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景色の中の居場所

塔の中はひどく明るく、白い輝きに目を閉じたくなるほどだった。人混みはなく、何人かの人たちが展望台へのチケットを買う列に並んでいた。 私もその列に並んだ。思ったよりも並んでいる人数は多いようだった。チケットを買った人たちが、列の後方にあるエレベーターホールへと進んでいく。


もやもや・・・

きらきら・・・

きらきら・・・


すれ違う人たちが、黒い影か、明るい影に見えた。 きっと、照明のせいだろう。 私の番がやってきた。受付の人まではっきり見えない。


もやもや・・・


黒いもやもやが私にチケットを渡してくれた。そのチケットは、とてもきらきらしていた。 隣の受付の人はきらきらしている。チケットを買っているのは、小さなキャリーバックを持った旅行客のようだ。


どうしてこんなところまでキャリーバックをーーーー


彼らはとてもきらきらしていた。顔すら見えない。ただ、輝きがそこにあった。 私はエレベーターホールに向かった。


すれ違う列に並ぶ人たちは、どうなんだろう・・・ 私は彼らを見ることをためらった。ただ、振り返ると、私にチケットを渡した受付の人は、今はきらきらしていた。チケットを買っているのはカップルだろうか、、、きらきらともやもやが渦を巻いている様に見えた。


エレベーターホールに行列はなく、すんなりとエレベーターにのり、展望台へと上がっていった。 エレベーターは途中から外の景色が見えるようになっていた。 オレンジ色の塔の柱のむこうに、私の街が見えた。 ここまでくるときの電車でみた世界はとても暗く、ところどころに光があったが、今ここから見える世界は、まだ塔のオレンジ色に照らされたオレンジの世界だった。 高度が上がっていって、徐々に見える世界は広くなっても、ひたすらにオレンジの世界が私の目に飛び込んできた。


何もかもが本来の色の上にオレンジの灯りがかぶさって見えた。 私は思わず息を飲んだその時に、これが私の求めていたものなんだと、心が弾むのを感じた。 次第に外の景色は見えなくなり、エレベーターは展望台についた。 エレベーターには、何人かの人が乗っていたはずだった。でも、そのときは、私一人だけの様に感じた。


展望台につくと、そこはまっくらで、壁一面がガラスで外の世界とつながっている様に感じられた。 窓の方に向かうと、そこにはあの時見た「暗闇」と「輝き」が広がっていた。


オレンジの世界はどこにいってしまったのだろうーーーー


ところどころに連なるオレンジの小さな光は、さっきみたあの世界の色と似ていたが、その薄明るい光はどこかぼんやりとした遠くへとつながっていて、私がそこに帰るのだろうと言っている様だった。 気がつくとあたりには、どこにいたのだろうと思うほどに多くの人がいた。 じゃまにならない様に、一通りの景色を眺めると、ただまたエレベーターの方に戻っていった。 下りのエレベーターには多くの人がいた。 外の景色は十分に見れなかったが、あまり見たいとも思わなかった。 エレベーターが地上につくと、みんな堰を切った様に出口へと向かっていった。 出口に向かう途中にふとチケット売り場を探して目をやったが、どこにあるのか見つけることができず、見えてきたのは「暗闇」と「輝き」ばかりだった。


出口から外にでるとそこはとても薄明るく、人々は、あのときのオレンジ色の街灯に照らされどこかへと消えていった。 私はどこへ行こうか迷った。 すると、チケット売り場で出会ったキャリーバックを持った観光客たちも出てきた。彼らは未だにきらきらしたまま、あっという間に私には見えなくなった。 私は、来た道を辿って、駅にもどることにした。

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