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君とオリンピックに行きたい  作者: 友清 井吹
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学年集会

連休明けに登校すると、校門付近で野路が待ち構えていた。


「倉本、例の女子を泣かした件でえらいことになっているぞ。お前、掲示板とか人のブログ見てないやろ。せっかく作ってくれた弁当拒否った。弁当より体を要求したとか、実名でぼろかす書かれてる」


言っている意味が分からない。

それに10日も前のことが、なぜ今頃?


「お前はネットを見ないから、逆にそれが強みだな。今日内容を見せるつもりやったけどやめとく。興味ないやろう。まあ俺なりに対策考えてみるわ」


教室に入ると、みんなから冷たい視線を浴びるのを感じた。

席に座り、ふっとため息をついた。

こんな調子で卒業まで後一年半か。長いなあ。


俺は自分のことで必死なんだよ。

家事に勉強、バイトに部活。

不公平なんて思わないからほっといてくれ。

   

一週間後、体育館で2年生の学年集会があった。

全員筆記用具を持ち、床に座らされた。

吉見先生が、壇上に立ち、マイクを持った。


「最近、この学年で特定の一人に対して、ネットでひどい中傷誹謗が行われているということを聞きました。私たち教師もその内容を読んで、非常に不愉快で、かつ悲しく、憤りも覚えました。うわさが広がり、今では他校の生徒までが面白半分で書き込んでいることに強い危機感を感じました」。


ここで声を張り上げた。

「匿名だから名前が出ないって信じてるとしたら大間違い」


何人もの顔が、淳一に向けられた。

「事がもっと広がった場合、私たちは絶対許しません。特に最初、面白半分にブログに載せた人にはそれなりに責任取ってもらいたいと思っています」


淳一の方をちらちら見る者はいなくなった。

「やったことは悪質な嫌がらせでありいじめです。やった子はよく分かってないようだけど、今から大人のルールを説明するね。された方の親御さん次第ではあるけれど、やった人に対して告訴することもあり得るということは分かってね。そうなると対抗措置として弁護士を雇うことになると思うけど、君たちはそこまで覚悟して好き放題書いたのかな」


体育館の空気が鋭く張りつめてきた感じがする。

次に全員にアンケート用紙が配られた。

記名式で、今回の事件を1.知ってる、知らない、2.やった、やってないというだけの簡単なもので空白部分が多い。感想でも書けということか。


しんとした体育館で周りを見回すと、裏にまで何か書いている生徒もいる。

何をそんなに書くことがあるんだ。

『知らない』と『やっていない」に丸をつけると、目を閉じた。


吉見遥は、壇上で全体を見回していた。

この件を生徒からの通報で知り、学年主任や生徒指導担当と長時間話し合った。

無記名のアンケートで終わらさず、きちんと経緯を解明しようということになった。

今日は校長や他の職員も来て成り行きを見守っている。


昨日まで生徒の気持ちに訴えるか、間違いを厳しく指摘するか迷っていた。

今の学級や学年の雰囲気を勘案して、後者で行こうと決めた。

指導はうまくいったと思うが、成就感はなかった。


アンケートには、ブログに書き込んだ者の名前や自分は無関係であるという言い訳めいたことばかり書かれていた。どこから始まり、だれがどのように拡散させたのかも分かった。

この件はまもなく終息する。そう確信した。


ターゲットが携帯を持たず、書き込まれた内容に無関心ならばネットいじめは成立しない。

みんな倉本君みたいに、スマホの替わりに本を読んでいたらこんなこと起こらないのに。





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