第二十一話 霊剣
最後までお付き合いください。
こんにちは!!知里友和です!!
今日は九十九闘技の3日前、つまりあの盛大な誘拐事件から二日後です。
みんながみんな「採血と輸血」の権利を得ようと、各々思うが儘の訓練しています。
ある人は訓練場に新設された仮想世界訓練施設でVR上に表示される敵に向かって攻撃したり。ある人は動かない的に魔法をとりあえず打ち込んだり。ある人は新たな術式の組み込みに執心し、アウターに無理な魔法を覚えさせようとしたり。ある人は決闘で肉弾戦に興じたり。
そんな風に学内がピリピリとした雰囲気に包まれている中、僕は二人の女の子に「可愛がり」を受けています。
膝枕されて耳かきしてもらったり、両手に花状態でどこかの貴族みたいに絢爛豪華なウィンドウショッピングをして町中を闊歩したり、横腹ツンツンやめてよぉ~ええーいいじゃんかー的な乳繰り合いをしたり、キャッキャウフフなキラキラ世界を想像していたなら、ごめんなさいね。
そうです。「可愛がり」です。
「おらああああああ!バカ弟子いい!!!お前のせいでえええ!!クラスのみんなからああああ!!!変な目で!!!!!!見られた!!!!!のだあああああああああああ!!!!!!
いい感じで事件解決ですねって雰囲気出して!!!!!!巧妙に隠していたから!!!!!!忘れてたけどおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!
思い出したらむかつくのだああああああああ!!!!!
再教育なのだああああああああ!!!!!!!」
こちら、「再教育<のだのだ>の修羅」こと、我が師匠、須佐時雨様である。
黒とグレーの混じる髪が特徴的だ。そして何より背が小さい(小声)。
二日前にいい雰囲気で師弟の契りを再度結びなおしたのに、修練場に着いた途端に思い出し笑いならぬ思い出し怒りの最中だ。品性のかけらもない怒り方だが、剣筋だけは優雅で雅で見とれてしまいそうになる。しかし、見とれていたら確実に頭を捉えられ三分の一の確率で頭蓋にひびが入るだろう。
一触即発の巨大爆弾にきれいなデコレーションしたみたいな人だ。
「ええええええええい!!!!
やっぱり知里君がお姉ちゃんの弟子なんて認めないいいいいい!!!!!!!
お姉ちゃんは私のものなんだからあああ!!!!
もきゅもきゅにひねり潰しちゃうぞおおおおおおおおおおおお!!!!!」
こちら「その擬音おかしくね?シスコンの鬼」こと、我が姉弟子、別府叢雲様である。
日本の血統にもかかわらずゴールドブラウンの髪をもち、すっきりしたショートカットにしている。
二日前、霊魂を取り除かれ縛られていた自我を取り戻した。意識の状態としては、外の状況を見聞きできる植物状態に近かったらしく、体の活動はプーカを通してしていたからか多少の記憶齟齬があるだけで健康状態だ。というか元気すぎるぐらい元気だ。須佐大佐に「いままで自由を奪われていたから、出来ることなら何でもしてやる」と言われ、「お姉ちゃんの妹になってお姉ちゃんの同級生になる!!」といったそうで、正確に言えば現在は須佐叢雨、さらに言えばアウターアカデミーの同級生、となったわけだ。年齢はなんと師匠と同じらしいから問題はない。
てか、だったらなんでお姉ちゃん???という疑問はさておいておこう。
お姉ちゃんを資源に爆発しそうなほどビリビリ発電している、姉力発電所っていったところだ。
そんなお二方。俗にいう「師弟ハラスメント」の最中である。
女の子相手に情けない??それは男女平等主義の視点から断固取り消しを要求します。
「危ない!!危ない!!!!危ない!!!もうやめてえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」
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「知里友和。知里友和。至急理事長室まで来なさい。至急理事長室まで来なさい。」
二人からのリンチを一身に受けていた僕に、修練場の古びたスピーカーから救いの放送が聞こえた。物凄い形相で僕をぶっ叩いていた二人にも何とかその放送は届いたみたいで、二人の持つ木刀がその場で止まった。僕は何とか<観劇>のおかげで二人の攻撃から致命的な一撃は受けていなかったので、すぐさま体勢の崩れた体を起こした。
さっきのことがなかったことのように師匠がきょとんとした様子で僕に尋ねる。
「友和、何かしたのだ?」
「…はぁ、はぁ。いいや、まるで覚えがないな。事件の事かな?」
「そしたら私たちも呼ばれていないとおかしいんじゃない?」
「そうだよな、とりあえず行ってみる。」
僕は修練場を後にして、着替えを済ませてから理事長室に向かった。
(事件で僕だけは呼ばないよなあ、もしかしてアウターのことで何か進展があったのかな?)
理事長室。
扉を開け敬礼を済ませると、そこにはゴルゴーン理事長と轟大佐がいた。夕日を背後から受けている二人の影はさすがの威圧感で、何も悪いことしていないのになぜか謝ってしまいたくなるほどパンチのある光景だった。僕は指先まで全神経を研ぎ澄まし、背筋を伸ばして足をきっちり閉じ二人が話をするのを待った。
おなじみの社長椅子がこちらへ回転する。
「おお!来たか来たか。どうだ?修行の方は?」
「はい、今日は叢雲さんも参加されていてとっても充実した修行になっています。理事長のご厚意で僕も大分力をつけてきたと実感できています。」
「そうか!それはよかった。なあ轟?」
「はい。何よりです。
娘がまた増えたからな。友和、改めて礼を言う、これからもよろしく頼むぞ。二人とも不安定な部分があるかもしれない。お前が修行を受ける代わりと言っては何だが、この前みたいにしっかりかまってやってくれ。」
「いえ、こちらこそお世話になっております。……あのことは理事長もご存じなのでしょうか?」
僕は轟さんからあのことについての言及があったので、恐る恐る聞いてみる。物凄い勇気がいることではあったが、理事長が知らないはずがないと思っていたので確認のつもりだ。
「ああ、もちろんだ。それについてはこやつが迅速に対処してくれたおかげでもう解決に向かっている。アンドレアスの処分、プーカの投獄などなど、ね。だから今後は安心してくれていい。」
「そうでしたか。ならよかったです。」
「今日はその話ではなくてな、お前の生体鋼外殻についてだ。一か月前にも話したがアウターが覚醒しない原因は不明、そう言ったな?」
「はい。」
「だが、こちらの方でも調べていてな。その一端がわかったかもしれない。」
「本当ですか!?」
「ああ、だが解決法が見つかったわけではないからあまり期待するな。降霊術によって霊魂がアウターの意思になり、その霊魂に呼応するように生体鋼外殻の肉体が決定づけられる。それはいいな?そこで霊獣の元になる伝承をいろいろ調べてみた。
前時代文明機9号機が所蔵される国立図書館だ。お前も知っているとは思うが9号機から提示された前時代の歴史を編纂し書籍化している機関だ。そこで調べた結果、お前のアウターの元になった霊獣がわかった。」
「ラプラスの『教育』にも偏りがあってな。地方の伝承などはあまり詳しく書かれていないことが多い。だが見つかった。大分マイナーな伝承でな。日本それも、アイヌという民族の神話だ。そこで描かれた少年が手に取る剣、『クトネシリカ』、これではないのか。という結論に至った。」
「……『クトネシリカ』?」
「ああ、そうだ。伝説の霊剣『クトネシリカ』。
そしてここが肝要だ。
この伝承に則ればお前のアウターには<四つの霊魂>が宿っている。」
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今後とも、『Exception for Equilibrium ~僕だけ<刀>って、何事ですか??~』をよろしくお願いします。




