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君とオリンピックに行きたい  作者: 友清 井吹
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ロンドンへの道

汗まみれで寺に帰ると、由佳が待っていた。


クーラーと扇風機で生き返った。

前の家には扇風機しかなかった。

暑い日は足元にバケツを置き、水の中に両足を入れて勉強をしたことがある。

こんな話、彼女には信じられないだろうし、したくもない。


彼女は机の上に大きな紙を広げた。

大きく『ロンドンへの道』と書いてある。

現在のベスト記録と日本記録。そして世界記録。 


千五百 4分2秒     3分37秒    3分26秒            

五千 13分55秒   13分13秒   12分37秒   

一万 32分28秒   27分35秒   26分17秒  

マラソン  ?   2時間6分57秒 2時間3分2秒


こんな記録で、よくまあ彼女に一緒にロンドンへ行こうなんて言ったな。

思わず笑ってしまうと、彼女が怒った顔をしたので顔を引き締めた。


「やめたいの?」

「ごめん。後一年ある。君に約束したことは守る」


まだ口をとがらせている。

これから試練の毎日になるかな。


いや、高校の時と比べたらこんな幸せな時間はない。

笑うことは彼女を侮辱することだ。

深く反省をした。


『オリンピック代表選手選考要綱』を渡され、陸上一般種目とマラソンの項を読んだ。

最終選考は、五千か一万の場合、来年6月に大阪で行われる日本陸上選手権大会。

マラソンは12月の福岡国際と来年2月の東京マラソン。

最終3月6日のびわ湖毎日の三大会で決定する。


後、半年か。

今は体作りすらできていない。

勝負はできるだけ後の方がいいと思うが、今の実力を半年で世界レベルまで持っていけるだろうか?


心配していても仕方がない。

彼女の努力に答えよう。

彼女の言うことならできる。

何も疑うことなく全部やってやる。


練習計画表を見て驚いた。

今日から彼女との練習は始まっていた。

明朝は20キロで夜は5キロか。

次の日は、朝10キロ、夜10キロ。

その繰り返しらしい。

休みは月曜日だけ。

週6日間、毎日20キロ以上走るのか!


「きついなあ。20キロはLSDで走っていい?」

「3月まで半年しかない。神戸マラソンまで二か月。スピードを出して走る。のんびりしている時間はない」


これから出る試合も決めた。

バイトをするつもりだったが無理だ。

今やっている家庭教師すら時間的に難しくなりそうだ。


ふすまが開き、伯母さんが顔をのぞかせた。

「夕食を食べてないでしょう。残り物だけど用意してあるからね」


有り難いと思ったが、もし彼女と別のことをしていたら、やっぱり突然戸を開けるかな?

この部屋を気に入っていたが、彼女の自宅と変わらない気もしてきた。

 


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