表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君とオリンピックに行きたい  作者: 友清 井吹
44/137

けんかのやり方

洋二兄が久しぶりに電話を掛けてきた。

今住んでいる家を処分する話が進んでいるそうだ。


「親父はここを売って、今のマンションの借金を完済したいらしい。淳一はどうするんやと聞くと、大学に入ったら出て行くと言うた、と言い張っている。今すぐということはないと思うが、なみ江さんがせかしているらしい。俺も兄貴も、今安売りするのは反対やけどなあ」


貯金は、10万円程ある。

6月から始めた家庭教師と奨学金で月7万円。

土日は陸上の試合や練習でバイトができていない。

下宿すると六千円増額されるが、それで生活できるだろうか?


下宿代が3万以下なら何とかなりそうだが、そんなところが果たしてあるかな。

バイトを増やすのは仕方ないが、陸上はやめたくない。


今のところ、かなり助かっている家庭教師を向うの家でやるようにした。

簡単な夜食を作ってくれるのがありがたい。


閑静な住宅街の中だが、それほど裕福とは思えない家だった。

子供もだいぶなじんできてくれた。

なぜ塾にせず家庭教師にしたのかもわかった。

いじめだ。


教えている小6の大輔は、気弱で若干肥満気味。

塾でも学校でも同じ奴にちくちくやられてきたらしい。


淳一は、転校した当初しばらくやられたことがある。

そのいじめは、母も担任も知らないはずだ。


解決は難しくない。

男子の場合、いじめてくる相手をやっつければいいだけのことだ。

大輔にいじめをする奴を倒すやり方を伝授した。   


やられてもへらへら笑うな。逃げるな。

そいつの襟を思いっきりつかめ。

後はその体勢で壁まで押しまくれ。

殴られても手を離すな。


実際にやらせてみた。

殴ったり蹴ったりしてはいけない。

ただ押しまくれ。

向うが泣くか謝ったら離せ。


大輔の顔つきが変わっていた。

明日学校でやってみろ。


「やったよ、先生!」

次の日、彼から弾んだ声で電話があった。


家庭教師が終わったのは8時前。

駅へ歩きながら何度もため息をついた。

中学の受験問題は難しすぎる。


小腹が減ったからおにぎりでも買おうか。

そう思って駅近くのコンビニに入ろうとすると、店の前で男女がもつれあっていた。

言い争っているのに声は聞こえない。

ふざけているだけか。


ちらっと顔を見ると、まさかの由佳だ。

ずんぐりとした男に無理やり手を引っ張られ、それに抵抗している。

こんな所で何をしている?

若い男は、筋肉質で腕も首筋も太い。


何も考えずに二人の間に割って入った。

間違っていたなら大恥だ、と思いながら女性の顔を確かめた。

やはり彼女に違いない。


口元に強烈なアタックがきて吹っ飛ばされた。

立ち上がってつかみかかると足払いをされ、また派手に転んだ。

持ち物が辺りに散乱した。


周りを取り囲む人が増えてきた。

コンビニの店員も出てきて「警察を呼びますよ」と大声を出した。


男がこちらを睨み、逃げるように走り去った。

結局、何にも力になれず、口を切り鼻血を出しただけだ。

周りの人に手を引かれ、何とか立つことができた。

情けないし恥ずかしい。


由佳が落ちていたノートや文具を拾ってくれた。

次に自宅方向を指さして、先に歩き出した。

その後をハンカチで鼻や口を押さえながらついて行く。


こんな格好じゃなくて会いたかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ