真理の探究者
予約投稿。本日2度目の投稿ですご注意ください。
「…あ、ああ……」
少女は、涙をこぼす。
今度は、一筋どころではない。
大粒の涙が、いくつも、いくつも流れ、地面に吸い込まれていく。
はらり、とまかれていた布がほどけ、地面に落ちた。
「随分、可愛い顔をしてるじゃねーか。」
艶のある黒髪は腰まで伸びて、泪を湛え潤んだ瞳は光を反射し黒い宝石のように輝いていた。
白い肌は絹のように滑らかで、艶やかな唇は薄い桃色に染まり、鈴の音のような透き通った声で
泣きじゃくるその姿は、まるで一輪の白百合の花のようであった。
そこには、醜く腐敗した病人の姿は微塵もなかったのだ。
先ほどまで漂っていた鼻のもげるような腐臭に変わり、咲き誇る花のような香りが漂い始めた
室内で少女は深く頭を垂れた。
「ああ……このご恩をどう返せば良いのか、私には皆目見当が付きません。どうか、せめてこの身体を……」
俺に身を寄せようとする少女を制して言う。
「皆までいうんじゃない。」
「ですが…」
なおも食い下がろうとする少女に俺は強く言い放った。
「俺は、孤高のオナニスト。真理の探究者だ。人が犯す罪は全て、体の外にある。
俺に報いたくば……わかるだろう?」
「それでも、私は……っ……」
崩れ落ちる少女を背にし、住居をでる。
住居に滲んでいた大きな染みはなくなっていた。
「少しはいい景色になったじゃあないか。」
マリアもそろそろ、戻ってきたころだろうか。
グルの待つ村の入り口へと歩を進める。
心は晴れやかだった。
……なんだこれ。
……なんだこれ。