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君とオリンピックに行きたい  作者: 友清 井吹
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3章 トレーニング開始

だれかに体を揺さぶられて目を覚ました。

時計を見るとまだ6時過ぎだ。


目の前に由佳がいる。

会いたかった顔がそこにあるのだが、眠くて目を開けられない。

無理やり起こされ、ランパンとシャツを渡された。

寝ぼけまなこで着替え、玄関を出る。


自転車に乗った彼女に並走してもらいながらジョグ。

深呼吸や伸びをするうちに目が覚めてきた。


ゆっくり伊吹中央公園まで走り、設置しているベンチに寝かされた。

腹筋と背筋を指示され、足を曲げるストレッチを二人でする。

柔軟運動はきつくて痛くて悲鳴を上げた。


終わると公園内の雑木林にある道を指さした。

山道を走るのか。

緑のトンネルの中、セミの大合唱を全身に浴びながら走るのは、新鮮で心地よい。


車道に出ると、彼女がスマホにタイムを記録していた。

太陽は上がりかけているがまだ涼しい。


外周路の歩道に戻ると、彼女が前を指さし、両手を早く振った。

全力で走れっていうのか。

よし、自転車の君に負けないくらい走ってやるよ。

頑張って走り、ようやく自転車に追いついた。

由佳の顔にも汗が浮かんでいる。


ペットボトルを飲んでいたので、手を出すと渡してくれた。

彼女が飲んだペットボトルに口をつけ、全部飲み干した。

やった。

それだけで、今日の頑張りが報われたような気がした。


そこからゆるい上り道を20分ほど走ると伊吹東公園に着いた。

これで10キロらしい。

公園に設置している高鉄棒で30秒間ぶらさがった後、彼女が指示するストレッチを行う。

一体何セットやったか覚えていないくらいやらされた。


最後に腹筋と腕立て伏せ。

何で走り終わってから、腕立てを30回もするんだ。

息が切れて、立ち上がれないほど疲れた。

彼女は時計を見ながら指で回数を数えている。


2時間半のトレーニングが終了した。

タオルをもらって一息ついた。


「疲れたよ。すごいトレーニングコースだね」

「今日は1回だけだけど、次は2周する」

「2周も走ると倒れてしまうよ」

「ジュンは私の言うこと、なんでも聞くと約束したでしょう?」


彼女は淳一を呼ぶ時、指文字で中指一本を立てる『せ』を『ジュン』に勝手に決めていた。

背が高いというだけの理由だ。

サインネームというらしい。


「コースを考えるのは楽しかった。でもジュンがいないから寂しかった」

「僕もだ。今夜、会って話したい」

「私も相談したいことがたくさんある」

「今から大学に行くけど、練習はどうしたらいい?」

「暑いけれど、少しでもやってきて」


寺に着くと、庭のホースで頭から水をかけられた。

彼女からホースを奪い取り、彼女にもかけてやった。

まるで子供だな。


ずぶ濡れになったので、彼女がタオルと下着を持って来て玄関を指さした。

あそこで着替えるのか。

でも何で俺の下着の場所を知ってるんだ?


朝食は、住職夫婦と一緒に手を合わせて頂いた。

ごはんと味噌汁、野菜の煮物。

ひじき山盛りなんて小学校の給食以来だ。


「淳一さん。東北で長いこと頑張ったねえ。えらかったでしょう。いっぱい食べてね。今日は四合炊いたけど。由佳ちゃんもいるから足りるかしらねえ」

伯父さんが、もっと食べるよう勧めるし、彼女も二杯食べろと催促をする。

これでは昼を抜いた方がいいかもしれない。


「倉本君。君の義理の父さんとはどうなっている?実は君の母さんの三回忌が今年の1月だったが、年末に連絡したら、全部君に任しているとのことだ。任すといっても高校生の君になあ。気の毒だから親族なしで、お経だけあげておいたよ」

「すみません。僕には連絡が無くて」

「それよりあちらとは、これからどうするんだ?」

「義父との関わりはもうなくなったと思います。いずれ名前も元に戻すつもりです」

「何という名前だったんだ?」

「安原淳一です。だけど手続きとかで、義理でも父親の名前が必要な時がよくあるんです」

「まあぼちぼち片づけていけばいい。できることなら力になるよ」



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