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カルアちゃんの本気を垣間見た。
アクセル全開で、時速400kmをオーバーを叩き出し、島という島を通り越していく。
辺りの景色は、物凄いスピードで過ぎ去っていく。
自身で体感したこと無い為、胸がドキドキした。
そして、体をむき出しの状態でも風を全く感じない。
これはV・Dの特殊効果があるからだ。
記憶でしか見たことがなかったが、生身で体感すると自身で操縦してみたいと思ってしまうのだ。
移動中に「カルアちゃん」と言うと「駄目!」と即答を食らった。
まだ何も言ってないのに……。
病院へ到着すると医療スタッフが待機していた。
カルアちゃんが連絡を入れてたおかげで、直ぐに色々検査を受た。
そして、もともと持っている持病以外何も無しと診断された。
カルアに報告すると良かったと胸を撫で下ろしていた。
私は「心配をかけてしまってごめんなさい」と言ったら、笑顔で「いっぱいかけてもいいよ」と言われた。
あんなに優しい笑顔は見たことがなかった。
思わずドキッとしてしまった。
「じゃあ、私は先に帰るね。明日は学校来るよね?」
「大丈夫だと思います」
私がそう言うと、カルアは満面の笑みで「わかった」と言って大きく手を振りV・Dに乗り飛び去っていった。
その後は、お父さんとお母さんが来るまで椅子に座り待っていた。
10分後くらいだろうか、お父さんとお母さんが大慌てで来て、私はその場でこっ酷く叱られました。
厳つくガタイのいいお父さん。
名前は、雪宮ヨシヒデ。
髪の毛は短髪でソリが入ってる。
ヤクザかな? っと失礼なことを思ってしまってごめんなさい。
とっても優しくアオイちゃんにデレデレなお父さんだ。
お母さんは、物凄く綺麗で黒髪ロングの髪の毛がきらきらと輝いてる。
おっとりした感じなのだ。
名前は雪宮アイラ。
あひるさんのような仕草をする人だった。
例えが悪いのは仕方がない。
私の知る例えれる動物が少ないの……。
お父さんの後をちょこちょこと歩く姿がそんな感じだったのだ。
これらは、全てアオイちゃんの記憶から既に私が知ってる事。
二人共、アオイちゃんを溺愛している。
ちょっと羨ましいと思ってしまった。
私は面会を断ってしまった。
どんどん衰弱していく私を見て、二人はいつも泣いていた。
そんなの私は見たく無かった。
だから、距離を取った。
今思えば、何で会わなくしたんだろう。
もっと、いっぱい話がしたかったと思うのだ。
そんなこと思ってたら、心配そうにお父さんとお母さんが見つめていた。
私は悲しそうな表情をしてしまっていた。
「あ、アオイ……つ、強く言いすぎた。すまなかったぁあああ」
「でも、心配だったのアオイちゃんごめんなさい」
二人は私に抱きついて、私の両頬をダブルすりすりをしてくるのだ。
愛情表現の一種かなと思い、私はそれを受け入れた。
その後は、なんだか上機嫌な二人に連れられ、私はアオイちゃんの家に帰るのであった。
家はV・Dパーツの専門店。
オリジナルのパーツも作っている為、工房も完備されている。
元いた世界となんら変わらない一軒家を改築して、お店もやってるといった感じだ。
私の住む島で、唯一パーツを扱ってるお店である。
この世界は五つの国がある。
アルカディア、ロードディニシス、エルシュトン、ニブルガーデン、シルヴァラントの五つの国だ。
私の住んでいるこの島は、シルヴァラントという国に属する島でリクレア島という。
私達は裏口から入り、お父さんが電気をつける。
記憶があるからか、この家が懐かしいと思ってしまう。
「アオイちゃんお風呂沸いてるから入りなさい」
「はーい」
元気のいい返事をしたら、二人は目を合わせ驚くのだ。
アオイちゃんではあり得ない返しをしてしまった。
私は、失敗したと思ってその場でもじもじとしてしまう。
中身が違うので、アオイちゃんのように返せない。
冷めたような声でいつもは喋ってるのだ。
そんなこと出来ません。
失礼な事を言ってるようで、いたたまれなくなってしまう。
でも、二人が怪しんでしまってる。
どうしようとおろおろしたその瞬間。
「アオイがついにデレデレになったぞおおおおお! フィーバータイムか? 今のこのもじもじしてる可愛らしい生き物はなんだ! 俺の娘じゃああああああ!」
「あ、あなたおちちゅいて! お、おちちゅくのよ!」
「アイラ! 噛んでしまうほど嬉しいよなぁ。分かる分かるぞその気持ち! 今直ぐにビデオカメラを設置するんだ! この可愛い生き物を録画保存して、明日から仕事の空き時間はこれを穴が開くまで見るぞ!」
二人の言葉に、私は呆気に取られてしまい、二人のいいように撮影会をさせられました。
生まれて初めて、ビデオカメラで撮られました。
私は、弱っていく自分を記録に残したくなかった為、元の世界では撮りませんでした。
ちょっと後悔。
撮影している二人は、物凄く楽しそうで撮れた映像を私に見せながら、「ここのもじもじした表情がもうたまらない」とちょっとよくわからない説明をしていました。
幸せそうで、元気になれるなら私は構わないかなと思った。
撮影会も無事に済み、私はお風呂へ行った。
鏡に写る私は、お母さんと同じで黒い髪の毛のサラサラロングヘア。
顔も整っており、物凄く可愛いのだ。
アオイちゃんの顔をちゃんと見るのは、これが初めてでつい見とれてしまうのだ。
記憶の視点はアオイちゃんだったからだ。
先程のビデオも戸惑ってしまってたため、ちゃんと見ていなかった。
そして、なんてことでしょう。
お胸が大きいのです。
まるまる太ったリンゴが二つと言ったら良いのだろうか。
入院していた私はそこまでありませんでした。
び、Bくらいはあったはず……たぶん。
そんなことを考えながら、白をメイン色としたライダースーツを脱いでお風呂場へと入る。
湯船は、たっぷりとお湯が注がれて花の香がするのだ。
自分一人で入るのはこれが初めてだ。
子供の頃から病気だったため、一人で入ることは無かった。
誰かが付き添うか、補助が必要だったからだ。
私は、ドキドキしながら初めてのシャンプーを開始するのであった。
悪戦苦闘しながら、長い髪の毛を洗い記憶通りにトリートメントを付けて流す。
長い髪を一纏めにして、湯船に浸かると心がほっかほかになるのだ。
生きている。
自分で私生活の事が全て出来る幸せを噛みしめるのであった。
お風呂から上がった私は、髪の毛を乾かしリビングへと向う。
お父さんとお母さんは、先程録画したビデオをテレビで流して満面の笑みで鑑賞していた。
幸せそうで何よりと思いながら私は二人に声をかけるのだ。
「お、お風呂あがりました」
「ああ、ゆっくり温まったか?」
「はい、体がほかほかします」
「アオイちゃん、すぐにご飯作るからね」
「はい」
お父さんは、私の返しに涙を流しながら喜ぶのです。
普段は、あまりかまってもらってないからだと記憶が教えてくれる。
こんなに喜んでもらえるなら、私はこのままでいいのかなと思う。
私は、ご飯を作っているお母さんの手伝いをすると言ったら、今度はお母さんが涙を流しながら喜んだ。
アオイちゃんは、家のことを全くしなかったからだろうなと思いながら、私は自分の出来る範囲で二人に何かしてあげたいと思うのであった。