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E.G.G.  作者: 針山筵
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1. 入学

俺を15歳で中学を卒業するまで一人で育ててくれた叔父がなくなった。

そして今日四月一日、俺は16歳になり、高校生最初の一日を迎える。

反ケ滝高校(そるがたきこうこう)一年生として。


「……ここが、そうなのか。なんだ、普通の学校じゃないか」


叔父はなくなる前ーーもうそれも二ヶ月前のことだがーーに中学を卒業したら、この学校に通うようにと言っていた。


学力から考えれば、あと三つくらいは上のランクの学校に行くこともできた。

しかし、大恩ある叔父の遺言だ。

こういうときは素直に従っておくべきだろう。

俺は出願変更申請の最終日に反ケ滝高校に志望校を変えた。

担当教諭は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたが、それで俺の最終志望校が変わることはなかった。

そして俺は反ヶ滝高校を受験し、無事合格した。


そして、今日、初めて(・・・)この学校にやってきた。

それがまた、非常に奇妙なことで、俺はこの学校を受験し、掲示板で合格の確認もしたというのに、そのとき俺は学校にはきていなかった。


では、俺はどこでこの学校の合格を確認したのだろう?

確かに反ケ滝高校から合格通知は郵便で送られて来た。

だから、もしかしたら掲示板で自分の受験番号を探したと思ったのは思い違いだったのかもしれない。


ではいつどこで俺は反ケ滝高校の入学試験を受けたのだろう?

それがわからない。


受験しなければ合格もへったくれもない。

だが俺にはちゃんと反ケ滝高校の入学試験を受けた記憶がある。

全くいつのことだったかもわからないのだが、奇妙なことにそれは去年の秋口ごろだった気がするのだ。

そして、そのとき、俺はワンルームマンションのようなところで監督教官と一対一で試験に挑んでいた。

今ではそれがどこだったかわからないし、そのときの教官の顔も声も全く思い出すことができない。


普通ならこんな状況に陥ってしまえばものすごい気持ちが悪くなるだろう。

だが、あの叔父がわざわざ推してきた学校だからそういうこともあるのかもしれないと思っていた。


あの叔父ならそれくらいのことは平然とやってのけるだろう。

しかし、それにしてもどうしたことだろう。

本当にただの公立高校とは。


俺はそうあれかしと思っていたわけではないが、明らかに見ただけでもわかるくらいに奇妙な学校なのだろうと思っていたのだ。

何せ、今日、この日までに何度この学校を見に来ようとしても、一度もたどり着けなかったのだから。


いまどきスマートフォンで道を調べながら進めば、迷うことなどまずない。

しかし、昨日までの俺はどうやってもこの学校にたどり着けなかった。

そもそも、昨日まではスマートフォンでどれだけ検索しても地図の中にこの学校を見つけることはできなかった。

それが今日の朝、目を覚まして、電車に乗って、人の波に流されて来てみればあっさりと着いてしまった。


そして、ついてみればただの学校。

当たり前のことなのだが、それが今までうまくいかなかったものがすんなりと通るとなるとそれが当たり前ではないように感じてしまう。


「だいたい、外見は普通でも中が異常、つまり生徒や教師が普通じゃないってことは十分にあり得るもんな」


とはいえ、ここまで来てしまったのだから入ってみるしかあるまい。

いや、俺はこれから3年間、ここに通うのだ。

つまりは……。

俺の、桂城かつらぎとりでの青春が今から始まるということだ。

おそらくは他の人とは全く異なる青春が、今、始まるのだ。


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