君には勝てないな。
あの時の感情…
“好き”
でもそれはきっと、遅い発見。
きっと私は…もっと前から…
もしかしたら初めて会ったあの時から、
私は榊が好きだったんだろう。
それからの日々は何事もなく
ただただ平穏に過ぎていった。
好きと気づいたわけだけども、
変な対応をしたら、
何か感づかれてしまうかと思って、
冷静にいつもの私でいた。
…家に帰るとスイッチが切れてしまうんだけども。
そんなこんなでいつもの部活。
いつものように準備をして
いつものようにアップをして
いつものように仲間と笑いあって
いつものような楽しい部活をするつもりだった。
この時までは。
今日の練習は計測。
今の自分のタイムを知る。
結構これは精神的にキツい。
ただタイムを計るだけだけど、
私は圧倒的な緊張に襲われる。
いつものように…。
もう笑うことしかできない((笑
そして私が今日計る種目は
ハードルと50㍍。
ハードルはのMy種目だから、
本気で良いタイムを出さないといけない。
そして50㍍。
陸上は基本100㍍だ。
だからこそ、50㍍っていうものすごく
とにかく短い距離の中で
どれだけ加速できるかが勝負。
私の所属してる陸上部でハードルやってる人は
同じ学年ではなんと0。
だから基準がそうそうわからないのもあるけど…
50㍍は皆走るから、
結構空気がやばい。もうピリピリ。
そんな中どんどん走っていく。
先生「…7.2!…6.9!…7.0!」
……やべえええぇぇぇええ((笑
次私じゃん…。
うわぁ…。
なーんて思ってたら向かいから榊が歩いてきた。
榊はこれから走るんだなぁ。
これは見ないと。←
…ん?止まった?
えっ、私が走るレーンギリギリで止まったよ?
…………(´・ω・`)。
…去れよ!!!笑
正直走ってる姿は見られたくないんだが!!!!←…
…どけよ!!!!笑
しかもなんかニヤニヤしてるし!
いつもの悪魔的な笑みしてるし!
やめなさいよ!
私がその笑顔好きってこと知らないで!!!
こっちがニヤニヤしちゃうでしょ!!
とか思ってたらもうスタート直前!
息を吸って…吐いて…
いつものように。軽やかに足をあげるのよ私。
─────────パンッ
最初は地面を見て、前へ、前へ。
体感で25㍍。よし、これくらいで顔を上げて…
ゴール。
先生「…7.0!」
あぁ、ちょっとタイム落ちた。
くっそー。
…ていうか、1つ疑問。
顔をあげた時、確かあの辺に榊がいたはず。
いなかった。何故じゃ。
まぁ見られなくてよかったけど。
そしてみんながどんどん走っていく。
…あっ。次は榊かな。
私はゴール地点にいるし、
目が悪いからよくわからないけど、
あれはきっと榊だ。
かっこいいなぁ、なんて。
そう思ってるうちにスタートを切る。
うん、前より良いスタートだ。
このまえアドバイスした足の付け方もできてる。
飲み込み早いなぁ。
家で練習したのかな?
先生になんか言われてたしね。
それにしても…
風になびく、長めの髪。
サラサラで、太陽の反射でキラキラして見える。
かっこいいな。
やっぱり陸上はかっこいいね。
陸上にのめりこんで、
本気な顔してる真剣な目が、かっこいい。
しかも、また速くなってる。
彼の専門は長距離なのに。
短距離も速いとは。
やるなぁ。
そしてゴール。
さぁ、始まるぞ。
第2勝負の時間だ。
私「何秒だった!?」
いつもの戦い。
部活内ではもう恒例。
優衣と綺劉でどっちが速いか。
先輩後輩もあるけれど、
走りで女が男に勝とうなんて
天性の定めに逆らうと同じこと。
だからプラマイゼロ!
今回はどっちが勝つかな。
榊「俺7.0~、どうだった?」
私「嘘!? まじか!引き分けじゃんーーー」
榊「はぁあ!? またかよー!笑」
またか!!
今回も引き分け。。
でもね榊。
…ありがとう。
バカな私は、今やっと気づいたの。
榊はまた、気遣ってくれたのかもしれないって。
レーンギリギリで止まっていたのも、
ただ邪魔していたわけじゃなかった。
あの笑顔を見せる時は、
何かを企んでる時だけじゃない。
誰かを応援する時にもよくしてる。
『お前ならできるだろ?いってこーい!!』
って感じで。
レーンギリギリにいたのも…
私が緊張してる時は
真っ直ぐ前しか見れないことを榊は知ってるから。
私の自意識過剰かもしれない。でも、
“応援してくれたのかな”
なんて、思ってるだけで、
幸せだと感じた。
ホントに自意識過剰かも?
でも、私が緊張に弱いことを知ってるのは榊だけ。
そうとしか思えないよ…
それでも。
真実が違ったとしても、
そう思っておこうかな。
次は休憩か。
幸せ気味でルンルンの私は
『次はハードルを跳ぶ!やった!』
…なんて、呑気に考えていた。
この休憩を終えたら
非常事態が起こるとは知らずに。




