もしかしなくてもファンタジー
初感想ありがとうございます
「い、痛かった…」
爪で引っかかれた左手がヒリヒリする。
驚きのあまりつい、爪で刺されただなんて思ってしまったが、実際には引っかかれた程度の傷であった。
しかし、僥倖か。
この珍生物が俺のいう事を聞いてくれるということが分かった。
そしてその事に僅かな心当たりもあった。
「最近やけに動物に懐かれると思ったけど、こんな珍妙な生物にも懐かれるとはなあ…」
そう、恐らくはこの珍妙不可思議な生物がいう事を聞いてくれたのはそれが原因だろう。
とりあえず、目先の危機が去ったので状況を確認する。
まずここは何処だ。
さっきまで確かに自室の布団の上で限りなく不毛で非生産的な活動に勤しんでいた筈である。
それが何故?一体全体、何がどうなったら、この摩訶不思議生物と森林浴に洒落込むことになるのだろうか。
「あの、ここが何処かわかります?」
あくま下手に出ながらワンダフル生物に尋ねて見る。
「グルゥ?」
首を傾げられた。
そりゃそうだろうな。
何で動物に現在地なんて聞いたんだろう…
それにしても、ワンダフル生物とか、摩訶不思議生物とか呼びづらいし面倒だな。
良し、決めた。
「お前の名前は、グルだ。」
鳴き声がそう聞こえたから、という安直な理由からつけた名前だが、中々どうしてぴったりな気がしてきた。
なんか、物凄いハッカーの方の呼び名みたいに聞こえない事もないが。
喉が乾いて来たな。
「グル、水のある場所知らない?」
案内されたのは森の中の湖畔。
森の中に、こんなに立派な湖があるなんて、何のファンタジーだよ…
ゼ○の使い魔とか思い出した。
ん…?
今何か大事な事に気がついた様な…
ゼ○使?
森の中?
こんなに立派な…
違う、そう、ファンタジーだ!
どうしてその可能性を考えなかったのか!
考えれば考える程、そうとしか思えなくなって行く。
超絶美少女に召喚される事もなければ、異世界の神様との出会いも無かったけど、ましてやキッカケはオナニーだけども、これは間違いない。
異世界転生という奴じゃないか?
そうと決まれば先ずはそうだな、
…街を探そう。
彼はチキンなので、物事を大げさに言いすぎる時があります。