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君とオリンピックに行きたい  作者: 友清 井吹
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水泳部入部

高校に入ったら何かスポーツをしようと思っていた。

今までの自分を変え、心も体も強くなりたい。


陸上、柔道、バスケット、サッカー部・・・。

どのクラブを見学してもしっくりこない。


今まで運動部やスポーツクラブに一度も入ったことがない。

一から始めるにはどこも敷居が高すぎる。

何をやっても素人だし金もかかりそうだ。


もう部活なんかしなくていいか。

そう思いながら運動場の端でぼんやりたたずんでいた。


「おい、そこの新入生」

頭の上から声がした。


「もう部活決まったんか。まだやったら水泳部を一度見に来いよ」

見上げると、プールのフェンス越しに声をかけてきた先輩がいた。


「でも俺、あんまり泳げません」

「いいって。全部教えてやるから大丈夫やって」


そうだな。水泳なら水着だけで安上がりかもしれない。

その日のうちに、水泳部に入部した。


義父が出て行ってからは、毎日家事に追われた。

朝起きたら、まず洗濯機を回す。朝食は納豆にご飯だけが多い。

何でもいいから食べておかないと、昼前にかなりつらい思いをする。

弁当は夕食の残りと海苔やふりかけをご飯の上に散らすだけ。

天気を見て、家の外か中に洗濯物を干してから登校する。


学校で話すのは、水泳部の男子ぐらい。

女子生徒は、みんな自分よりはるかに大人びて見えた。


入学して間もなく、三人の女子に声をかけられた。

「倉本君、クラスの連絡網を作るから、携帯の番号とメルアド教えてくれる?」

ぼそっと携帯を持っていないことを伝えると、唖然とした顔つきになった。


「とりあえず家の電話番号でいいよ」

一人が優しく言ってくれた。


義父が家を出た時、電話も撤去されていた。

後で配られたプリントには、枠外に長々と淳一の住所が記されてあった。


水泳部の練習は甘くなかった。

溺れない程度には泳げたが、競泳レベルには程遠く、他の新入部員とは別に基礎練習ばかりやらされた。


淳一を誘った白井部長は責任を感じたのか、いつも熱心に教えてくれたので、なんとか泳ぎ方も様になってきた。


ネックは腕力の弱さだ。

キック練習はついていけるが、ビート板を足にはさみ、腕だけで進むプルの練習は苦手だ。

白井先輩は淳一のことを何かと気にかけてくれた。

「腕立てとか、ダンベルでもやって鍛えとけよ。水をかく力が付くから」


腕立てと腹筋だけは毎日やって、多少は力をつけてきた。

夏を経て身長が伸び肩幅も広がったが、他の部員と見比べるとひょろっとした貧弱な体形だ。


一応泳げるようになったクロールと背泳の記録は、水泳大会のたびに伸びた。

100mの自由形で2分もかかっていたのが、徐々にタイムを上げ、8月初めの大会で1分20秒。


九月の新人戦では1分12秒まで縮めることができた。

たいして速くもないが、やっとみんなに追いつくことができたという安ど感を得た。


2年生の仁志紀和子先輩は、淳一の手を取って腕のフォームを教えてくれた。

今までに見たことのないきれいな人で、どぎまぎしながらも言われたことを繰り返し練習した。

彼女にほめてもらえるのがうれしくて、なおのこと練習に打ち込んだ。



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