由佳は障害者?
久しぶりに、学食で東田との昼食会。
最近学食へ行くことが減った。
理由は、スーパーで買った安売り弁当を持っているのを見て、伯母さんが、三食とも用意すると言ってくれたのだ。昼食に弁当を作ってくれることもあり、夕食は住職夫妻と一緒に食べることになった。
「余分にお金はいらないからね。そうね、条件はお寺の仕事以外に由佳ちゃんの勉強を見てあげる事。それに夕食の時、お父さんの話につき合ってもらう事かな。結構大変よ」
伯母さんはそう言って笑った。
夕食時、仏教や禅について造詣の深い伯父さんと話すのは楽しかった。
時には、経や仏具を持って来て説明してくれることもあった。
食事中の話は長引き、いつも1時間以上かかった。
東田に吉泉研究室に行ったことを話した。
「監督はデータ魔だからな。先輩の話では、俺たちの資産どころか、童貞かどうかも知っているんじゃないかってさ。ところで君は当然、由佳ちゃんの生理のサイクルを知ってるよな?」
意味が分かるまでしばらくかかった。
分かったとき顔が赤くなった。
「まさか、そんなこと聞く勇気なんかない」
「僕とこなんか妹二人いるから、あっけらかんとしたもんさ。けれど結構大事なことだよ。それに彼女は一応障害者だよな。何か困ることはないのか?」
そうか。
由佳は障害者になるのか。
「そんな風に考えたことはないな。聞こえないと分かった時は驚いたけど」
「不便だけど不幸じゃないってことか?」
「不便?それもあんまり感じたことがない。店のカウンターじゃ話しにくいことくらいかな」
「困ることは何もないのか?」
「今までで困ったことは、カラオケに誘われて行ったことだ。彼女、映像を見ながらノリノリだった。俺の方が歌える歌、何もなくて、聞こえるんならもっと覚えろって叱られた」
「彼女歌えるのか?」
「歌詞や画面を見て、体を動かすのが楽しいそうだ。西野カナや絢香が好きらしいけど、俺はどちらもよく知らん」
あれからカラオケは行っていない。
「いつも二人でどんなことを話しているの?」
「陸上の話が多いかな。手話が分からない時は筆談もするから、話がなかなか進まない」
「いつか彼女に会わせてよ。僕は手話検定三級に合格している」
「何で手話ができるんだ?」
「親父もお袋も特別支援学校に勤めていて、小さいころから、そこの子と遊ばされた。点字もわかるし、視覚障害者の伴走をしたこともある。彼女に僕の練習プランを考えてもらうよう頼んでみてよ」
「東田はだめだ。イケメンだし何でも出来るから心配だ。会わせたくない」
年度内にもう駅伝はない。
今月は、三田のハーフマラソンと大阪のクロスカントリーに東田と出場する。
後は、3月のびわ湖マラソンを目標に調整していく予定だ。
ハーフマラソンは、マスターズ対象ということで年配の人が多かった。
男子ヤングの部で参加したが、1時間3分12秒で優勝。
途中から独走になり、ペース配分がつかめないままフィニッシュした。
1位になったのはうれしかったが、世界記録は58分台で日本記録はまだ1時間を切っていない。
お山の大将でいたら世界には通用しない。
万博跡地のクロスカントリーは楽しかった。
一万mにエントリーしたが、悪路の中を数千人が走る。
舗装された平坦な道を走るより鍛えられると思った。
登り道や狭い所から広くなったところで、何人も抜くのは快感だ。
これなら何度でも走りたい。
トレーニングコースで、山道を走っている成果が出たようだ。
入賞はできなかった。
これでお楽しみは終了。




