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君とオリンピックに行きたい  作者: 友清 井吹
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それぞれの進路

センター試験は1月16日。

これで失敗はできない。


一日のほとんどの時間、起きている間は勉強をした。

直前一週間は、疲れたら机にうつぶして寝た。


さすがに前日は布団で寝て、久しぶりに枕の感触を思い出した。

これだけやって落ちたら仕方がないか。

そんな気にもなった。


そういえば福沢諭吉の自伝に、適塾でオランダ語の猛勉強をした時病気になり、初めて自分の枕がない事に気付いたという話があった。

俺なんかまだまだ及びもつかない。


本番では基本的な設問が多く、大失敗は無かった。

後は前期試験だ。


野路は、関東にある国立鹿島大学にスポーツ推薦で早々と進学を決めていた。

「俺、もちろんサッカーをやるよ、あそこはレベル高いから、多分Bチームからスタートだけどな。お前みたいにあきらめず、やれるだけやるわ」


香奈さんは、女子大の栄養学部に行く。料理を作るのが趣味だったそうだ。

「倉本君には私の作ったもの、一度も食べてもらえなかったね。私、陸上はまだ続けたいと思っているの。また応援に来てほしいけど無理かな」


角谷麗奈は、ネイルアートの専門学校に行くと知らせに来た。

思い付きではなく、前々からの夢を叶えるらしい。店に行けばサービスしてくれるそうだ。

別れ際に耳打ちしてきた。

「約束したこと忘れんといてね」

約束?以前うちに来た時、結婚しようと言われたことか。あれって約束だったかな?


何度か接点のあった萩田は、地元の福祉大に進み介護士を目指すらしい。

今までの言動とはどうも結びつかない。


卒業式の前日、会いにやって来た。

「お前とはいろいろあったけど、これお詫びのしるし」

包装された小さな軽い箱を渡すと、さっさと行ってしまった。

教室で開けてみるとスキン1ダース。まさか避妊具か。

あわててかばんの中に入れた。


水泳部のお別れ会があった。

行く気はなかったが、2年の木ノ嶋さんが教室まで迎えに来た。

逡巡する淳一の手を引っ張り、無理やり連れて行かれた。


「やったあ、やっと倉本先輩の手を握れた。先輩は、いつも仁志さんばっかり見て、私のことなんか知らんぷりやったでしょう。すごく傷ついてたんやから」


送別会では、ジュースで乾杯した後、先輩からひと言というコーナーがあった。

「俺、2年でやめてしまって本当に悪かった。仁志先輩から、水泳部を支えてほしいと言われたのに責任を果たせなかった」


部員達の戸惑ったような顔を見て、しまったと思った。

雰囲気を暗くしてしまった。

「けど俺の高校生活の半分は水の中だった。水に流してもらえるかな」


我ながら下手な洒落れだと思いながら頭を下げた。

頭を上げるとみんな笑っていた。



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