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君とオリンピックに行きたい  作者: 友清 井吹
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防衛大受験

吉見先生から、また職員室に呼ばれた。


先生は、今までにない晴れやかな顔をしていた。

高三の、残る八か月、学費に補助が付き、奨学金も貸与されることになったのだ。


「君は、お父さんと一緒に住んでないからややこしかったの。持ち家が二軒あるのに生活が苦しいのは変だと言われてね。でも事情を話して分かってもらえた。奨学金は月一万八千円しかないけれど、少しは勉強に専念できるかしら」


これでバイトを減らすことができる。貯金も15万円たまった。

本当はバイトをやめたいが、月2万足らずで生活するのは苦しい。


「奨学金の返還義務はあるけれど、君が働き出してからでいいの。大学でも奨学金はそれほど難しくなく借りられるわ。後一つ。君の志望校の防衛大学は試験が11月でしょ。9月に願書を出すから、1学期の成績、相当上げないと推薦も一般も厳しいと思うな」


入試は現役で受かることが大前提だ。

国公立に入れたとしても初年度納入金はかなりの額がいる。

防衛大に入れたら問題ないが、倍率が高いし、模試でも合格ラインには程遠い。

後数か月で成績大幅アップか。難しいな。


高2の9月から一年近く、生活のためとはいえ受験勉強のブランクは、今となっては大きな痛手だ。

それまで時間をかけて授業の予復習をして、教科書を丸暗記するという学習をしていた。

それがバイトで時間も集中力も無くし、科目によってはもう追いつきようがない程遅れてしまった。


ともすれば絶望的な気分になりながら、図書館と自宅で時間をかけて勉強した。

夏休みは学校での補習が一週間あり、理数系科目は基礎的な所から復習をした。

どの先生も質問すると丁寧に教えてくれた。


なんとか順調に勉強が進んでいると思い込み、またバイトを入れた。

引越し5回、ファミレス2週間。


入学金や今後の生活費を少しでも貯めようと思ったのだが、体力と時間の消耗は大きく、バイトの合間の受験勉強になってしまった。

結果論でいうと高3の夏休み、バイトはすべきでなかった。


11月、大阪会場で防衛大一般前期試験。

人文系で受験をしたが、倍率は半端ではない。


合格しても辞退者が多いと聞いていたので、期待していたがあえなく不合格。

来年後期もあるが、より難しくなるのであきらめざるを得ない。


ショックは大きかったが、1月のセンター試験まで二か月しかない。

さすがに死に物狂いで、年末のバイトにも行かず勉強をした。


六甲大文学部と教育学部。仁志先輩が進学した近畿教育大の三つに絞って受験することに決めた。

9月の模試では三つともE判定だった。


落ちたら、どこかの町で新聞配達をしながら予備校に行くか、高卒で自衛官になるか、就職するかの道しかない。


今の立場で大学進学なんてどだい無理だったのかもしれない。

だとすればものすごく無駄なことをしていることになる。

そんな気もしてきた。


文学部の受験というのは、防衛大を落ちて初めて視野に入れた学部だ。

相談したのは担任の吉見先生。


「防衛大は残念だったね。でも倉本君には悪いけど私はほっとした。君が銃を持つよりチョークを持つ教師になってほしいと思っていたから。読書量なんか他の誰より多いし、私のように文学部はどうかな。考えてみてね」


先生は二十代半ばで、ここが初任校だ。大きな黒縁の眼鏡をしている。

一度メガネを外した顔を見て、きれいだなと思ったことがある。

俺の事を本気で助けてくれた。

いつかお礼をしたいが、そのためにはまずどこか受からなければ。


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