エルフ乗りのエルフさん〜ドラゴン論争〜
真っ青な空に、まっすぐな白い雲がだんだん伸びていく。
ひこうき雲だ。
「明日の天気は、すくなくとも今日よりは、崩れそうだな」
「そうなんですか?」
農業従事超ベテランエルフ(♀)は、あくまで経験則ではあるが、と答える。
「湿度の関係やら、なんやら、とかそういう、あれらしい」
「理由はふわっとしてる」
「細かい理屈なんて知らん。なんなら、科学的に合ってるかも、分からない」
ぷかりぷかりと、エルフが口から虹色の煙を吐き出した。
「たばこの色おかしくない?」
「おかしくない。これはそもそもたばこじゃない」
「さっきコンビニで買ってましたよね」
「エルフ専用たばこだ。オオクワガタの冬虫夏草が埋め込まれている」
「オオクワガタの……?」
「そうだ。オオクワガタの冬虫夏草は、虹色に光るんだ」
「嘘こけ」
「嘘じゃない。疑うのなら、その目で確かめてみろ」
たばこの箱を投げて渡された。めっちゃくちゃ普通に。
「マイセン!」
「なんのことかさっぱり」
このババア!(年齢に即した適切な表現)
そうこうしている内に、2機目の飛行機が空をとんで、またもや白い尾を引きずっていく。本当によく、ひこうき雲がきれいにできる日だ。
すると、その二筋がうまくかみ合ってというべきか、並行になっている部分と、すこし膨らんだ部分ができあがった。
「昔の人って、こういう雲を見て、ドラゴンとか龍を考えたりしたんですかね」
「そんなわけないだろう」
思ったよりも速攻で否定された。厳しい。
「よく考えてみろ。飛行機がないのに、どうやってあんな雲ができる」
「それはそうですけど……」
浪漫があるじゃん。ドラゴンは実在しなかったかもしれないけど。もっと夢を見させてほしい。
「そもそもドラゴンに近いのは──飛行機のほうだ」
「は?」
そっち?
「お前たちが、最初に空を飛び始めた時、当時を知るエルフの反応は『自力でドラゴンにたどり着きよった』だったんだ」
「その頃から生きてたんだ……」
「私の生まれは、BC500000000000000000000000年だからな」
「宇宙の誕生すら怪しくない?」
「嘘だが」
「嘘かい」
「私たちにとって、ドラゴンを眺める時の感情は、マンタとかエイを水族館で眺める時に人間が抱く気持ちだ」
「めっちゃかわいいって気持ちじゃん」
変なものを見る目で見られた。
何だよ。何か変なことを言ったか?
「ラッコのほうがかわいいだろ」
「そこ比べるのはずるじゃん」
「あと、私はもっとかわいい」
「ぺっ」
唾棄した。エルフはどこ吹く風だった。
「ちなみに嘘だが。ただ、お前たち人間の功績もあって、ドラゴンが合理的に進化した結果あんな形だったことを知れた」
「今の嘘はどこの部分が該当するの?」
「さあ、仕事を再開するぞ。ジャガイモの仕分けだ。マンドレイクも混じっているから、手を抜けない」
「どこの部分までが嘘で、どこからが本当なのさ」
マンドレイクの混じったジャガイモってなんだよ。死のリスクあるじゃねえかよ。
3機目の飛行機が飛んできた。
そうかあ、ドラゴンはあんな形なのかあ。
「嘘だが」
「だから、どこの部分が」
仕分け作業は、長芋で、マンドレイクじゃなくて、コカトリスが混ざっていた。
どこの部分が嘘だったんだよ……。




