表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

砂上の平和

 偽りの英雄たちが大陸を寸断した大戦が終わり、五年。

 エレジア大陸には、血と裏切りによってではなく、対話と譲り合いによって築かれた、束の間の平和が訪れていた。


 とりわけ、王国の西に位置する三国――港湾都市リューベック、軍事都市ニュルン、山岳都市ザルツが新たに結んだ「三国連合」の復興は、目覚ましいものがあった。

 かつて彼らは、英雄の一人「影の手」セレーネの甘言に乗り、王国へ反旗を翻した「三国同盟」だった。

 三国同盟と王国との戦争の危機を回避させたのは、当時まだ一介の捜査官だった宰相カイル・ヴァーミリオンだった。

 彼は、敵の謀略を逆手に取る巧妙な情報操作で、彼らが武器を交えることなく自壊するよう仕向けたのだ。

 セレーネの死後、王都から派遣された宰相特使リィナ・シルバーアッシュは、その誠実さで、憎しみ合う指導者たちの心を解きほぐした。

 そして三国は新たに「三国連合」として歩み出すことになった。

 だが、その輝かしい功績の裏には、一つの消えない傷痕が残された。

 西側連合の新しい絆は、カイルが仕掛けた「嘘」によって生まれた亀裂の上に、リィナが必死に架けた、あまりにも脆い橋のようなものだったからだ。


 指導者たちは、今も心の底では互いを完全には信じきれていない。

 民衆の間にも、あの内乱寸前の恐怖と、拭いきれない不信感が澱のように溜まっている。


 彼らの平和は、砂の上に築かれた楼閣だった。

 誰もがその脆さに気づきながら、しかし、ようやく手に入れた平穏を壊すことを恐れ、見て見ぬふりを続けていた。


 ――そして、五年目の秋。

 リューベックの石畳に、一発の凶弾が放たれた。


 それは、ほんの始まりに過ぎなかった。

 過去の影が、亡霊のように蘇り、再び西方の大地を覆い尽くそうとしていることを、まだ誰も知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ