はじめてのそらのたび
本日2話目
「……疲れた」
もう3時間は歩いてるんじゃなかろうか。
いや、きっと5時間は歩き続けてるに違いない。
文句ひとつ言わずについてきてくれている珍妙生物ことグルが、心配そうに俺の太ももに顔を擦り付けてくる。
最初こそ珍妙生物だなんて言ってたが、慣れてくるとこれはこれで可愛いものである。
とりあえず、まっすぐ歩き続ければ森を抜けるかとも考えたがどうやら無謀だったようだ。
そりゃそうか。
もう随分と歩き続けていると思うのだけれども、グル以降何の生物も出会わない。
ありがたいようなさみしいような。
森についたときはどうやら早朝だったようで差し込む陽の光も柔らかなものだったが、
今ではほぼ真上から降り注いでいた。
「このまま歩き続けても、埒があかないな」
ふと、隣を歩くグルを見る。
これだけ歩き続けているというのに疲れたそぶりさえ見せない。
やはり、一介の自宅警備員とは鍛え方が違うのだろう。
――こいつが俺を乗せて走ってくれれば楽なんだけどな……
胴体がライオンなら良かったのだが、いかんせんこの似非グリフォン、頭がライオンで胴体が鷲である。
この細い鳥類の脚じゃ、俺を乗せて走るのは厳しそうだよなあ……
まあ、もともと鷲は空を飛ぶ生き物だし……
空を、飛ぶ……?
「おいグル、もしかして、俺を乗せたまま空を飛ぶことってできるか?」
恐る恐る尋ねてみると、
「グルゥ!!」
任せろ!
と言わんばかりに頭を激しく擦り付けてきた。
これは、いけるか?
「よし、グル。それじゃあ、俺を乗せて近くの人がいっぱい居るところまで飛んでってくれ!!」
――ガシッ。
ん?
なんで服の端をつかんで……
疑問を浮かべる俺を気にせず、服の端を足の爪でしっかりと捕まえたグルは大きく羽をはばたかせた。
「え、ちょ……ま…ちがっ……そうじゃなくてっ……」
鷲が餌の魚を運ぶ時と同じ姿勢で、
俺の体は大空へとひっぱりあげられていった。
「……嫌ァァァァァァァァァァァァッ!!」
……漏れた。
グルに悪気はありません。