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君とオリンピックに行きたい  作者: 友清 井吹
79/137

日本人一位

40km地点を通過した。


後2キロ。

交差点を曲がって南下する。

最後のがんばり所だ。

皇子山競技場が見えてきた。


苦し紛れに口を大きく開く。

手と足が勝手に動いているような気がする。


もう一度だけスパートできるか?

できなくてもやってやる。


太ももが痙攣してきた。

ずきずきするこの痛みは初めてだ。

我慢できるか?


くそ、この足。

握りこぶしでまた何度も叩いた。


ストライドを大きくしよう。

手の振りを大きくした。

もうバラバラな走りだ。


競技場の手前、大きくカーブしたところで一人抜いた。

これで日本人一位だ。


競技場に入った途端、大歓声が聞こえてきた。

まだ前に三人いる。

全部アフリカ勢だ。


一人だけでも抜こう。

抜きたい。

3人が一列になってゴールを目指している。

抜きたい。

絶対抜く。


最後の直線コースは全力疾走。

先頭2人はゴール間近。


3位のあいつにだけ追いつきたい。

残り20m。


彼とほぼ同時にフィニッシュ。

何位だ。

3位か4位か?


首に掛けられた札を見た。

3位か。


これで精一杯だったのか?

2時間8分2秒で、日本人一位。

前のアフリカ人選手は2人とも7分台だ。


テレビカメラが近寄って来た。

「おめでとうございます。本日の最年少ランナー倉本選手です。堂々の日本人トップ。3位入賞です。今のご感想は?」 


競技場全体に声が響いている。

何か言わなくては。

本音でいいのかな?


「あと二人、追いつけなかったのが残念です」

「これでオリンピックに王手をかけました」

「みんなのおかげです。大学の仲間や監督やコーチとか」


コーチなんて、言わなくてもいいことを口走ってしまった。

質問は続いたが、ハイとか、うれしいですとしか答えなかった。

アイシングとマッサージをすぐしたい。

できればしてほしい。


来てくれた陸上部の仲間は20人もいて、一人ひとりと握手をした。

みんな喜んでくれているが、まだ実感がわかない。

一番喜びを分かち合いたい由佳はいない。


吉泉監督には深く頭を下げた。

「ロンドン行きの正式決定はまだだが、このタイムなら3人のうちには入れるだろう。しかし大変なのはこれからだぞ」


何が大変なのだろうか。

表彰式の後もインタビュー。

勝因は監督さんの指導と部員の支援ということを繰り返した。


人前でうれしそうに話すのは苦手だ。




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