事件~風の中でみつけたもの~
そんなこんなで休憩終了。
よし!
ハードル跳ぶぞぉぉぉおおおヽ(≧▽≦)/
しっかりストレッチしたし、
体も動ける!!
今度は記録更新を目指そう!
深呼吸。
私ならいける。
最初が肝心なのよハードルは。
勢い良くいこう。
スタートラインに立って前を見ると、
10台のハードルが一直線に並んでいる。
遠くにいくほど小さなものに見える。
こう見ると、やっぱり100㍍は
短いようで長いものだと感じる。
両手を地面について、落とした腰をあげる。
私ならいける…!
風を切れ。
うん、良いスタートだ。
足が軽快に前にでる。
ハードルを飛び越す体が軽い。
ゴールの向こうに何があるのか。
風を切って、地を蹴って、
今、ゴールした。
…記録更新。
嬉しい。心底嬉しい。
気分が良かった。
清々しい思いでいっぱいだった。
よくわからないけど、何故か
『ありがとう』と言いたかった。
誰に感謝すればいいのだろう。
先生?仲間?ハードル?それとも、榊…?
…わからない。
けれど、とにかく、良い気分だ。
今日は幸運を掴むことができたのかもしれない。
ルンルン気分もつかの間。
そろそろ榊が計測だ。
今日はいつもの800㍍じゃないらしい。
1500㍍か…長いなぁ。笑
長距離が苦手というか嫌いな私にとっては
苦痛で…もう頭というか心が痛い。
頑張ってね、と皆に一言。
そして定位置。
学校での長距離計測は
普通に運動場のトラックだ。
その隣に直線レーンがある。
そこの一番端がハードルゾーン。
ハードル所属の私はそこにいる。
要するに“特等席”で長距離の子達を見れるのだ。
長距離は見てる側は一見地味に見えると思う。
だって延々人が走ってるだけだしね。
でも、応援するとなったら結構良いものだ。
その人のペースとかを広く見れるから、
アドバイスがしやすい。
でもごめんなさい、皆…
私がみたいのは榊なんです…笑
先生の合図によってスタート。
800㍍よりだいぶ長い。
いつもより遅めのペースだ。
「ファイトー!!」
皆の応援の声が跳び交う。
この声は聞こえているだろうか。
そんなことを感じつつ応援し見守る。
目の前を走っていくと君の風を感じる。
頑張れ、と心の中で繰り返す。
そしてトラックを何回も走っていく。
途中、榊が走ってくる時に目があった。
まだ私からの距離は遠い。
それでも何かしたくて、
握った手を上にあげて『頑張れ』と伝えた。
途端にくしゃっと笑う顔。
余裕だなぁ。笑
と思いつつ、応えてくれたことが嬉しかった。
どんどん近づいてくる。
あぁ、いつもよりカッコよく見えるよ。
そして目の前を通り過ぎる瞬間……
─────────私の世界で時が止まった
…かと思った。
きっと今の私の顔は、俗に言う
“鳩が豆鉄砲を喰らった”ような感じだろう。
だって…
彼が私から目線を外して、
そのまま走り去るかと思ったら
……ピースをしたんだ。
両手で、ダブルピース、
胴の前で、先生にバレないようにか、
小さく…。
けれど、ちゃんと私に見えるよう、
少し笑顔でピースをしたのだ。
端から見れば
『何やってんだコイツそんなんしてるならちゃんと走れや余裕ぶっこいてんじゃねぇよ』
と思うかもしれない。
でも私にとっては一大事だ。
衝撃がすごくて何もできない。
何秒たっただろう。
そのまま彼の姿を見送ることしかできずに、
座り込んだまま口をあけていた。
ふと意識が戻る。
興奮で、、どうしようか。
なんだろう、どうしよう。
どうしてくれよう。
…言いたい、
誰かにこの衝撃と幸せを言いたい。
知らせたい!!!!!!!!!!
ふぉぉぉぉおおおおおおおおおお↑↑
そして走る。
少し離れた所に、計測が終わった仲間がいる。
スパイク片付けてたり話してたり、
そのなかに飛び込む。
ただならぬ私の様子に皆が怪奇の目を向ける。
「どうしよう!ちょ、聞いて!!
死ぬ!死ぬかと思った!!」
待て、落ち着け、
と、皆が促すがそんなの聞いてられない。
とにかく早く聞いてもらいたくて、
だいぶ早口だったと思う。
普段から早口な方だと言うのに、
きっとみんな聞き取れなかったであろう。
でもなんとか聞きとれたのか、
まじか!やら、すっげ!やら、
驚いてくれたのだ。
もう幸せすぎてどうしようかと聞いたが
どうにもできないからその辺で発狂してこい、
としか言われなかった為、
ジャージを顔に押し付けて
足をバタバタさせながら
「きゃーーーーーー!!」と発狂。
このままだと狂いそうだ、と言うと
最初から狂ってるから大丈夫だよ、と返ってきた。
いつもなら、『なんでよ!!笑』
とかツッコミみたいなのが言えるのに
もう頭が回らない。
「そっか、ひゃっふぅぅぅうううう↑↑」
などと言っていた。
ホントに今日は良い日だ。
何ヶ月分の幸せを
使い果たしてしまったような気がする。
明日からは地獄なんじゃないかと
慄然とするも、その日はずっと
幸せに入り浸っていた。




