうございました。」
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轟さんと理事長室を出る。轟さんもこの学校に何か用事があって、まあ特に娘の事だろうが、ここに来ていたらしく、僕のところに顔を出したのは単なる気まぐれだったようだ。
今回の事件ばかりは轟さんも予想の範囲外だったらしく、あの男の動機がよくわからないといっていた。確かに三年で研究理論がまとまったからとは言っていたが、堅牢なセキュリティーの穴を抜け出して時雨さんを誘拐するそこまでの理由でもあったのだろうか?
だが轟さん目下の問題はまたも娘が増えたことだろう。一度「なんでもしてやる」といった手前引き下がれなくなってしまい、叢雲さんの圧力に負けて決定したのか?養子とはいってもあんな簡単に娘にしてしまうのだからなかなかに興味深い。
僕は理事長室から出てすぐの、一面ガラス張りになった渡り廊下の途中で聞いてみる。
「轟さんはその……何人お子さんがいるんですか?」
「なんかいろいろ勘違いしていないか、友和?俺は別に便利な『父親』なわけではないぞ!!
二人だけだ、時雨と叢雲。昔、霖さんにはお世話になったからな、勝手に俺がその恩義を返してるってだけだ。」
「ああ、あの孤児院の経営をされていた?」
「そうだ、あの方は戦時中に足を悪くしてな、退役の後立派な慈善活動をされていた、ということだ。で、お亡くなりになられたという風のうわさを聞きつけてやってくれば、あの惨劇が目の前にってわけだ。」
「なるほど。なんかすんません。」
「いやいいんだ。」
「今日は、叢雲さんのことでいらっしゃったのですよね?」
「ああ、曲がりなりにもアウターアカデミーに入学するんだ。アウターがないとやっていけないということで、プーカを死亡扱いして、新たなアウターを配布するように申請してきた。
……ってあんなところで決闘やってるじゃねえか!!若いねぇ!!!」
「ん?」
僕は渡り廊下のガラス越しに目を凝らす。決闘をしている二人はどちらも飛んでいた。一人は竜種、一人は鳥種らしい。こういう血気盛んなハプニングが好きなのだろうか、轟さんは少し興奮気味だ。
「九十九闘技が近いからか?それも学生にしては結構ハイレベルな攻防してるじゃねえか。おい!お前も時雨からエクスブラッド取るよう言われてるんだろう?
敵情視察に行くぞ!!」
すると、彼は問答無用、有無を言わさずといった風に僕の手首を取って渡り廊下を思い切り走りだした。廊下は走ってはいけないという共通認識をきれいに反故にしている。僕の視界は轟さんの速度が速すぎてバレットの上をぶっとい筆で極彩色一撫でしたような光景が広がっている。
「え?ええええええ!!!!!!」
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今後とも、『Exception for Equilibrium ~僕だけ<刀>って、何事ですか??~』をよろしくお願いします。




