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君とオリンピックに行きたい  作者: 友清 井吹
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2章 原人からホモサピエンスに進化

六甲大学の合格発表は3月9日。

その日はバイトを空けておいた。


朝から野路の家に行き、彼のパソコンの前に座る。

前期試験でも大きなミスはしていないが、やはり落ち着かない。


近畿教育大には、すでに合格していたので気は楽だった。

紀和子先輩と会えるのなら、そっちでもいい。

白井先輩に勝てるとは思えないけれど。


合格者発表は午前10時だ。

数字の羅列の中から受験番号を探す。


あった。

文学部史学科に合格。

最後の模試でもD判定だったが、第一志望に合格ができた。


野路が、痛いくらい何度も背中を叩いた。

大学生になれたんだな。

お昼は彼の母親が、手巻きずしを作って祝ってくれた。


「彰人は来月から筑波だし、お姉ちゃんは、就職したら大阪に行ってしまうでしょ。倉本君はこちらだから是非顔を見せてね」

姉はIT企業に就職が内定したらしい。

この家族にはとても世話になったが、野路がいない家に行けるかな。


3月11日は引越しの仕事で、午前と午後、二軒で働いた。

神戸へ帰るトラックの助手席で目を閉じながらラジオを聴いていると、関東で大きな地震があったと報じられていた。

「そういえば3時ごろ少し揺れたかな」

ハンドルを持つ主任さんがつぶやいた。


それが、少し揺れたどころでないことが分かったのはその日の夕方だ。

自衛隊や防衛大に入っていたら、救援活動に参加できていたのだろうか。


今の俺は自分の事だけで手一杯だ。

大学に入ったら必ずボランティアをしようと思った。

今まで人に助けてもらってばかりだったから。


大学へ入学手続きに行くと、周りは親子連れの学生ばかりだった。

初年度納入金は80万円。

半分の40万円を期日までに支払わねばならない。


『前期分授業料免除について』というしおりを見て、すぐに申し込もうとした。

よく読むと書類が何通も必要でややこしい。

おまけに払い込んだ分が返ってくるのは数か月後とのことだ。

やはり初めは義父に助けてもらおうと思った。


「入学費用をいくらかもらえますか?」

義父に頭を下げ、もらったのは1万円。

ともかく礼を言った。


「金を出すのはこれで最後な」

そう言われてため息が出た。

全額は無理としても、半分の20万くらいはもらえると思っていた。

三年前、母から聞いた「義父さんによく頼んでおいたから」という言葉に期待していたのだが、もう消えていたのか。

母から預かっていた貯金とバイトで稼いだ金のほとんどを取り崩し、何とか半期分を払い込んだ。


事務の人に聞くと授業料の減免は何とかなりそうだ。

所得証明がいるので、また義父に頭を下げなければならない。


携帯は、野路に来てもらって契約をした。

これから毎月口座から相当額が引かれていく。

ともあれ俺は原人からホモサピエンスに進化することができた。


3月は引越しのバイトに明け暮れた。

主任さんから4月中も続けてほしいと拝むように頼まれたが、4月5日でバイトを打ち切った。


3月の収入で、生活費に多少余裕ができた。

4月からは、奨学金を月4万5千円受け取ることができる。

六甲大学の入学式は4月7日。

少しは準備もしたい。本も読みたい。




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