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オタクって最高だな!  作者: 暦騎士
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見上げた青空はただただ青かった

透き通るような綺麗な柔肌。

ふっくらと膨らんだ桜色の唇。

艶やかで美しい茶色がかった髪。

長い睫毛を携えて未だ開かれない目。

改めて見て思ったが、本当に可愛い。

こんなに可愛い女の子には絶対、眼鏡が似合うと思う。

話が変わるがこの世界にはたくさんの次元がある。

その中でも全てを作り、全ての始まりであるのが1次元だ。

1次元とは何か?

点である。

点とはつまり小さな円。

円とはつまり眼鏡。

ということは、全ての次元の始まりは眼鏡であると言えるのではないだろうか。

次元だけではない。数字の最初の数の0も眼鏡だ。

正解を表すときに用いられる丸も眼鏡だ。

この世に眼鏡は溢れていて、そして眼鏡は始まりで、それでいて正しい。

この理論に則り眼鏡は最強であることがわかる。

なので、最強の眼鏡をかけることによって、少女の可愛さを倍増させる計画を立案する。

有言実行の俺は、うきうきしながら引き出しから黒縁のメガネをとりだした。そして、少女のそばに歩み寄った。

しかし、大事なことを俺は忘れてしまっていた。


俺は少女に触れることができない。


それはなぜか?

簡単なことである。

究極のボッチである俺は、女子と喋らないことこの上ないので、触るなんて一気にレベルが上がりすぎている。最後に女の子に触ったのが、150年前の夏。カブトムシの雌を拾ったぐらいだ。

まぁ、確かに3次元の女子なんて、上司の家庭事情ぐらい触れちゃダメだ。

上司はね、頑張ってるんだよ。

疲れてて休みたいのに嫁に、あれしろ、これしろ、って言われて。高校生の娘は喋りかけようとしただけで『臭い』、『ハゲ』、『こっちくんな』とか言われて。

て、昔のバイトの先輩が言っていた。

やっぱり3次元に夢も希望もなかった。

結婚するよりやっぱり、趣味に金を使ったり、友達と楽しく過ごす方がいい。そう言う結論に至ったね。

え?

お前同性の友達いないだろって?

うるせぇよ。

俺たちには狩場があるんだよ。そこでワイワイするから。電脳世界でモンスターとワイワイするから。

最初の『モン』の二文字に惑わされちゃダメだ。その後ろに『スター』ってついてんだろ。俺はスター友達とワイワイするんだよ。スターどうし悩み事とかを語り合ってね。

え?

星になれって?

うるせぇよ。

つまり、何が言いたかったかと言うと、女子と喋ることすらままならないのに、女子に触れるなんてレベル高すぎだ。奇兵隊の隊長レベルで高すぎ。

と、半端諦め掛けていたその時!

俺の前に眼鏡の神様が降臨なさった。すると、瞬く間にこの絶望的な状況を覆すアイデアが浮かんてきた。

そうだ!触れないのはそれが少女だと認識ているからだ。つまり、少女を視認しないことで俺の封印されし右手は解放される。

だが、完全に目をつぶると『あんっ!』なところや、『そんなっ!』ことろをさわってしまいかねない。

そこで、この眼鏡を使う。

眼鏡を使うことで、視界がいい感じにボヤけて『ダメっ!』なところを触らずに、少女に眼鏡をかけることができる。

これならピッチャーフライとるみたいに簡単に少女に触れることができる。ハハハ、もらった!

さて、少女よ。

我の崇高なる作戦の前に屈服せよ!

そして俺は眼鏡を手に持ち………

あれ?

眼鏡どこいった?

さっきまで手に持ってたはずの眼鏡が無くなっている。

まさかこれが、この少女が異世界転生されて得た隠されし能力!

運命を操る、『闇黒《アルル・D》』の能力者だったのか。

ふっ、面白い。

ならばその運命、俺の異能力『進化レート・クアトロ』の、能力で倒してみせよう。

不敵に笑う俺は、眼鏡をカチッと押し上げた。

あ、眼鏡、あった………

さて、今までのはほんの冗談だ。

次は本気で行くぞ。

しかし、次の策を考えようとするが全く思いつかない。

どうやっても、少女に触れないと眼鏡をかけれない。

くそっ。触らずに眼鏡をかけるなんて無理ゲーだろ。上杉達也もびっくりだよ。

あぁ、眼鏡様。もう一度降臨なさってください。さっきはとんだ駄眼鏡だったけど、その汚名を返上するがごとく姿をお店ください。

その時、暗闇の中で一筋の希望の光が差し込んだ。見上げた空の雨雲を、押しのけるようにその人というか、神様はやってきた。

その眼鏡に羽をつけた姿は、その名のイメージどうりだ。

あぁ、眼鏡様。

きたきたきたきた!

すると、光が瞬いたかのごとく最強のアイデアが浮かんだ。

思いついたぞ!触らずに眼鏡を掛けさせる作戦を。

俺は今まで、手を通して掛けさせることしか考えてなかった。

だから、触らずに眼鏡を掛けさせる方法を思いつかなかった。

次は違う。次は空気を通して眼鏡をかけさせる。

パンが無いならお菓子を食べればいいかのごとく、触れないなら触らなければいい。

名付けて『マリー・アントワネット・ボッチバージョン』だ!

そして、その作戦内容は地球の引力を使い、重さや傾きなどを計算して初めて成功する高難易度なものだ。

まぁ、簡単に言えば落とすだけだ。

完璧だ。完璧な作戦だ。

さぁ少女よ。いくらお前が眼鏡を拒もうと運命は俺の味方だ!

今こそ吾輩の完璧な作戦の前に屈服するが良い。

俺はベッドの前に立ち眼鏡を定位置にセットした。

ここから少女までの距離はわずか1m50cmぐらいだが、耳と頭のあの絶妙な間に、二本のロンギヌスの槍を突き刺すのは至難の技。

1m50cmとは、初めの1という数に騙されてはいけない。あいつは小さそうに見えるかもしれないが、とてつもない力を持っている。

そう、例えば隣の女子の席との間が1m50cmでも、俺と彼女の心の距離は、1m50cmなんてもんじゃない。マリアナ海溝が二つぐらい余裕で入る。

だから俺は命をかけて、誠心誠意、本気の勝負を仕掛ける。給食の時、余ったゼリーをかけるじゃんけんぐらい命の命をかけている。

ふぅ、落ち着け。何も緊張することはない。失敗が許されないなら失敗しなければ良いだけだ。逆にこんな完璧な作戦、失敗する方が難しい。

眼鏡を落とすなら猿でもできる。どころか、ツンデレ幼馴染を落とすよりも簡単だ。これは、いける。

これ以上、コミュ力がないから眼鏡美少女を見れないなんていう悲劇を、繰り返さないためにも、ここで決める。終わらせる。仕留める。

いくぜ、食らいやがれ、


「超必殺!マリー・アントワネット・ボッチバージョン!!!!!」


その掛け声とともに放たれた眼鏡は、ひどくゆっくりと秒速を刻む。

ただ真っ直ぐ落ちてゆく2本の槍は、

空気を撫でるように優しく落て行く。その1m50cmは、神秘的な美しさを醸し出していた。


カチャ、


はっ….……!

やった。

やったぞぉぉぉぉぉ!!!!!

見事にロンギヌスの槍は、耳と頭の絶対領域に突き刺さった。

あまりの嬉しさで、俺はとっさにサマソーを繰り出していた。サマソーから放たれた右足は俺の脳天を直撃した。

俺は少女の姿を見る間も無く、後方にぶっ飛んだ。

だが、不思議と痛くなかった。

興奮しすぎて痛覚が鈍っていのだ。

この時俺はまだ知らなかった。

この後俺を待っている悲劇を。


それから約1分が経ち興奮が治まってきたので、少女の鑑賞に移ろうとしていた。

さてさて、眼鏡美少女はどんなものだろうか。俺の予想だと、顔を覗き込んだ瞬間に『不愉快です。』なんて言って切りかかってきたりすると思う。

もしそうなったら出欠多量じゃなくて萌えまくって死ぬな。確実に。

まぁいい。どうせそんなことあるはずないのだから。今はただ目の前に広がる現実を受け止めよう。それが今俺のすべきことだ。

そう思って、俺は少女のそばまで歩み寄る。

高鳴る胸を抑えながら。

痛々しいほどに顔面を赤く染めながら。

少女の前に着くまでは本当に一瞬で、息をするのも忘れていた。

今体のどこかを針で突き刺したら、風船の空気が抜けるように、体の血がそこから全部吹き出してしまいそうだ。

いかん、いかん。俺はやっと長い戦いを終えてここまできたんだ。少女を味わう資格がある。

おまわりさんこの人です。

少々、変態的な響きになってしまったが、そんなことはどうでもいい。

正直俺はドキドキしてしまっていた。この状況に。

下には長年夢見た眼鏡美少女がいる。

緊張しないほうがおかしい。

胸が張り裂けそうだ。

血液がいつもの何倍もの速さで全身を駆け巡る。

次第に指先がビリビリといたみ、足にうまく力が入らなくなり、目も回り始める。


「う、うわっ」


体がグラつき、後ろに倒れそうになる。

俺はとっさに足を下げて力をこめる。

なんてこった………。少女を見てすらないのに緊張で卒倒しそうになった。

俺のチキン度もそうだが、それよりもなんて破壊力なんだ。

この破壊力は………

今年の正月に俺は本棚の整理をしてた。

しかし、そこにトラップは仕掛けられていた。木造なだけに木片が出っ張っっていて、俺はまんまとトラップに引っかかった。

整理を済ませるついでに、俺は完全に自分の逝去も済ませちゃっていた。それほどの痛みだった。

いや、まだだ。これはまだ予兆にすぎない。

この破壊力は………

やっとの思いで木片を抜いたので、冬休みの宿題をしょうと思った俺は、シャーペンを手に取り宿題を始めようとした。

だが、そこにトラップがらし仕掛けられていた。俺はキャップの方ではなく、シャー芯を思いっきりプッシュしていた。

俺はシャー芯をプッシュするついでに、死後の世界への扉もプッシュしてしまっていた。

もうそろそろ心が痛んできた。だが、まだだ。

この破壊力は………

シャー芯をやっとの思いで抜いたが、心も体もとても傷ついたので柄にもなく年賀状でも書こうと思った。

だが、ここにもトラップは仕掛けられていた。

俺は筆を取り墨をつけ今から書こうとしたその時だった。心配になったのでもう一度墨につけようと思ったら、間違って書く方と逆の紐がついてる方を墨につけてしまっていた。それと同時に俺の親指は墨まみれになった。

俺は墨にまみれになったついでに、隅っこでひっそり暮らしているのがお似合いだった。

俺はすでに心も体もボロボロで、立っているのも精一杯だった。

だが、まだだ。

俺は傷口に墨が入って痛かったけど、頑張って年賀状を書こうとした。

だが、そこには最後のトラップが仕掛けられていた。


書く人がいない。


俺は年賀状を書くついでに、念入りに書く必要があった。念仏を。

と、同じぐらいの破壊力だ。

ていうかいつから俺の暴露会になったの?

破壊力はどこ行っちゃったの?


つまり俺は何が言いたかったというと、ボッチは普段あまり喋らないように見えるけど、心の中ではリア充に匹敵するぐらい喋る。

破壊力じゃないのかよ………。


まぁ、そのぐらいの破壊力で受けたがなんとか耐えた。

これが少女の本当の異能力『壊滅レベル・キング』。

さっきの緊張や熱気は、まだ俺を離してくれない。

唇も震えるし、のども渇く。鳥肌もたつし、足もガタガタと鳴る。

なんとも滑稽な姿だ。

あの魔導法王がかつてこれほどまでに、引きを取った相手がいるか。

いやいない。

最強にして、最光にして、最極の魔道師。それが俺だ。

そんな俺をここまで追い詰めるとは。

選択肢の一つとして逃げるという手もある。

確かにかつての戦いで、俺を前にして逃げだした戦士は何人もいる。

だから、俺だって逃げていいのだ。逃げ続ける間は負ではない。

勝てる機会をうかがっているとでも、勝てるまでに自らを高めるとも言える。

だが、俺は戦士の前に男だ。

やると決めたらやらなければならない。決して下ネタではない。

俺は眼鏡美少女を見ると決めたのだ。己の魂に。

自らの心に。

だから、逃げれない。

ここで逃げては男がすたる。

立ち止まるのはもう終わりだ。

勇気を出せば美少女はそこにいる。

覚悟は決まった。

行こう。最果てならぬ、再拝へ。

俺は思い切って足を踏み出した。

すると、体がゆっくりと何かのしがらみから解き放たれたような気がした。

100kgの重りを肩から降ろしたように体が軽い。

そして、瞬く間にベットの前まで来た。


いつもならここで緊張で卒倒したり、人斬りで抜刀したりしていたかもしれないが、男(童貞)の顔に迷いの念は感じられなかった。

男(童貞)は、少女の顔をしっかりと見るために顔を近づける。

そして、普通の人間では近づけない距離まで男(到底童貞は卒業できない)は、近づいた。

ありえない。

なぜ、あの男(ドッジボールの時に投てきにされる)は、先ほどまであれほど狼狽していたというのに、こんな至近距離まで近づくことができるのだ?

ふと男(童貞なんてどうでもいい!)の顔をを覗くと不敵な笑みを浮かべていた。

その笑みの正体を俺は知っていた。

あぁ、そうか。取り払ったのか。

自分が長年抱いていたしがらみを。

しがらみの招待なんて分からない。が、確かに男(童貞パンティ)の目は、乾いた目から、腐った目へとグレードアップしていた。

そして、その腐った目はやっと少女の事を見つめていた。

すると男(この突起物何に使うんだろう?)の目は、腐りきっていたはずが今度は光が消えて濁った目へと、グレードダウンしていた。


俺の目の前には、夢にまで見た眼鏡美少女が存在していた。

俺はやっとの思いで、ついに眼鏡美少女を拝むことができたんだ。

だが、だが、俺はときめくことができなかった。

俺は失敗してたんだ。

あの頭のおかしな作戦名の時から。


薄れゆく意識の中、俺は考えた。当初の目的はなんだったかを。

最初俺は、眼鏡美少女を見たかっただけだった。

しかし、次第に好奇心が生まれた。

現実を打破することに、フラグを打破することに。

あれだけ盛大にフラグを立てておいて、死なないはずがないのだ。だが、俺は争いたかった。フラグという名の現実に。

そんなことができないのは、生まれた時から知っていたというのに。

つまり、俺が今こうして地面に向かって落ちて行くのも、すでにフラグによって定められていたのだ。

天罰が下ったとしか言いようがない。

完膚なきまでに叩き潰された。

やはり、リアルには簡単には勝てないようだ。

自分の諸行を悔やんでいた俺の脳裏には、あの光景が張り付いていた。

まぶたの裏にも焼き付いていて、消えてくれない。

落ちゆく体と意識で、目を凝らした先には晴天の空が窓から覗いている。

そうか、今日はこんなにも晴れていたのか。

俺は約10分の間、この青空に見守られながら一人で戦っていたのだな。

だから、この空は俺の犯した失敗を知ってる。

あぁ、これぞまさに晴天の霹靂と言うべきか。

オシャレに締めたところで、結果は変わらないのだが、

まさか、あんなことになるなんて。

まさか、あんな小学生の最初のテストとに出るぐらい簡単なことで失敗するなんて。


まさか、眼鏡が逆さまだったなんて。


そこで俺は死んだ

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