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香武庁  作者: かんから
義景の政権下
15/29

開明派の政治

 条良じょうら康朝やすともは、大老に就任した。彼は忠実における井伊直弼を演じることとなる。(ちなみにあちらの世界にも井伊直弼はいたかもしれないが、有名ではないのだろう。)


 手始めに庁府内における権力強化をはかるため、香武庁十二代である香武かんむ義景よしかげ嫡男の義武よしたけに娘を嫁がせた。のちに義武は十三代目になる予定のため、康朝は将来の帝の義父ということになる。他方で周りを意に沿う家臣らで固め、強権を持って事にあたる姿勢をあらわにしたという。


 なかでも同じ遣欧使節団のメンバーだった者らを登用し、庁政改革を断行。最新式の武器弾薬の製造開始や反射炉を尼崎に建てるなど施策を実施。一方で資金欠乏が心配されたため、庁史で初めてとなる”紙幣”を発行する。発券元として”大坂銀行”を設け、庁府の信用をもとにスタートした。加えて世界基準に合わせて通貨交換比率是正(実際は小判の再鋳造)も実施。


 軍事構成も西洋式に切り替えようとし、庁府護衛隊を新設(通称は新軍)。ロシアとフランスで学んできた十和田とわだ元雪もとゆきをトップに据えて、少数精鋭のスペシャリスト養成を任せた。(ただし当初は添え物的な扱いからスタートしたため、強い指揮権を持ち合わせていない。)


 ……積極的に政策はうっていったが、反発がものすごい。特に博多藩上西家隠居の上西じょうせい宗家そうやは、同じ御三家の条良家が権力を握ったことにいきどおった。何かにつけて条良康朝と対立していく。



 アメリカとの通商条約交渉も継続され、アメリカは紀伊国白浜に領事館を置き、腰を据えての話し合いがなされていた。どこまで譲歩し、どこまで守り抜けるか。ここがかなめである。



 ……かくしてペリー来航一年後の1854年。日米通商条約が締結されようとしているとき。国内からは弱腰外交を批判する声が噴出し、康朝卿をもってしても抑えられそうもない。国外からは……とくにロシアが文句を言いだした。


 軍備増強のため、これまで香武庁は武器弾薬の輸入をロシアに頼ってきた。さらには資金の借り入れまでされている。そのロシアを差し置いて、アメリカだけに有利な条件を与えようとは何事かと。特に開港地に関する条文。これまでの長崎と函館だけでなく多くの港を開くこととなったが、函館はロシアと関係が深い。函館の取引のほぼすべてが対ロシアで占められている。なのでこの状況を保ち、他国の船を入れないでほしい。


 

 ……そうだ。函館の地をロシアで租借そしゃくするのはどうだろうか。100年契約でロシア領とし、もちろん日本人の出入りは自由だ。これでロシアは極東に初めての不凍港ふとうこうを手に入れ、日本へは返礼として借金の半分をチャラにしよう。


 フランスとオランダの者にこの話を訊ねると、絶対してはならないという。前年の1853年にクリミア戦争が起きたように、ロシアは南へ南へと勢力を伸ばそうとしている。……もし函館を譲るようなことがあれば、いずれは蝦夷地すべてがロシアに帰するだろうと。特にフランスはロシアを警戒。庁府に代わりの資金援助を申し出た。



 ロシアの申し出は断られ、アメリカとの通商条約はその条文のままに結ばれた。続いてロシア・イギリス・フランス・オランダも同じ条文を要求し、これまでの体制は崩れ去っていく。一方で康朝卿の最低必守ラインと考えていた”瀬戸内・紀州水道の外国船立ち入り禁止”は叶えられた。

銀行という名称を用いているが、当時の銀行に貯蓄部門は有していない。

あくまで紙幣発行のみの機能である。

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