【第3話】当たり前の日常
「ん…」
ベッドに寝ている一真に、カーテンの隙間から漏れる日光が当たる。
「マジかよ…」
外の明るさに嫌な予感がしつつも、スマホを見ると目を疑う時間となっていた。寝坊の時間だ。
「あぁっ!やっちまった!」
大慌てで身支度を整える。朝食を摂る余裕などない。急いで家から飛び出し自転車に乗る。
(校門で挨拶運動してる奴らと一緒に校舎に入るとか気まず過ぎるだろ…しかも朝礼後の教室に一人で入るとか最悪だ)
前回遅刻したときの記憶が鮮明に蘇る。他にも遅刻常習犯がいればまだしも、皆朝の時間はきっちり守る。
「チッ」
よりにもよって目の前で赤信号に捕まり舌打ちをする。直前まで青だった歩道を他の自転車が平然と走っていく。
(おいおい、よくやるよ。車が怖くねぇのかよ?)
見慣れた光景にうんざりとする。 そんなことを考えていたら歩道の信号が青になる。 青に気づき自転車を走らせようとすると、
「「ブォーン!」」
目の前を車が颯爽と横切る。
(危ねぇ!車に乗ってる癖に急いでんじゃねぇぞ!クソ!)
一真は心の中でグチグチ言いながら自転車を再び走らせ始めた。 スマホを見て今の時間を確認する。
(このままじゃ遅刻ギリギリだな。よし、ショトカするか)
横断歩道を渡るように行くと大幅なタイムロスになるため、道路を横切ることで時短を狙う。
(ラッキー。車の通りが少ない。これならイケる!)
スピードを緩めず道路に突入しようとしたところで、
(何か…嫌な予感がする。デジャブ?このままだと…死ぬ?)
思い切ってブレーキを掛ける。顔に風が吹き付ける。本来の通るはずだった車線上をバスが通っていた。
「ハァ…ハァ…」
尋常でない冷や汗と動悸が止まらない。
「何なんだ、この感覚…」
一真はまさに"勘"に助けられたのだった─