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君とオリンピックに行きたい  作者: 友清 井吹
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野路家の夕食

修学旅行明けの登校日。


香奈さんが心配そうな顔で近寄って来た。

「もう病気治ったの?体、大丈夫?」


他の同級生からも体を気遣う言葉をかけられた。

これって友情なんだろうか。


麗奈からは、ホワイトチョコレートをもらった。

「浮気せんといてね」

やっぱり意味が分からない。


野路がつかつかと淳一の教室に入って来て、けんか腰に聞いてきた。

「お前、なんで旅行に来なかった?ほんまに病気やったんか?」


学校が終わると、無理やり野路の家に連れて行かれた。

「今日の夕食は焼き肉なんやけど、親父がいないんで余りそう。助けると思って食べに来てくれ」


助けたくないな。そう思ったが、今日は、断れないとあきらめた。

バイトは野路の携帯で休むと連絡した。


彼はいつもと違い黙りこくっていた。

淳一の方がしゃべり続けた。


「俺、バイト先の女の子にコクられた。どこかの女子高生で、タバコさえ吸わなかったらスタイルいいし嫌じゃなかったけどな。俺にはあんな子が向いてるかもしれんな」

「あほか」

それ以上話すと殴られそうな雰囲気だ。


家に着くと、美人のお姉さんとその姉としか見えない母親が迎えてくれた。

「倉本君のこと、高校のホームページによく出てたね。スポーツで表彰されたって。彰人、自分のことのように自慢していたのよ」

「ホームページとか見たことないから。けどサッカー部も今年、県の大会出たんだろう?」

「俺以外レベル低いから2回戦負け。早く部屋に来いよ」


めんどくさそうに言って、二階に上がってしまった。

お姉さんが、ソファーに座るよう勧めた。


「あのね、彰人は中学まで地元チームのユースにいたのね。そこでもまれて、いつか有名高校から声がかかると思ってたみたいなんだけど、上には上がいるよね。でもサッカーは捨てれないじゃない。そんな時、倉本君と友達になってね。あいつ自衛官になるか、教師になるか真剣に悩んでる。俺なんか甘いよな。生活ってもんがあいつに比べて全然わかってない。なんてことを言い出したのよ」

俺の苦しい生活なんか分からなくてもいい。


「私ね、倉本君がうちの彰人と長く友達でいてほしいと思ってるの。だから君が悩んだりしんどい時、彰人に相談してくれないかな。もちろん君にだって人に言えないことはあると思う。けれど修学旅行から帰ってきた日、倉本君が彰人に何も言わず来なかったってすごく落ち込んでいたのよ。君の家の事情を詮索したりしないけど、彰人が本気で心配してるってことは知ってほしいの。ごめんね。うまく言えなくて」


彼女と目を合わすことができず、うつむいた。

「はよ来い」

野路が大声で呼んだので、話はそこで途切れた。


旅行中、彼が吉見先生に聞きに行くと、「倉本君は急病で来れなくなった」と説明したそうだ。

「お前、何度も職員室に呼ばれていたしな。多少は見当つくけど」

「もういいよ。修学旅行なんてもう終わったんだから、何を今更みたいな感じだ。行かなくて助かった面もあるし」

 

夕食は焼き肉ではなく、分厚いステーキだった。

テーブルの上には、いろんなオードブルが山のように並べられていた。

ここに来るたびご馳走を食べさせてもらっている。


「スキーどうだった?」

「あんなもん、みんな下手っぴいばかりで、上のグループでも足引っ張る奴が一杯いて、夜は夜で恋バナばかり。早く帰ってボールを蹴りたかった」

「俺は北海道とか行ったことないから残念だったな。大学に入れたら、信州とかでバイトをしながらスキーをやってみたいよ」


その後、水泳部で好きな先輩がいて振られたこと。

ショックで試合中プールで溺れかけたことなど、笑いを誘うような話をした。

でも少し疲れた。

残った食べ物をたくさんもらい、彼の家を出た。


彼が駅まで送ると言って付いて来る。

「お前なあ、もううちには来ないって顔をしている」

図星だ。

確かにしばらくは顔を出す気はない。

みんないい人だけど。


「俺は気持ちがしんどい時、お袋の墓、といっても小さなロッカーみたいなとこだけど、その前で、今まで俺の事を気にかけてくれた人のこと、例えばお前の家族とかな。その人たちのことを思い出すんだ。すると何となく元気が出てくる。今はしんどいけど、トゥモロー イズ アナザーデイだ。多分何とかなるはずだ」


野路はどこまでも付いてきそうなので、無理やり帰らせた。





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