女王様の涙
この小説はグループ小説第十六弾、視点の変わる小説の企画に参加してます。
私が女王様付きの侍女になってから早数年がたった。
我が国の女王様は気が強くてわがままだ。
こうといったらその意志をまげることなんてない。
男勝りで凛としていてとにかくかっこいい。
そんな女王様に私たち侍女はとてもあこがれている。
しかし、こんな女王様は初めて見た。
あの女王様が泣いているのだ。
「ラルクさん、いったいこれはどうなっているのでしょうか?」
こんなことは初めてなので、何をすればいいのか分からず部屋の前をうろうろとしていたら、私の前に料理長のラルクさんが通りかかった。
ラルクさんはなかなかの男前として侍女達には評判だ。
なんでもその切れ長な目と高い身長がいいらしい。
「とりあえずおちつきなさい、メイファ。女王様だったら大丈夫ですよ」
なかでは、女王様と旅人が話をしていたはずだ。
侍女の役目として扉の前で私は見張りとして立っていた。
しかし、急に女王様が泣き出してしまった。
ラルクさんはその様子に気づいても平然としている。
彼は私とあまり歳は変わらないはずなのに、どうしてこんなにもおちつきに差が出てしまうのか。
いいえ、この状況だと私はおかしくない。彼のおちつきの方がおかしいはずだ。
「なんでおちついてられるんですかぁ? これは一大事ですよ!」
思わずまぬけな声が出てしまう。
それを聞いてラルクさんは笑い出した。
「女王様の涙はうれし涙ですから。それよりもここを離れた方が女王様達のためにもなりますよ」
なんのことだかさっぱり分からない。
自分だけ理解してくすくすと笑っている様子に腹がたった。
すると理解していないことが分かったのか、ラルクさんは私の腕をひっぱって中庭の方向へと向かった。
「ここならもう話しても平気でしょう」
やっとラルクさんに手を離してもらう。
けれど、そんなことよりもなぜ泣いていたのかが気になる。
もしかして、
「あの旅人が女王様を泣かせたのでしょうか!?」
そうだとしたら一発殴らないと気が済まない。
よし、今からあの旅人の所へ行って殴ってこよう。
私は回れ右をして女王様の部屋へと向かおうとした。
「ちょっと待ってください。確かに女王様が泣いていたのは旅人が原因ですが、さっき言ったでしょう。あの涙はうれし涙だって」
ラルクさんは落ち着いた様子で私を説得しようとする。
でも納得いかない。
「じゃあ、なんで女王様は泣いていたんですか!?」
私は旅人に対して怒っていたので、ついついラルクさんに向かって怒鳴ってしまった。
だって、女王様はとても強くて気高くて。泣いた姿なんて一度も見たことがない。
ラルクさんは私の声があまりに大きかったからなのか、耳をふさぎながら説明をしてくれた。
「女王様は、ずっと待っていた旅人に会うことができたんですよ。きっと今頃は再会の喜びに浸っていると思うので、そこを邪魔してはいけませんよ」
その後も事細かにラルクさんは説明をした。
なんでも昔旅人は城へ来て女王様と恋に落ちたんだけど事情があって去らなければいけなくて、これが久しぶりの再会で……。
聞いていたら、だんだんと悲しくなり、私も女王様と同じように泣きそうになった。
「……ですから、今は。ってなんで泣きそうなんですか!?泣かないでください」
ラルクさんはとても困った顔をしていた。それはそうだろう。いきなり私が泣きそうになっているのだから。
「悲しいんです。……ラルクさんはあの2人のことを知っていて、なのに私は知らなくて。私は女王様の侍女を何年もやっているのに」
とうとう涙があふれてきてしまった。
それほど悲しかったのだ。私が女王様のことを知らなかったことが。
「こんなんじゃ、女王様の侍女として失格です。もう侍女をやめます!」
なんでこんな結論になったのかは自分でも分からないが私は侍女をやめようと決心した。
次から次へと涙があふれてくる。
とにかく悲しくて、くやしくて。
「やめる必要なんてありません!」
そばで大きな声がして驚いた。あのいつもおちついているラルクさんが大声をだして、おちつきがなくなっている。
「僕はメイファにやめて欲しくないです!僕は、メイファのことが好……」
何かを言いかけていたラルクさんが急に頭を押さえてその場に座り込んでしまった。
ラルクさんのそばにはなぜかボールが落ちている。ふと周りを見回してみると、
そこには女王様がいた。
「こら、ラルク!あんた私の大事なメイファを泣かせるな!」
女王様がラルクさんにボールを投げたことが分かった。
彼女はこちらへと走ってくる。
「女王様!? いったいどうなされたのですか?」
もう涙なんてとっくに乾いていた。
女王様はずいぶんと怒っているらしい。今にもラルクさんを殴ってしまいそうだ。
「メイファ、大丈夫? なにもされてない?」
私のそばまできた女王様は、私のことを心配しているようだ。
「別に何もされていません。大丈夫です、女王様」
「そう? でもあなたが泣いているようだからここにきたのよ」
女王様は私のことを気にしてくれている。そう思うと私の悲しみが薄れていった。私の顔が笑顔になっていくのが分かった。
その女王様はもう私の知っている女王様だった。
そのことにほっとする私がいる。
「じゃあ、なんであなたは泣いていたのよ」
女王様は不思議そうにしていて、私に理由を尋ねてくる。
私は答えにくかったが、女王様の質問なので答えないわけにはいかない。
「実は、私は女王様のことを何も分かっていないことに気がついたんです。それで侍女をやめなければいけないと思い、悲しくて泣いてしまいました。ラルクさんはそれで私を慰めようとしていて……」
そこでふと思いだし、ラルクさんを見てみると、彼はまだ座り込んでいた。
そうとう女王様の投げたボールは痛かったらしい。
彼を助けようとしたときに女王様が怒ったように私に言った。
「馬鹿ね。あなたにやめてもらったら、私が困るのよ。私はメイファのことが気に入っているんだから」
私は感動して、また泣きそうになってしまった。
もう、私は侍女をやめるなんて言わない。一生この女王様についていこう。
そう決心した。
「そうそう、メイファに旅人を紹介したいから、ついてきて」
「はい!」
女王様はとても嬉しそうに『旅人』という言葉を言った。
女王様が嬉しそうだと、私まで嬉しくなってくる。自然と返事の声も大きくなった。
女王様としてではなく、1人の女として彼女は旅人のところへと走っていく。私もそれへと遅れないようについていった。
だって、私は女王様の侍女だもの!
……女王様のそばについていられることが嬉しくて、中庭にラルクさんをおいていってしまった。
何か私に言おうとしていたけれど、いったい何だったんだろう?
初めてグループ小説に挑戦しました。
なかなか難しいですね……。
今度挑戦するときはもっとうまくできるようにしたいです。




