自己紹介
「タイミング分からなくて言ってなかったけど、俺は雄輔。高校ではサッカー部だったよ。二年せいだ。」
雄輔は、ガッチリとした体格で、サッカー部よりは柔道部が当てはまるように思えた。顔は意外と優しそう。
「巧。三年。」
「俺は奏。同じく三年。」
二人は双子だ。髪の分け目が左にある方が巧で、右が奏。二人とも整った顔をしていて、学校ではモテそうだ。
「もうわかると思うけど、私の名前はかすみ。水泳部に所属してます。高校一年生。」
髪はショートで、元気いっぱいと言った感じ。声が綺麗な少女だ。
「先程も言いましたが、一年の麻那と申します。」
麻那はハキハキとしていてとても気持ちいい。
「由佳です。LINEのグループではあまり絡んでませんでしたが、皆さんと会えて嬉しいです!あ、いや、嬉しいなんて不適切か。」
私も麻那に続いて挨拶する。そんな中、一人の少女はモジモジと身体を動かしていた。
「ゆず? どうしたの?」
かすみがきょとんとしている。
「あのね、ずっと自分の事私って言ってたけど、本当はゆずって呼んでるの。やっぱここでもゆずのまんまでいたいから、ゆずって自分のこと言うね。ぶりっ子だとか、きもいって思わないで欲しいな。」
ゆずは顔を赤くする。長い髪から見え隠れする赤い顔がとても可愛いかった。
「全然いいよ。皆も、いつも通りにしようぜ!」
雄輔が言った。それに反対する者はいなかった。
「ありがと!」
ゆずは明るく言う。
時間は過ぎ、外は薄暗くなっていた。私達は今、ジュースやお菓子を食べ盛り上がっていた。
「今頃、あっちでは騒がしいのかな?」
巧は少し顔を曇らせる。
「あっちって?」
かすみは不思議そう顔をした。
「親とかだよ。いきなりいなくなったからさ。」
巧が言った。
「騒いでるでしょうね。」
麻那は無表情で言う。
沈黙が続いた。
「あ、あれ?もうジュース無くなっちゃったね。まだ真っ暗じゃないし、おばさんのところから貰ってこよっか?」
沈黙を破ったのはかすみだった。
「お願いしよっかな?」
ゆずが笑って言った。
「うん! ちょっと行ってくるね!」
かすみがジュースを取りに行くと言ったのは、場の空気を変える為だけではなかった。
「ここなら、誰もいないか。」
実は、沈黙の少し前から吐き気がしていた。皆がいる前で吐きたくなかったのだ。
「きゃっ!?」
手が真っ赤に染まる。口から出てきたのは、赤い色をしたものだった。
「こ、これって……血?」
胸が苦しい。頭ガンガンする。息が荒くなる。
かすみは一人、暗い草道で倒れた。