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エピローグ

 迷宮があれば人が集まる。人が集まれば町ができる。

 オルムはそんな迷宮の町の一つだ。

 現在では、伝説の迷宮を一目見ようと大勢の人が訪れる、観光都市としてその名が知られている。


 オルムの探検家で〈大鐘乳窟のヌシ〉こと〈白髪のダリオン〉の名を知らない者はいない。

 かつてこの町に実在したといわれる探検家で、非常に腕の立つ男だったという。

 オルムの迷宮を知り尽くしており、灯りを持たずに迷宮の最深部――といっても当時のだが――までたどり着くことができたという逸話が伝わっている。

 彼は多くの弟子を抱え、そのうちの幾人かは偉大な発見とともに歴史に名を残した。

 そんな男が、ある時迷宮から帰らなかった。誰もがその死を訝しみ、やがて噂が流れた。

 曰く、秘密の抜け穴を見つけた、莫大な財宝を隠した、古代の神域へ至り不死の力を授けられた、呪いを受け今も迷宮を彷徨っている、etc...

 〈白髪のダリオン〉に関する伝説は多く、枚挙にいとまがない。

 確実に分かっているのは、ダリオンという冒険者がかつて存在し、迷宮のどこかで命を落としたということだけだ。


 街灯が闇を払い、飛行機が空を駆け、多くの迷宮が踏破され、古代人の魔法にすら科学のメスが入りつつあるこの現代においてなお、いまだにその全容が明かされていない〈オルムの大迷宮〉は、まさに「最後の神秘」として多くの探検家達を惹きつけ続けている。

 〈ダリオンの財宝〉はその最後の神秘の最もたるものだ。一攫千金に賭ける冒険者が、学究の徒たる探検家にとって代わられてもなお、いや、だからこそ、その謎を解き明かさんとする人々のロマンを掻き立てる。

 昨年、オルム大学による第十二次探検隊によって〈大鐘乳窟〉の最深部に巨大な滝が発見されたニュースは記憶に新しい。強力な探照灯をもってしても底が見通せない縦穴に轟々と水が流れ込むその大滝は、迷宮深部まで貫通している可能性が指摘されている。今回は下降装備の不足により縦穴の探索は見送られたが、次回探索時の重要探索目標の一つに指定された。

 注目すべきは、その穴の縁に古い形式のアンカーが撃ち込まれていた点だ。形状からへリオール朝期――大よそ400年前――のものと考えられている。これは〈白髪のダリオン〉らの活動時期と一致する。

 もしこの滝が〈地底都市〉まで通じていることが確認されれば、彼に関する伝説の一つ〈ダリオンの抜け道〉の実在の証明につながる可能性がある。


 伝説の解明に多くの人が期待を寄せるとともに、また一つ謎が失われることに一抹の寂しさを覚える声があることもまた事実だ。

 謎は謎のまま、そっとしておいても良いのではないか?

 事実を知るより、想像を膨らませる方が楽しいじゃないか、と彼らは言う。

 そうかもしれない。

 しかし、人々は謎に挑み続けるだろう。好奇心こそ、人を人たらしめてきた根源であるからだ。

 ダリオンもまた、そうして迷宮の謎に挑んだ一人に違いない。

 その意思は、現代の探検家たちにも受け継がれているのだ。


 もし、〈オルムの大迷宮〉に挑むのであれば、まずはオルムの町の〈銀の馬亭〉を訪れるとよい。

 町で最も古い、伝統あるその酒場の壁には、〈ダリオンの剣〉が今でも誇らしげに掲げられているはずだ。


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