表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君とオリンピックに行きたい  作者: 友清 井吹
22/137

トゥモロー イズ アナザデイ

昼休み、久しぶりに図書室へ行った。

誰もいない所でぼんやり体を休めたい。


弁当は持って来ていない。

最近は、少しの朝食とバイト先の夕食だけ。一日1.5食だ。


司書の浅岡先生がいた。

「倉本君、ずい分ご無沙汰していたね。本が読んでくれるのを待ってるよ。お茶飲んでいってね」


浅岡先生は、先生の中で吉見先生の次に話ができる。

本を借りる時、よく話しかけられ親しくなった。

人がいない時は、お茶やお菓子をよばれたこともある。


昨年、浅岡先生に図書室の蔵書を全部読むと宣言したことがある。

もちろん冗談だが、全ページ読むのは無理でも、さっと目を通すくらいならできると思っていた。


最近は、図書室にすっかり足が遠のいている。

毎日来ては眺めていた本の背表紙をぼんやり眺めた。


「あなたにうちの娘、ここの高校で水泳部にいるって話したかしら。あの子、最近倉本先輩が来てくれないってとても心配していたわよ」


水泳部で浅岡さんという子はいたかな?

首をかしげていると先生は笑みを浮かべた。


「あの子が中学の時、私は離婚して旧姓に戻ったの。でもあの子ね、名前を変えるのは嫌だって前のままなのよ。体の割に気が小さくてね」

「じゃあ、今、何ていう名前なんですか?」

「そんなこと君に教えたら、あの子にぶっ飛ばされてしまうわ。それでね、悪いけど吉見先生に君のこと聞いたのよ。最近どうしたんだろうって」


図書室に来ない方がよかったな。

目をそらしてため息をついた。


「おうちの事情で働きながら高校に来ているそうね。私ね、倉本君に何ができるか考えたの。それで君の貸し出し記録を見ていたら、私の好きな本をまだ読んでいないことが分かった。世界文学のコーナーにある本で『風と共に去りぬ』を知ってる?」

「昔、映画になった小説ですか?作者は女性だったかな」

「そう。その映画の一番最後にね、主人公が『トゥモロー イズ アナザデイ』と言うの。あなたなら意味がわかるでしょ?」

「明日は別の日。明日には新しい日が始まるということかな?」

「私、今まで何度もこの言葉で救われたの。おせっかいだと思うけど、君には覚えておいてほしいと思って」


お茶とクッキーをよばれてから図書室を出た。

おそらく俺にどう言えばいいか、ずっと本気で考えてくれていたんだろう。

この言葉で今の窮状が解決するとは思えない。


ともかくあきらめず希望を持って生きていけってことか。

そう言えば似たような言葉があったな。確か『開けない夜はない』だったか。

今のところ、俺の人生はまっ暗闇な気がするけれど。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ