副賞の真珠
役員の人が近付いてきて、淳一のゼッケンを確かめた。
「おめでとう、準優勝です」
2位か!本当に?
思ったより良かった。
それより彼女はどこだ?
優勝は山中道則さん。陸上の名門、関東大競走部の4回生だ。
インタビューを聞くと、何と親父さんがオリンピックのマラソン選手だったそうだ。
淳一の記録は2時間15分6秒。
一般参加で出発地点のロスがあるから、まあかなり頑張った方だろう。
フィニッシュ地点には続々と選手が到着してきて、周辺はごった返している。
吉泉監督が大会役員のリボンを着けてやって来た。
「昨日の今日でよくやったな」
入部以来、初めてほめてくれた。
生まれて初めてのドーピング検査。
薬を飲んでないか聞かれ、係の人に見られながら尿を採った。
表彰式でも台の上から彼女を探した。
携帯を預けているので連絡ができない。
式が終わり、三人の写真を何度も撮られた。
淳一にインタビューはなかった。
三人で握手をして別れた後、ようやく柵の外に由佳がいるのを見つけた。
案の定、彼女は口をゆがめてべそをかいていた。
「三か所で手を大きく振ったのに、あなたは私を見てくれなかった。ここに来るのも大変だった。地図を指さして聞いたのに、誰も教えてくれない。もう会えないかと思った」
彼女の頭を引き寄せ胸に押し付けた。
今日一番幸せな時間だ。
もらったメダルを彼女の首にかけた。
周りにいる人が口笛を吹いて拍手をしてくれた。
やっと笑顔を見せた彼女の頭と額に唇を押し当てた。
唇にもしたいよ。
貰ったタオルを肩にかけ、足を引きずりながら海の見える場所に移動した。
そこに座り込み、靴下を脱いでアイシング。
やっとほっとできた。
きらきら光る海を見ながら思った。
何とか目標タイムをクリアできた。
一つ山を越えたが、次の山はもっと高い。
今度は今日の記録を5分以上縮めないといけない。
今までは、トップアスリートを追いかけるだけだった。
これからは彼らと互角に戦わなければならない。
本当に大変なのはこれからだ。
2位に入賞してうれしかったのは副賞があったことだ。
もらったばかりの小箱を彼女に渡した。
中には真珠の付いたピンブローチが入っていた。
「大きな真珠。とても高そう。卒業式で服に付けて出席する。ありがとう。うれしい」
君の喜ぶ顔を見られるのなら、どこでも何度でも走ってやるよ。
風が冷たくなってきた。
最後にもう一度頬にキスをした。
「今からご飯を食べに行こう。今日は二人でお祝いをしよう」
今夜、どこかホテルにでも行けないだろうか。
今日こそ君と二人きりで過ごしたい。
彼女が可愛い笑顔で手話をした。
「お母さんが昨日作った食事、残っているから今日、食べてもらうと言っていた」




